「息子に継がせるか、第三者に譲るか」――新宮市で長く商売を続けてきた方なら、一度は手帳の端に書いて、そのまま閉じた問いではないでしょうか。
決算、仕入れ、人手。日々の仕事は待ってくれません。そのうえ事業承継は「いつかやること」なので、相談先も費用感も分からないまま後回しになりがちです。気づけば、使えたはずの国の補助金の締切だけが過ぎていく――これが一番もったいないパターンです。
・新宮市に市独自の事業承継補助金は見当たらず、使うのは国の「事業承継・M&A補助金」(旧・事業承継・引継ぎ補助金)です。
・16次公募の受付は2026年10月2日〜2026年11月6日17:00まで。枠によって上限150万円〜1,000万円、補助率2分の1〜3分の2以内です。
・相談は和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(073-499-5221)へ。新宮商工会議所での出張相談会は原則第4火曜日・予約制・無料です。
そして意外に知られていないのが、この補助金は「引き継ぐ側(買い手)」だけでなく「譲り渡す側(売り手)」も対象になるという点です。廃業を考えていた方が、専門家費用の補助を受けながら第三者への引継ぎに切り替える、という使い方も想定されています。
この記事で分かることは次の4つです。
- 16次公募の4つの枠と、枠ごとの補助率・補助上限額・補助下限額
- 新宮市の事業者が対象になる要件(小規模事業者等の定義・賃上げ要件)
- 締切までの流れと、GビズIDプライムで時間を取られるポイント
- 新宮市の相談窓口と、令和8年度の新宮会場の相談会日程(全12回)
最後に、新宮会場の出張相談会カレンダーを掲載しています。11月6日の締切前に相談できる日は、実質1回だけです。この記事は2026年10月19日時点の公式情報に基づきます。

| 制度名 | 事業承継・M&A補助金(旧称:事業承継・引継ぎ補助金)/令和7年度補正予算・16次公募 |
|---|---|
| 実施主体 | 中小企業庁(事務局:事業承継・M&A補助金事務局) |
| 対象者 | 新宮市内で事業を営む中小企業者・個人事業主(事業を引き継ぐ側/譲り渡す側の双方)。枠ごとに要件あり |
| 補助率・上限 | 補助率2分の1〜3分の2以内/補助上限150万円〜1,000万円(枠・類型により異なる。下記の表を参照) |
| 申請期間 | 2026年10月2日(金)〜2026年11月6日(金)17:00まで(16次公募) |
| 窓口 | 相談:和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(073-499-5221)/出張相談会:新宮商工会議所(新宮市井の沢3-8、原則第4火曜13:00〜16:00・予約制)/申請:事務局の電子申請(GビズIDプライム必須) |
| 公式URL | 事業承継・M&A補助金 公式サイト(令和7年度補正予算) |
新宮市の事業者が使う「事業承継・引継ぎ補助金」の正体
結論として、新宮市の事業者が実際に申請するのは国の制度であり、現在の名称は「事業承継・M&A補助金」です。
「事業承継・引継ぎ補助金」という名前で検索される方が今も多いのですが、事務局サイト(令和7年度補正予算)が掲げている名称は事業承継・M&A補助金です。旧称であることは、公募要領の中に「過去の『経営資源引継ぎ補助金』又は『事業承継・引継ぎ補助金』の補助金受給者においては…」という記述が残っていることから確認できます。なお、どの公募回から名称が変わったのかを明示した公式記載は見つかりませんでした。検索でたどり着いた制度名が旧称でも、申請先は同じ事務局です。
実施主体は中小企業庁で、新宮市や和歌山県が独自に上乗せする補助金ではありません。したがって補助率・上限額・締切は全国共通で、新宮市の事業者だけ有利・不利になることはありません。和歌山で変わるのは「どこに相談し、誰に書類を見てもらうか」という支援体制の部分です。
市の制度を確認したところ、新宮市の支援制度一覧の「企業・事業者の支援」13項目に、「事業承継」「後継者」「M&A」を名称に含む補助金は見当たりませんでした(2026年10月19日時点)。同じ一覧に載る事業者向けの市の制度は、ビジネスチャンス支援補助金(対象経費の2分の1以内・上限20万円)、頑張る商業者団体等活動支援補助金、新規開業資金利子補給補助金、商工業活性化資金利子補給補助金などです。承継後の店舗改装費を市の制度で賄えるか、また国の補助金と併用できるかは制度ごとに条件が異なりますので、新宮市商工観光課(0735-23-3357)と各制度の要綱でご確認ください。
【16次公募】枠別の補助率・補助上限額一覧
16次公募は4つの枠に分かれており、「何にお金を使うか」で申請する枠が決まります。
以下はいずれも16次公募の各枠の公募要領「補助上限額、補助率等」に記載された数値です。補助下限額があり、それを下回る申請は受け付けられない点が、持続化補助金などに慣れた方がつまずきやすいところです。
| 枠・類型 | 補助率 | 補助上限額 | 補助下限額 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠(親族内承継・従業員承継の設備投資など) | 小規模事業者等は3分の2以内/それ以外は2分の1以内(補助額800万円超〜1,000万円の部分は一律2分の1以内) | 800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円) | 100万円 |
| 専門家活用枠 買い手支援類型(Ⅰ型) | 3分の2以内 | 600万円+デュー・ディリジェンス費用200万円+廃業費300万円 | 50万円 |
| 専門家活用枠 売り手支援類型(Ⅱ型) | 2分の1以内(下記の条件に該当すれば3分の2以内) | 600万円 | 50万円 |
| 専門家活用枠 小規模売り手支援類型 | 一律3分の2以内 | 450万円(廃業費を含める場合は最大600万円/引継ぎが実現しなかった場合は50万円) | 設定なし |
| PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | 2分の1以内 | 150万円(廃業費併用時は+300万円) | 50万円 |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 小規模事業者等は3分の2以内/それ以外は2分の1以内(800万円超〜1,000万円の部分は一律2分の1以内) | 800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円) | 100万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠(単独申請) | 3分の2以内 | 300万円 | 50万円(補助対象経費75万円未満は受け付けない) |
売り手支援類型(Ⅱ型)の補助率が3分の2以内に上がるのは、公募要領で①物価高等の影響で営業利益率が低下している、②直近決算期の営業利益又は経常利益が赤字のいずれかに該当する場合とされています。紀南で燃料費や仕入れ値の上昇を受けている事業者には、該当する余地があります。
なお、専門家活用枠には成長志向の企業向けに上限2,000万円の「100億企業特例」も設けられています。補助率の内訳は特例専用の公募要領に記載されているため、該当しそうな場合はそちらを確認してください。小規模売り手支援類型の「廃業費150万円」は、関連する経営資源の引継ぎが実現した場合に限られます。
一方で、売り手支援類型(Ⅱ型)にデュー・ディリジェンス費用や廃業費の上乗せが及ぶかどうかは、公募要領の表が結合セルで読み取りづらく、断定を避けます。上乗せを前提に資金計画を組む場合は、必ず該当枠の公募要領の原文とコールセンターで確認してください。
対象になる事業者と主な要件
対象は中小企業者・個人事業主で、枠ごとに「誰が・何のために」という切り口が決まっています。
親族や従業員に引き継ぎ、そのタイミングで設備や販路に投資するなら事業承継促進枠。第三者へのM&Aで仲介手数料やデュー・ディリジェンス(買収前の企業調査)費用がかかるなら専門家活用枠。M&A成立後の経営統合作業に専門家を使う、あるいは統合のための設備投資をするならPMI推進枠です。PMIとは、公募要領の定義ではM&A成立後の一定期間内に行う経営統合作業を指し、M&Aの目的を実現し統合効果を最大化するためのプロセスとされています。
譲渡に着手したが成約に至らず、既存事業を廃業して新しい事業に取り組む場合は廃業・再チャレンジ枠が単独で使えます。他の枠と併用して既存事業の一部または全部を廃業する申請も可能です。
・製造業その他:常勤従業員20人以下
・商業・サービス業:常勤従業員5人以下
・宿泊業・娯楽業:常勤従業員20人以下
新宮市内の飲食店・小売店の多くは「商業・サービス業5人以下」に当たり、補助率3分の2以内の側に立てる可能性があります。
補助上限額を800万円から1,000万円に引き上げる賃上げ要件は、従業員1人当たりの給与支給総額の上昇率が3%以上であることです。未達の場合は最大200万円の返還を求められるとされているため、人員構成が変わりやすい小規模な事業所では慎重に判断してください。要件を満たせば上限が上がる仕組みであって、満額が保証される制度ではありません。
対象経費と、対象外になるもの
枠によって経費の性格がまったく違うため、「何に使いたいか」を先に決めるのが近道です。
専門家活用枠は、M&A支援機関への着手金・システム利用料・成功報酬、デュー・ディリジェンス費用、弁護士や公認会計士などへの報酬といった専門家費用が中心です。事業承継促進枠とPMI推進枠の事業統合投資類型は、設備費・外注費・委託費といった投資的な経費が対象になります。
注意したいのは、事業統合投資類型の委託費ではM&A仲介手数料・デュー・ディリジェンス費用・PMI専門家手数料が対象外とされている点です。同じ「M&Aのための費用」でも、専門家費用は専門家活用枠・PMI専門家活用類型、設備投資は事業統合投資類型と、枠をまたいで整理する必要があります。
また、小規模売り手支援類型では、経営資源の引継ぎが実現しなかった場合に対象が着手金・システム利用料・デュー・ディリジェンス費用のみに絞られ、補助上限も50万円に変更されます。「成約しなかったときにいくら残るか」まで見てから契約するのが安全です。
申請の流れと締切・スケジュール
16次公募は2026年11月6日17:00が締切で、交付決定は2027年1月下旬以降です。
事務局が公表している16次公募の事業スケジュールは次のとおりです。
| 公募申請受付期間 | 2026年10月2日(金)〜2026年11月6日(金)17:00まで |
|---|---|
| 採択日 | 2026年12月下旬以降 順次(予定) |
| 交付申請受付期間 | 2027年1月上旬〜2027年11月中旬(予定) |
| 交付決定日 | 2027年1月下旬以降 順次(予定) |
| 事業実施期間 | 交付決定日〜2028年3月中旬(予定) |
| 実績報告期間 | 2027年6月上旬〜2028年3月下旬(予定) |
| 補助金交付手続き | 2027年10月上旬以降 順次(予定) |
流れとしては、①相談(支援センター・商工会議所)→②枠の決定と公募要領の読み込み→③GビズIDプライムの取得→④電子申請→⑤採択→⑥交付申請・交付決定→⑦事業実施→⑧実績報告→⑨補助金の受領、という順序になります。審査がありますので、申請すれば必ず採択されるわけではありません。
電子申請にはGビズIDプライムが必要で、公募要領には取得に「1週間から2週間程度必要。また、混雑時は3週間程度」と書かれています。今日(2026年10月19日)から動いても、締切まで残り日数はわずかです。まだお持ちでない方は、枠の検討と並行して今週中に申請してください。
補助金の性質上、原則として交付決定前に発注・契約・支払いをした経費は対象になりません。「先に専門家と契約してしまった」という相談は毎年あります。契約のタイミングは、必ず公募要領と事務局コールセンターで確認してください。

新宮市の相談窓口と出張相談会(原則第4火曜)
新宮市の事業者にとっての一次窓口は、和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターです。相談は無料です。
同センターは国が各都道府県に設置している公的機関で、後継者不在の相談、譲渡・譲受のマッチング、専門家の紹介、事業承継計画の作成支援などを行っています。県の公式ページでも、専門家派遣について「費用負担なく活用できます」と案内されています。
| 名称 | 和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター |
|---|---|
| 住所 | 和歌山市七番丁26-1 モンティグレ ダイワロイネットホテル和歌山3階 |
| 電話/FAX | 073-499-5221/073-499-5224 |
| メール | info-shoukei@wakayama-hikitsugi.go.jp |
| 県の担当課 | 和歌山県 商工労働部 商工労働政策局 商工振興課(073-441-2744) |
| 公式URL | 和歌山県 事業承継支援のページ/センターの相談会日程 |
和歌山市まで出るのは遠い、という新宮の事業者のために、センターは県内6つの商工会議所で出張相談会を開いています。ここが新宮市の読者にとって一番実用的な情報です。新宮商工会議所(新宮市井の沢3-8)は原則第4火曜日・13:00〜16:00・予約制で、令和8年度の日程は次のとおりです。
| 令和8年度 新宮会場の日程 | 4月28日/5月26日/6月23日/7月28日/8月25日/9月29日/10月27日/11月24日/12月22日/1月26日/2月22日/3月23日 |
|---|---|
| 時間・予約 | 13:00〜16:00・予約制(2月22日は原則の第4火曜日と異なる日程のため注意) |
| 相談料 | 無料 |
16次公募の締切(11月6日)より前に新宮で相談できるのは10月27日の回だけです。次の11月24日は締切後になります。間に合わない場合は、センターへ直接電話するか、事務局のコールセンターを使ってください。
| 相談先 | 電話 | 受付時間 |
|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 050-3192-6274 | 9:30〜12:00、13:00〜17:00(土日祝を除く) |
| 専門家活用枠/廃業・再チャレンジ枠 | 050-3145-3812 | 同上 |
| PMI推進枠 | 050-3192-6228 | 同上 |
ちなみに出張相談会の曜日は会場ごとに違います(橋本=第2火曜、海南=第3水曜、紀州有田=第4水曜、御坊=第3火曜、田辺=第2水曜、新宮=第4火曜)。新宮の日程が合わないときは、御坊や田辺の回に出向くという選択肢もあります。日程は年度途中で変わることがあるため、予約時に必ず確認してください。

新宮市の事業者がつまずきやすい5つの落とし穴
結論から言えば、金額の勘違いと締切の読み違いが大半です。
- 下限額に届かない:事業承継促進枠と事業統合投資類型は補助下限額100万円、専門家活用枠とPMI専門家活用類型は50万円です。廃業・再チャレンジ枠は補助対象経費75万円未満の申請は受け付けないと明記されています。小さく始めたい方ほど引っかかります。
- 上限額を「もらえる額」と誤解する:上限は補助率を掛けた後の天井です。補助率3分の2以内で600万円を受けるには、900万円規模の対象経費が必要になります。
- 賃上げ要件の返還リスク:1,000万円の上限は賃上げ要件(1人当たり給与支給総額の上昇率3%以上)が前提で、未達なら最大200万円の返還とされています。
- 市の補助金との併用を自己判断する:市の補助金には、国・県・市の他の補助金を受けていないことを条件とするものがあります。併用の可否は新宮市商工観光課(0735-23-3357)と各制度の要綱で先に確認してください。
- 名称で検索して古い情報を読む:「事業承継・引継ぎ補助金」で出てくる記事は過去の公募回の金額を載せていることがあります。金額は公募回ごとに変わるので、必ず16次公募の公募要領で照合してください。
公募要領は枠ごとに別PDFで、いずれも事務局サイトの各枠のダウンロードページから入手できます。数値に迷ったら、まとめ記事ではなくこのPDFが正です。
よくある質問
新宮市独自の事業承継補助金はありますか
2026年10月19日時点で、新宮市の支援制度一覧の「企業・事業者の支援」13項目に「事業承継」「後継者」「M&A」を名称に含む補助金は見当たりませんでした。使うのは国の事業承継・M&A補助金です。同じ一覧に載る事業者向けの市の制度には、ビジネスチャンス支援補助金(対象経費の2分の1以内・上限20万円)や新規開業資金利子補給補助金などがあります。最新の有無は新宮市商工観光課(0735-23-3357)でご確認ください。
「事業承継・引継ぎ補助金」と「事業承継・M&A補助金」は別の制度ですか
別制度ではなく、同じ補助金の名称が変わったものです。公募要領には過去の「経営資源引継ぎ補助金」又は「事業承継・引継ぎ補助金」の受給者に関する記述が残っています。ただし、どの公募回から名称が変わったかを明示した公式記載は確認できませんでした。現在の公募回は16次公募で、名称は事業承継・M&A補助金です。
譲り渡す側(売り手)でも申請できますか
できます。専門家活用枠には売り手支援類型(Ⅱ型)と小規模売り手支援類型があり、小規模売り手支援類型は補助率一律3分の2以内・上限450万円、補助下限額の設定はありません。ただし経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は補助上限が50万円に変更されるなど、条件が細かく分かれます。
締切までに間に合わない場合、次の公募はありますか
17次以降の公募の有無・時期は、2026年10月19日時点の事務局サイトでは公表されていません。例年、予算措置に応じて公募が重ねられていますが、確定情報ではないため事務局サイトで最新の公募情報をご確認ください。先に支援センターへ相談し、承継計画と専門家の候補を整えておくと、次の公募での準備期間が短くなります。
相談には費用がかかりますか
和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターの相談は無料で、県の公式ページでも専門家派遣を「費用負担なく活用できます」と案内しています。新宮商工会議所での出張相談会も無料・予約制です。
新宮市で事業承継を考えるなら、使うのは国の事業承継・M&A補助金(旧・事業承継・引継ぎ補助金)です。16次公募の締切は2026年11月6日17:00。枠は事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業・再チャレンジ枠の4つで、補助下限額があることと、GビズIDプライムの取得に最大3週間かかることが締切前の関門です。相談は無料ですので、まず和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(073-499-5221)か、10月27日の新宮商工会議所での出張相談会(予約制)から動いてください。この記事は2026年10月19日時点の公式情報に基づきます。金額・期間・要件は公募回ごとに変わるため、申請前に必ず16次公募の公募要領と各公式サイトで最終確認をお願いします。
