この記事は2026年10月5日時点の公式情報に基づきます。
「10月3日から和歌山県の最低賃金が1,101円に上がる。パートさんの時給を上げないといけないのは分かっているが、その原資がない」——和歌山県海南市で小売・飲食・製造・介護の現場を預かる方から、いま最も多く聞く悩みです。
しかも賃金は一度上げたら簡単には下げられません。だからこそ「どうせ上げるなら、上げるタイミングで設備投資の補助も取りに行く」という考え方が必要になります。それを制度にしたのが、厚生労働省の業務改善助成金(最大600万円)です。
意外と知られていないのが、和歌山県には国の業務改善助成金を受けた県内事業者に、自己負担分の2分の1・上限100万円を上乗せする県独自の制度(和歌山県業務改善促進助成金)があることです。海南市の事業者がここまでセットで使えているケースは多くありません。
この記事では、令和8年度(2026年度)の業務改善助成金について、対象になる海南市の事業者、コース別の上限額と助成率、対象経費、申請の流れと和歌山県での申請期限、県の上乗せ制度、そして海南市内で相談できる窓口までを、厚生労働省・和歌山労働局・和歌山県・海南市・海南商工会議所の公式情報だけでまとめました。最後の「よくある落とし穴」は、申請を取り下げになった事業者が実際につまずくポイントです。発注前に必ず目を通してください。

結論|海南市の事業者が今日おさえる4つのこと
誰が・いくら・いつまで・どこへ出すのかを、先に整理します。
誰が:海南市内に事業場がある中小企業・小規模事業者で、事業場内で最も低い時間給が令和8年度の和歌山県最低賃金(1,101円)未満の事業者。
いくら:賃上げ額と人数に応じて30万円〜最大600万円。助成率は事業場内最低賃金1,050円未満なら5分の4、1,050円以上なら4分の3。
いつまで:令和8年度の申請期間は令和8年9月1日から「地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日」まで。和歌山県の発効日は令和8年10月3日のため、県内事業場の期限は令和8年10月2日にあたります(この日付そのものは公式に明記されていないため、厚生労働省・和歌山労働局の公式サイト・交付要綱/要領でご確認ください)。
どこへ:海南市役所ではなく、和歌山労働局 雇用環境・均等室(和歌山市黒田二丁目3番3号 和歌山労働総合庁舎4階)。
| 制度名 | 業務改善助成金(令和8年度) |
|---|---|
| 実施主体 | 厚生労働省(申請窓口は和歌山労働局 雇用環境・均等室) |
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者で、事業場内最低賃金が令和8年度地域別最低賃金(和歌山県1,101円)未満の事業場。解雇・賃金引き下げなどの不交付事由がないこと |
| 補助率・上限 | 助成率4/5(事業場内最低賃金1,050円未満)または3/4(1,050円以上)。上限30万円〜600万円(コース・引き上げる労働者数による) |
| 申請期間 | 令和8年9月1日〜地域別最低賃金の発効日の前日または同年11月30日のいずれか早い日(和歌山県の発効日は令和8年10月3日) |
| 窓口 | 和歌山労働局 雇用環境・均等室(企画係)/電話 073-488-1101/平日8:30〜17:15。制度の質問は業務改善助成金コールセンター 0120-366-440(平日9:00〜17:00) |
| 公式URL | 和歌山労働局「業務改善助成金」 |
業務改善助成金とは|海南市の事業者にとっての位置づけ
業務改善助成金は、事業場内の最も低い賃金を引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資を行った中小企業・小規模事業者に、その設備投資費用の一部を助成する国の制度です。
厚生労働省の案内では、仕組みは「事業場内最低賃金の引上げ計画」+「設備投資等の計画」をセットで申請し、交付決定後に計画どおり実施して結果を報告することで助成金が支給される、と説明されています。
ここで言う事業場内最低賃金とは、その事業場で最も低い時間給のことです(雇入れ後6か月を経過した労働者が対象)。海南市の店舗や工場、事業所など、労働者がいる事業所ごとに申請する点に注意してください。工場Aと事務所Bがあれば、別々の申請になります。
海南市の事業者にとっての位置づけは明確です。令和8年10月3日から和歌山県最低賃金は時間額1,101円(56円の引上げ)になります。この改定への対応で避けられない賃上げを、POSレジや業務システム、省力化機械の導入とセットで進めるための制度が業務改善助成金だ、と理解してください。
対象になる海南市の事業者と主な要件
海南市に事業場があることだけで対象になるわけではなく、賃金水準と計画の中身が問われます。
厚生労働省の案内に示された要件は次の3点です。
- 中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有する企業=みなし大企業でないこと)
- 事業場内最低賃金が、令和8年度地域別最低賃金未満であること(和歌山県なら1,101円未満)
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
さらに、引き上げの対象となる労働者は「週所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者」とされています。令和7年度から対象労働者が雇用保険被保険者に限定された点は、パート中心の事業場では見落としやすい変更です。
厚生労働省の案内に業種の限定は示されていません。海南市の漆器・家庭用品などの製造業、日方や海南駅周辺の小売・飲食、介護・福祉事業所、建設業など、要件を満たせば広く申請できます。ただし採択を保証する制度ではなく、交付申請書と事業実施計画書の審査があります。
助成上限額・助成率と対象経費【令和8年度】
令和8年度は賃上げ額に応じて50円・70円・90円の3コースに整理されています。
助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金で決まります。
- 事業場内最低賃金が1,050円未満:5分の4(4/5)
- 事業場内最低賃金が1,050円以上:4分の3(3/4)
助成上限額は、コースと「引き上げる労働者数」、そして事業場規模(30人未満かどうか)で変わります。
| コース | 引き上げる労働者数 | 上限額(右記以外の事業者) | 上限額(事業場規模30人未満) |
|---|---|---|---|
| 50円コース (50円以上の引上げ) |
1人 | 30万円 | 40万円 |
| 2〜3人 | 40万円 | 70万円 | |
| 4〜5人 | 70万円 | 70万円 | |
| 6〜7人 | 90万円 | 90万円 | |
| 8人以上 | 110万円 | 110万円 | |
| 10人以上※ | 130万円 | 130万円 | |
| 70円コース (70円以上の引上げ) |
1人 | 40万円 | 50万円 |
| 2〜3人 | 50万円 | 100万円 | |
| 4〜5人 | 130万円 | 130万円 | |
| 6〜7人 | 180万円 | 180万円 | |
| 8人以上 | 230万円 | 230万円 | |
| 10人以上※ | 300万円 | 300万円 | |
| 90円コース (90円以上の引上げ) |
1人 | 90万円 | 100万円 |
| 2〜3人 | 150万円 | 240万円 | |
| 4〜5人 | 270万円 | 270万円 | |
| 6〜7人 | 360万円 | 360万円 | |
| 8人以上 | 450万円 | 450万円 | |
| 10人以上※ | 600万円 | 600万円 |
※10人以上の上限区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります。
実際に支給される額は、「設備投資費用×助成率」と「助成上限額」を比べて、安い方です。厚生労働省の例では、事業場内最低賃金1,040円(助成率4/5)の事業場が8人を1,130円まで引き上げ(90円コース・上限450万円)、設備投資600万円を行った場合、600万円×4/5=480万円と上限450万円を比較して450万円が支給される、と説明されています。
対象経費は「生産性向上に資する設備投資等」です。厚生労働省が挙げる例は次のとおりです。
- 機器・設備の導入:POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 経営コンサルティング:国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し
- その他:顧客管理情報のシステム化
パソコン・スマホ・タブレット等の端末と周辺機器の新規導入は、一般事業者では助成対象外です。対象になるのは特例事業者(物価高騰等要件に該当する事業者)のみで、しかも新規導入に限られます。また令和7年度から、特例となっていた自動車(特殊用途自動車を除く)は助成対象外になりました。
特例事業者とは
令和8年度は、次のいずれかに当てはまる事業者が特例事業者です。①賃金要件=申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満である事業者。②物価高騰等要件=原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前6か月間平均における利益率が前年度と比べ3%ポイント以上低下している事業者。②に該当する場合は、上記のとおり助成対象経費の拡充を受けられます。
なお②の売上高総利益率・売上高営業利益率の申出書の記入は、令和7年度から「最近3か月間のうち任意の1月」ではなく「最近6か月間平均」に変わっています。
申請の流れと令和8年度の申請期限(和歌山県は発効日の前日)
海南市の事業者が提出する先は海南市役所ではなく、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局=和歌山労働局です。
厚生労働省が示す流れは次のとおりです。
- 交付申請:交付申請書・事業実施計画書を和歌山労働局に提出
- 交付決定:審査のうえ通知
- 事業の実施:申請内容に沿って賃金の引上げ、設備の導入、代金の支払
- 事業実績報告:事業実績報告書・助成金支給申請書を提出
- 交付額の確定と支払:審査後に支給
令和8年度のスケジュールは、申請期間が令和8年9月1日から「申請事業所の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日又は同年11月30日のいずれか早い日」まで、賃金引上げ期間が令和8年9月1日から地域別最低賃金発効日の前日まで、事業完了期限が交付決定年度の1月31日です。
和歌山県最低賃金の発効日は令和8年10月3日です。この「発効日の前日」と「11月30日」を比べると前者が早いため、海南市を含む和歌山県内の事業場の令和8年度申請期限は令和8年10月2日にあたり、本記事の公開時点ではすでに過ぎています。ただしこの日付そのものは公式に明記されておらず、「発効日の前日」という要領の定めと発効日から導いた日付です。厚生労働省・和歌山労働局の公式サイト・交付要綱/要領でご確認ください。令和9年度以降の受付開始時期は発表されていないため、次回を狙う場合は和歌山労働局(073-488-1101)に最新の取扱いをご確認ください。
賃金引上げに当たっては、地域別最低賃金の発効に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引上げを完了する必要があります。発効日当日に引上げを実施すると対象外です。引上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定めることも求められ、複数回に分けての引上げは認められません。
申請は和歌山労働局 雇用環境・均等室で郵送・来局により受け付けられています。電子申請の可否や最新の様式は厚生労働省ホームページでご確認ください。また、同一事業所の申請は年度内1回まで、予算の範囲内で交付するため申請期間内に募集を終了する場合がある点も公式に明記されています。

【上乗せ】和歌山県業務改善促進助成金で最大100万円
海南市の事業者がいちばん取りこぼしやすいのが、和歌山県独自の上乗せ制度です。
和歌山県商工労働部 労働政策課が実施する和歌山県業務改善促進助成金は、国の業務改善助成金の交付を受けた県内事業者に対し、県独自の上乗せ補助を行う制度です。
| 制度名 | 和歌山県業務改善促進助成金 |
|---|---|
| 実施主体 | 和歌山県 商工労働部 商工労働政策局 労働政策課 |
| 対象者 | 令和7年度(令和7年4月1日〜令和8年3月31日)に、和歌山労働局に業務改善助成金の申請を行い、交付額確定の通知を受けた県内に事業場のある事業者 |
| 助成額 | 業務改善助成金の対象経費支出済額から交付を受けた業務改善助成金を除いた額(自己負担額)の2分の1。上限100万円(ただし交付を受けた業務改善助成金の金額は超えない) |
| 申請期限 | 令和8年9月30日(水)※郵送の場合は消印有効・厳守 |
| 窓口 | 和歌山県 労働政策課(〒640-8585 和歌山市小松原通一丁目1番地/073-441-2790) |
| 公式URL | 和歌山県「和歌山県業務改善促進助成金」 |
ポイントは2つです。第一に、この制度は単独では使えません。国の業務改善助成金で交付額確定の通知を受けていることが前提です。第二に、対象が「令和7年度に申請し交付額確定の通知を受けた事業者」、申請期限が令和8年9月30日とされており、こちらも本記事の公開時点では受付が終了しています。
裏を返せば、国の助成金を取った年度の翌年度に県の上乗せを申請するという流れになります。国の申請時点から「自己負担額の2分の1・上限100万円がもう一段戻る」前提で設備投資の規模を設計しておくと、資金計画が大きく変わります。令和8年度に国の交付額確定を受けた事業者を対象とする回の有無・内容は発表されていないため、和歌山県労働政策課(073-441-2790)にご確認ください。
海南市の相談窓口とよくある落とし穴
書類の作り込みは一人で抱えず、海南市内の支援機関を使うのが近道です。
海南市で相談できる窓口
- 海南商工会議所(〒642-0002 海南市日方1294-18/073-482-4363)。中小企業等経営強化法第26条第1項に基づく経営革新等支援機関です。計画づくりや経営相談の一次窓口として使えます。会議所概要はこちら
- 海南市 産業振興課 商工観光班(〒642-8501 海南市南赤坂11番地/073-483-8460)。市内事業者向けの情報提供・市独自施策の窓口です。海南市「和歌山県の最低賃金について」
- 和歌山労働局 雇用環境・均等室(和歌山市黒田二丁目3番3号 和歌山労働総合庁舎4階/073-488-1101)。業務改善助成金の提出先そのものです。
- 業務改善助成金コールセンター(0120-366-440/平日9:00〜17:00)。要件の解釈で迷ったらここが最短です。
海南市の事業者がつまずきやすい5つの落とし穴
- 交付決定前に設備を買ってしまう。厚生労働省の案内に「交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は、助成の対象となりません」と明記されています。見積だけ取って、発注は交付決定後にしてください。
- 最低賃金の発効日当日に賃上げしてしまう。和歌山県なら令和8年10月3日ではなく、前日の令和8年10月2日までに引上げを完了する必要があります。
- 就業規則等への反映を忘れる。引上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定める必要があります。
- パソコン・タブレットを対象経費に入れてしまう。一般事業者は対象外です。特例事業者(物価高騰等要件)に該当するかを先に確認してください。
- 県の上乗せを知らずに終わる。国の交付額確定後に和歌山県業務改善促進助成金があります。国の実績報告の段階で、自己負担額がいくら残るかを控えておきましょう。

よくある質問
海南市役所に申請すればよいですか?
いいえ。業務改善助成金の交付申請書等の提出先は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。海南市の事業場であれば和歌山労働局 雇用環境・均等室(073-488-1101)に提出します。海南市産業振興課や海南商工会議所は、相談・計画づくりの支援先として活用してください。
設備を先に購入してしまいましたが、対象になりますか?
対象になりません。厚生労働省の案内では「交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は、助成の対象となりません」と注意事項に明記されています。必ず交付決定後に発注・導入・支払を行ってください。
パート・アルバイト中心の事業場でも使えますか?
要件を満たせば申請できます。ただし引き上げる対象労働者は、週所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者とされています。雇用保険に加入していない短時間のパートのみの事業場では、引き上げる労働者数に算入できない可能性があるため、事前に業務改善助成金コールセンター(0120-366-440)でご確認ください。
令和8年度の申請に間に合いませんでした。次はいつですか?
和歌山県内の事業場の令和8年度申請期限は、発効日(令和8年10月3日)の前日である令和8年10月2日にあたります。令和9年度以降の受付開始時期・制度内容は本記事の確認時点で発表されていません。和歌山労働局および厚生労働省「業務改善助成金」のページで最新情報をご確認ください。
和歌山県業務改善促進助成金だけを単独で申請できますか?
できません。和歌山県業務改善促進助成金は、和歌山労働局に業務改善助成金を申請し交付額確定の通知を受けた県内事業者が対象の上乗せ補助です。国の助成金の交付額確定が前提になります。詳細は和歌山県労働政策課(073-441-2790)にご確認ください。
まとめ
・業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円・70円・90円のいずれか以上引き上げ、生産性向上の設備投資を行う中小企業・小規模事業者への国の助成制度。上限は最大600万円、助成率は4/5または3/4。
・提出先は海南市役所ではなく和歌山労働局 雇用環境・均等室。事業所ごとの申請で、同一事業所は年度内1回まで。
・和歌山県の最低賃金発効日は令和8年10月3日。令和8年度の県内申請期限はその前日にあたり、本記事時点では受付が終了しています。
・国の交付額確定を受けた県内事業者には、和歌山県業務改善促進助成金(自己負担額の2分の1・上限100万円)という上乗せがあります。国の申請段階から織り込んで設備投資を設計してください。
・最大の事故は「交付決定前の発注」。見積までにとどめ、決定通知を待ってから動きましょう。
この記事は2026年10月5日時点で、厚生労働省・和歌山労働局・和歌山県・海南市・海南商工会議所の公式情報を確認して作成しました。補助率・上限額・締切・様式は改定されることがあります。申請前に必ず最新の交付要綱・要領と各窓口でご確認ください。
公式情報の確認先:厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(PDF)/和歌山労働局「業務改善助成金」/和歌山県「和歌山県業務改善促進助成金」/海南市「和歌山県の最低賃金について」/海南商工会議所
