「紀の川市で就農したい。農業次世代人材投資資金って、結局いくらもらえるのか」。桃・イチゴ・野菜の産地で農業を始めようと決めたとき、多くの方が最初にこの制度名で検索します。
ところが調べ始めると、年150万円と書いてあるサイト、年165万円と書いてあるサイト、「準備型」「経営開始型」という言葉。どれが今の紀の川市で使える話なのか分からず、相談の電話をかけられないまま時間だけが過ぎる——これはとても起こりやすい足止めです。
結論を3行で書きます。
①「農業次世代人材投資資金」は国の新規就農者育成総合対策(就農準備資金・経営開始資金)に再編され、現在はこの2つの名称で運用されています(和歌山県や農林水産省のページでは旧称が括弧書きで併記されています)。
②金額は令和8年度時点で年165万円(月13.75万円)。研修中は最長2年、就農後は最長3年です。
③紀の川市では窓口が2つに分かれます。研修中の就農準備資金は那賀振興局(県)、就農後の経営開始資金は紀の川市農業振興課です。
この記事では、紀の川市農業振興課が公開している令和8年度版の支援策一覧、和歌山県の交付金ページ、農林水産省の制度ページを原文で突き合わせ、対象者・金額・申請期間・提出先・紀の川市だけの上乗せ(親元就農助成金)・つまずきやすい落とし穴までを順に整理します。
とくに読んでいただきたいのは「年150万円と165万円のどちらが正しいのか」と「1,000万円と750万円の書き分け」の2点です。どちらも紀の川市の資料と国の要綱を並べて初めて意味が分かる部分で、相談前に知っておくと話が早く進みます。
この記事は2026年10月23日時点の公式情報に基づきます。

結論:紀の川市で「農業次世代人材投資資金」は年165万円の2制度に変わった
紀の川市で今使えるのは、研修中の「就農準備資金」と就農後の「経営開始資金」です。名称も金額も変わっているため、古い情報で金額を見積もると計画が狂います。
農林水産省の制度ページでは、就農準備資金が月13.75万円(年間最大165万円)・最長2年、経営開始資金が年165万円・経営開始日から最長3年と示されています。年齢要件はいずれも49歳以下です(和歌山県の交付金ページと紀の川市の令和8年度版PDFは「原則50歳未満」、紀の川市の新規就農ページは「49歳以下」と表記しており、いずれも同じ範囲を指します)。
一方で「農業次世代人材投資資金」の時代に使われていた年150万円という数字は、今も各所のチラシや解説記事に残っています。紀の川市とJAわかやま紀の里が出している「あら川の桃トレーニングファーム」の募集チラシにも、所得安定の支援として「150万円以下/年」という旧額の表記が残っています。金額は必ず令和8年度の要綱・市の最新版資料で確認してください。
| 制度名 | 新規就農者育成総合対策「就農準備資金」「経営開始資金」(旧・農業次世代人材投資資金/旧・青年就農給付金) |
|---|---|
| 実施主体 | 国(農林水産省)/就農準備資金は和歌山県・研修機関が交付、経営開始資金は紀の川市が交付 |
| 対象者 | 就農準備資金=就農予定時に原則50歳未満で、県が認める研修機関等でおおむね1年かつ年間1,200時間以上研修する方/経営開始資金=独立・自営就農時に原則50歳未満の認定新規就農者 |
| 補助率・上限 | いずれも定額。年165万円(月13.75万円)。就農準備資金は最長2年、経営開始資金は最長3年 |
| 申請期間 | 就農準備資金(和歌山県)は令和8年10月5日(月)〜10月26日(月)/経営開始資金(紀の川市)は7月・1月予定(国からの予算配当の有無により受付が無い場合あり)/親元就農助成金(市)は第1回 令和8年7月1日(水)〜7月31日(金)・第2回 令和9年1月4日(月)〜1月29日(金) |
| 窓口 | 紀の川市農林商工部 農業振興課(代表0736-77-2511/直通0736-79-3902/〒649-6492 紀の川市西大井338番地)、那賀振興局 農業水産振興課(0736-61-0025)、和歌山県 経営支援課担い手育成班(073-441-2932) |
| 公式URL | 紀の川市で新たに就農をお考えの方(紀の川市)/就農準備資金・経営開始資金(農林水産省) |
制度の全体像:国・和歌山県・紀の川市の役割分担を先に押さえる
就農資金でつまずく最大の原因は「どこに出すか」です。国がお金の仕組みを作り、交付と審査は県と市に分かれています。
和歌山県の交付金ページでは、就農準備資金の提出先は、県が設置する研修機関で研修する場合はその研修機関、知事の承認を受けた先進農家等で研修する場合は研修地を管轄する振興局農林水産振興部農業水産振興課と案内されています。紀の川市で研修する場合、管轄は那賀振興局 農業水産振興課(0736-61-0025)です。
これに対して経営開始資金は「就農地の市町村」が窓口とされ、紀の川市の令和8年度版の新規就農者向け資料にも申請窓口として「紀の川市農業振興課」と明記されています。
「市役所に行けば両方できる」と考えて動くと二度手間になります。研修中の資金は県(那賀振興局)、就農後の資金は市(農業振興課)。相談の最初に、自分が今どちらの段階かを伝えると案内が早くなります。
紀の川市の農業振興課は農業振興班と担い手育成・ブランド推進班の2班で構成され、公式ページでは担い手育成・ブランド推進班の担当業務に「新規就農支援に関すること」が挙げられています。電話をかける際はこの班名を伝えると担当につながりやすくなります。
【研修中】就農準備資金は年165万円・最長2年、受付は年1回
就農準備資金は、研修中の生活を支える資金です。要件のハードルは研修時間と年齢、そして所得です。
和歌山県のページには、一人あたり年間165万円を最長2年、就農予定時の年齢は原則50歳未満、研修時間はおおむね1年かつ1,200時間以上、前年の世帯所得は600万円以下という要件が示されています。
重要なのは受付が通年ではない点です。令和8年度の和歌山県の受付期間は令和8年10月5日(月)から10月26日(月)まで(直接持参は月〜金の9:30〜17:00)。この記事の確認日である2026年10月23日(金)時点では、残り数日という状況です。来年度に研修を始める予定の方は、次回の受付時期を今のうちに那賀振興局か県の担い手育成班へ確認しておくのが安全です。
研修先が決まっていないと申請できない
就農準備資金は「どこで研修するか」が決まっていることが前提です。紀の川市の資料では、研修の受け皿として紀の川アグリカレッジ(イチゴ)、あら川の桃トレーニングファーム、ふたば塾(トマト等の野菜・桃等の果樹)、和歌山県農林大学校、和歌山県就農支援センター(0738-23-3488)が挙げられています。品目が決まっている方は、まず研修先の相談から入る流れになります。
返還の規定がある
和歌山県のページには返還事由も列挙されています。就農要件を満たさない場合、研修を途中で中止した場合、報告義務に違反した場合、適切な研修を行っていない場合、研修終了後1年以内に50歳未満で就農(独立・自営就農、親元就農、雇用就農)できなかった場合などです。生活費の補填という性格ではなく、就農を前提とした資金であることを押さえておきましょう。
【就農後】経営開始資金は年165万円・最長3年、窓口は紀の川市農業振興課
就農後の資金は紀の川市が交付します。こちらは「認定新規就農者であること」と「独立・自営就農」が前提です。
紀の川市の令和8年度版資料では、経営開始資金は165万円/年(経営開始日から最長3年間)、独立・自営就農時の年齢が50歳未満、申請窓口は紀の川市農業振興課と記載されています。農林水産省のページでも年165万円・最大3年で一致しています。申請時期は同資料に7月・1月予定と明記され、国からの予算配当の有無により申請受付が無い場合があると注記されています。あわせて「目標地図に位置づけられている又は農地中間管理機構から農地を借り受けている」ことと「前年の世帯全体所得が原則600万円以下」も要件です。
先に「認定新規就農者」になる必要がある
経営開始資金の前提になるのが、市町村が認定する認定新規就農者(青年等就農計画の認定)です。農林水産省の説明では対象者は「青年(原則18歳以上45歳未満)」および「特定の知識・技能を有する中高年齢者(65歳未満)」で、認定主体は市町村です。
紀の川市の新規就農ページでは、対象を経営開始から5年以内の18〜45歳未満(特定の知識・技能を有する中高年齢者は65歳未満)とし、認定は年4回(4月・7月・10月・1月)の予定と案内されています。令和8年度版の資料には認定日ごとの申請締切も示されており、4月1日認定は2月15日締切、7月1日認定は5月15日締切、10月1日認定は8月15日締切、1月4日認定は11月15日締切です(申請日はそれぞれ3月1日・6月1日・9月1日・12月1日)。青年等就農計画の様式も同ページでExcel形式で配布されています。
認定の審査が年4回であることは、スケジュールに直結します。就農のタイミングと認定の時期がずれると、資金や初期投資支援の手続きも後ろにずれます。経営開始の予定月を決めたら、どの回の認定を目指すかを農業振興課に相談しておきましょう。
機械・ハウスの初期投資は「経営発展支援事業」と「青年等就農資金」
就農直後の機械・施設の負担を軽くする仕組みも用意されています。
国の経営発展支援事業は、農林水産省の令和8年度経営発展支援事業実施要綱で補助対象事業費の上限が1,000万円(経営開始資金の交付対象者の場合は500万円)とされ、都道府県が支援する額の2倍を国が支援し、国の支援は補助率1/2を超えない範囲とされています。取組主体は市町村です。
ここで紛らわしいのが、紀の川市の令和8年度版資料に「補助上限750万円(経営開始資金対象者は375万円)/国1/2・県1/4・本人1/4」と書かれている点です。これは1,000万円が「補助対象事業費」の上限、750万円が国と県を合わせた「補助金額」の上限という関係です。農林水産省の令和8年度PR版では通常枠の国費上限500万円(経営開始資金の交付対象者は上限250万円)とされており、事業費1,000万円に国1/2(500万円)と県1/4(250万円)を当てると補助金の合計が750万円、本人負担が250万円となり市の資料の数字と一致します。自己負担が必ず発生する点が重要です。なお対象経費は50万円以上の機械・施設等の取得などに限られ、本人負担分について金融機関から融資を受けていることが要件です。
融資では青年等就農資金(日本政策金融公庫)があり、認定新規就農者を対象に融資限度額3,700万円(特認1億円)・無利子・返済17年以内(うち据置5年以内)とされています。紀の川市の資料でも同じ条件が示され、事前相談会は毎月第2水曜日(祝日の場合は翌営業日)に要予約で開催、相談先として日本政策金融公庫 和歌山支店 農業水産事業(073-423-0644)が案内されています。

紀の川市だけの上乗せ:親元就農助成金 年60万円と市の補助メニュー
国と県の制度だけで終わらせないのが紀の川市の特徴です。親元で就農する方向けの市独自の助成金があります。
紀の川市親元就農助成金は、市の資料で年額60万円(最長2年間)、対象は18歳以上50歳未満で市内在住、研修(就農)開始から3年以内かつ6か月以上、認定農業者等である親のもとで農業に専従する後継者とされています。
市の専用ページには要件がさらに細かく示されています。前年の合計所得金額が200万円未満、毎年1月1日から12月31日までの農業従事日数が200日以上かつ1,600時間以上の見込み、離職などにより生計のリスクを負って親元就農した方(学業からの新卒者を除く)、市税の滞納がないこと、そして国の就農準備資金・経営開始資金等の交付を受けていないことです。つまり国の資金とこの助成金は併給できません。
令和8年度の受付期間は第1回 令和8年7月1日(水)〜7月31日(金)、第2回 令和9年1月4日(月)〜1月29日(金)です。申請の際は事前連絡のうえ来庁する必要があり、代理人・郵送・電子メールによる受付は行われません。様式は「親元就農計画(様式第1号)」と添付書類(別添1〜4)がWordとPDFで配布されています。
国の経営開始資金は「独立・自営就農」が要件のため、親元での従事はそのままでは該当しない場合があります。「自分は親元だから何も使えない」と諦める前に、この市独自の助成金を確認してください。予算の範囲内での交付となり審査(書類・面談等)もあるため、当てはまりそうな方は次回の受付前に農業振興課へ相談しておくのが安全です。
このほか紀の川市の令和8年度版資料には、紀の川市ハウス整備支援事業補助金、紀の川市農業経営管理合理化推進事業補助金、紀の川市6次産業化支援事業、紀の川市有害獣被害防止対策事業、紀の川市生活営農資金利子補給金、紀の川市クビアカツヤカミキリ防除対策事業、モモせん孔細菌病対策事業補助金、特定外来生物捕獲器の借用が並びます。桃・モモせん孔細菌病・クビアカツヤカミキリという項目立てが、産地としての紀の川市らしい部分です。
県の制度としては経営継承応援資金、野菜花き産地強化事業、次世代につなぐ果樹産地づくり事業が同資料に挙げられています。研修段階では産地受入研修支援事業(年30万円以下)も案内されています。
UIターンで桃農家を目指す枠もある
紀の川市とJAわかやま紀の里が募集しているあら川の桃トレーニングファームは、募集人数1名程度(UIターン就農)、研修1〜2年、チラシの「求める人材」には49歳以下での就農が望ましいこと・紀の川市に居住される方・研修終了後はあら川の桃部会に加入される方などが挙げられ、就農相談から実践研修、座学、就農準備を経て独立自営就農へ進む流れが示されています。問い合わせはJAわかやま紀の里地域本部営農部(0736-77-0810)です。募集の年度・時期はチラシに年度表記がないため、最新の募集状況は市またはJAへ確認してください。
申請の流れと、紀の川市でつまずきやすい5つの落とし穴
手順は「段階を決める→研修先または認定→資金の申請」の順です。順番を飛ばすと戻れないポイントがあります。
① 自分の段階を決める(これから研修か、もう就農するか)→② 研修なら研修先を決めて那賀振興局へ相談、就農なら農業振興課で青年等就農計画の相談→③ 認定新規就農者の認定(年4回)→④ 資金の交付申請→⑤ 就農状況の報告。この流れが基本形です。
落とし穴は次の5つです。
落とし穴1:古い制度名と年150万円で計画を立ててしまう。現行は年165万円。旧額はチラシや解説記事にまだ残っています。
落とし穴2:窓口を一本だと思い込む。就農準備資金は県(那賀振興局・研修機関)、経営開始資金は紀の川市農業振興課です。
落とし穴3:就農準備資金の受付が年1回であることを知らない。令和8年度の和歌山県の受付は10月5日〜10月26日でした。思いついた時に出せる制度ではありません。
落とし穴4:認定新規就農者の認定を後回しにする。認定は年4回で、各回の申請締切は認定日の約1か月半前(2月15日・5月15日・8月15日・11月15日)です。経営開始資金も経営発展支援事業も認定が前提の設計です。
落とし穴5:経営発展支援事業を「1,000万円もらえる」と誤解する。1,000万円は補助対象事業費の上限で、補助率は国1/2・県1/4・本人1/4。国費の上限は500万円、市の資料では補助上限750万円(経営開始資金対象者は375万円)と書かれています。事業費1,000万円なら本人負担250万円が必ず発生します。
いずれも、要件を満たせば使える制度であり、審査があります。満額の交付や採択が保証されるものではありません。

よくある質問
「農業次世代人材投資資金」は紀の川市でまだ申請できますか。
現在はその名称では募集されていません。国の新規就農者育成総合対策に再編され、研修段階の「就農準備資金」と就農後の「経営開始資金」に分かれています(和歌山県や農林水産省のページでは「就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)」と旧称が括弧書きで併記されています)。金額は令和8年度時点で年165万円で、紀の川市の令和8年度版の新規就農者向け資料にもこの2制度として掲載されています。
紀の川市の申請窓口はどこですか。
就農準備資金は、県が設置する研修機関で研修する場合はその機関、先進農家等で研修する場合は研修地を管轄する那賀振興局 農業水産振興課(0736-61-0025)です。経営開始資金は紀の川市農林商工部 農業振興課(0736-77-2511)が窓口です。制度全体の問い合わせ先として和歌山県 経営支援課担い手育成班(073-441-2932)も公開されています。
親元で農業を継ぐ場合も年165万円を受けられますか。
国の経営開始資金は「独立・自営就農」が要件のため、親元での従事はそのままでは該当しない場合があります。紀の川市には市独自の親元就農助成金(年額60万円・最長2年間、18歳以上50歳未満、前年の合計所得金額200万円未満ほかの要件)があります。ただし国の就農準備資金・経営開始資金等の交付を受けている方は対象外で、併給はできません。受付期間は令和8年度が第1回7月1日〜7月31日、第2回が令和9年1月4日〜1月29日です。
49歳以下という年齢はいつの時点で判断されますか。
就農準備資金は「就農予定時」、経営開始資金は「独立・自営就農時」の年齢で判断されます。和歌山県の交付金ページと紀の川市の令和8年度版PDFは「原則50歳未満」、紀の川市の新規就農ページと農林水産省は「49歳以下」と表記しており、いずれも同じ範囲です。誕生日が近い方は、研修開始や経営開始の時期と合わせて早めに相談してください。
交付を受けた後に就農をやめた場合は返還になりますか。
和歌山県のページには返還事由が列挙されており、就農要件を満たさない場合、研修を途中で中止した場合、報告義務に違反した場合、研修終了後1年以内に50歳未満で就農できなかった場合などが挙げられています。交付後も就農状況の報告が必要です。具体的な返還額や判定は、交付主体(県・振興局または紀の川市)の要綱でご確認ください。
まとめ:紀の川市で次に動く3ステップ
① 自分が「研修中」か「就農直前・就農後」かを決める。②研修中なら那賀振興局(0736-61-0025)と研修先、就農側なら紀の川市農業振興課(0736-77-2511)に電話して青年等就農計画の相談をする。③親元就農なら市の親元就農助成金、機械・ハウスなら経営発展支援事業と青年等就農資金を同時に検討する。
金額・受付期間・様式は年度で変わります。最終確認は必ず紀の川市の新規就農ページと紀の川市新規就農者向け支援一覧(令和8年度・R8.6.1版PDF)、和歌山県の就農準備資金ページで行ってください。
参考にした公式ページ:紀の川市 農業振興課/紀の川市親元就農助成金/農林水産省 就農準備資金・経営開始資金/農林水産省 初期投資への支援(経営発展支援事業)/農林水産省 認定新規就農者制度/日本政策金融公庫 青年等就農資金
この記事は2026年10月23日時点の公式情報に基づきます。公募要領・要綱の改正により内容が変わる場合がありますので、申請前に各窓口でご確認ください。
