この記事は2026年10月5日時点の公式情報(厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」令和8年4月8日現在)に基づきます。
「海南市でパートさんを正社員にしたいが、人件費が上がるのが怖い」。市内の製造業・小売・飲食・介護の経営者から、いちばん多く聞く悩みです。
人手が足りないのはわかっている。採用しても定着しない理由が「ずっと有期契約のままだから」であることも、本当は気づいている。それでも、月々の固定費が増える決断は簡単ではありません。
ただ、令和8年度のキャリアアップ助成金(正社員化コース)は、中小企業が有期雇用労働者を正社員に転換した場合、重点支援対象者なら1人あたり80万円(40万円×2期)です。さらに制度を新しく作った場合などの加算もあり、1事業所あたりの上乗せは最大80万円(20万円+40万円+20万円)になります。
・誰が:雇用保険の適用事業所で、有期・無期の非正規社員を正社員に転換した海南市内の事業主(個人事業主・NPO・医療法人・社会福祉法人も対象になり得ます)
・いくら:中小企業で1人あたり20万円〜80万円+事業所単位の加算(要件を満たした場合)
・どこへ:キャリアアップ計画と支給申請は和歌山労働局(職業対策課 073-488-1161)へ。相談はハローワークかいなん(海南市船尾186-85/073-483-8609)でも可能です
この記事では、海南市の事業者が「自社は対象か」「いくらもらえるか」「いつまでに何をするか」を今日判断できるよう、厚生労働省の公式パンフレットから支給額・要件・期限を写し、海南市内の窓口まで一本につなげます。最後に、申請前に必ず潰しておきたい落とし穴とFAQも載せています。

海南市の事業者がキャリアアップ助成金を使える条件【令和8年度】
キャリアアップ助成金は海南市独自の制度ではなく、厚生労働省の全国制度です。海南市の事業者は和歌山労働局・ハローワークかいなんを通じて利用します。
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員転換や処遇改善に取り組んだ事業主を助成する制度です(運営財源は事業主負担の雇用保険二事業)。
令和8年度版パンフレットに掲載されているコースは、正社員化支援の「正社員化コース」、処遇改善支援の「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「短時間労働者労働時間延長支援コース」の5つです(このほか障害者正社員化コースがあります)。海南市の中小事業者がまず検討しやすいのは、正社員化コースです。
全コース共通の対象事業主は、①雇用保険適用事業所の事業主、②事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている、③対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し管轄労働局長に提出した、④労働条件・勤務状況・賃金支払状況を明らかにする書類を整備している、⑤計画期間内にキャリアアップに取り組んだ(支給申請時点で各コースの要件をすべて満たす)、のすべてに該当する事業主です。
なお中小企業の範囲は、小売業(飲食店を含む)=資本金5,000万円以下または常時雇用労働者50人以下、サービス業=5,000万円以下または100人以下、卸売業=1億円以下または100人以下、その他の業種=3億円以下または300人以下です。海南市の事業者の多くはこの中小企業区分に入り、大企業より高い助成額が適用されます。
労働保険料を納入していない、支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令違反があった、性風俗関連営業・接待を伴う飲食等営業を行っている、暴力団と関わりがある、倒産している——これらに該当する場合は受給できません。
正社員化コースの支給額(令和8年度・海南市の中小企業の場合)
支給額は「対象者の区分(重点支援対象者かどうか)」「企業規模」「転換前の雇用形態(有期か無期か)」の3つで決まります。
| 制度名 | キャリアアップ助成金(正社員化コース)令和8年度 |
|---|---|
| 実施主体 | 厚生労働省/都道府県労働局・ハローワーク |
| 対象者 | 雇用保険適用事業所の事業主(海南市内の中小企業・個人事業主等) |
| 補助率・上限 | 中小企業:有期→正規 80万円(重点支援対象者)/40万円(上記以外)、無期→正規 40万円(重点支援対象者)/20万円(上記以外)。1年度1事業所あたりの支給申請上限人数20名 |
| 申請期間 | 通年。キャリアアップ計画はコース実施日の前日までに提出。支給申請は取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内 |
| 窓口 | 和歌山労働局 職業安定部 職業対策課(073-488-1161)/ハローワークかいなん(073-483-8609) |
| 公式URL | 厚生労働省「キャリアアップ助成金」 |
中小企業の支給額(1人当たり)は次のとおりです。
| 区分 | 有期雇用労働者から転換 | 無期雇用労働者から転換 |
|---|---|---|
| 重点支援対象者(中小企業) | 80万円(40万円×2期) | 40万円(20万円×2期) |
| 上記以外(中小企業) | 40万円(40万円×1期) | 20万円(20万円×1期) |
| 重点支援対象者(大企業) | 60万円(30万円×2期) | 30万円(15万円×2期) |
| 上記以外(大企業) | 30万円(30万円×1期) | 15万円(15万円×1期) |
「重点支援対象者」とは、a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者、b:雇入れから3年未満で、①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下、かつ②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない者、c:派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者、のいずれかに該当する人です。重点支援対象者は2期目(さらに6か月雇用後)の申請ができる点が、金額が倍になる理由です。
さらに、1事業所あたり1回のみの加算があります。①正社員転換制度を新たに規定して転換等した場合20万円(大企業15万円)、②多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれか1つ以上)を新たに規定して転換等した場合40万円(大企業30万円)、③正規雇用労働者への転換等に係る所定の情報を自社ウェブサイトまたは職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表した場合20万円(大企業15万円)。③は令和8年度に新設された加算です。
たとえば海南市の小売業(中小企業)が、勤続4年のパート社員2名を正社員転換し、同時に正社員転換制度を新設した場合、単純計算で80万円×2名+加算20万円=180万円が目安になります。ただし審査があり、満額の支給を保証するものではありません。
対象となる労働者と事業主の主な要件
「転換さえすればもらえる」わけではなく、賃金・就業規則・離職状況まで要件が及びます。ここを外すと不支給になります。
対象となる労働者は、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上受けて雇用される有期雇用労働者または無期雇用労働者などです。加えて、正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた者でないこと、事業主または取締役の3親等以内の親族でないこと、支給申請日において離職していないこと、定年までの期間が1年以上あること、などの要件があります。新規学卒者で雇入れから1年を経過していない人は支給対象外です。
転換先が「正規雇用労働者」といえるかも重要です。公式には、同一事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用され、かつ「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が転換時点で適用されている者に限られます。「賞与は支給しない。ただし業績によっては支給することがある」といった規定は対象外となる例として挙げられています。
事業主側の主な要件は次のとおりです。
・転換制度を就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定していること
・転換後6か月以上継続雇用し、6か月分の賃金を支払っていること(第2期申請は12か月以上継続雇用し12か月分の賃金を支払っていること)
・正社員転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させていること
・転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該事業所で雇用保険被保険者を事業主都合により離職させていないこと
・同期間の特定受給資格離職者の割合が、転換日の雇用保険被保険者数の6%を超えていないこと(該当者3人以下の場合を除く)
・転換日以降、対象労働者を雇用保険被保険者として適用させ、社会保険の適用要件を満たす場合は被保険者として適用させていること
なお、転換時に試用期間を設けると試用期間終了日の翌日が転換日とみなされるため、正社員転換後に試用期間を設けないよう注意とパンフレットに明記されています。

申請の流れと期限(海南市の事業者の実務ステップ)
流れは「計画→制度整備→転換→6か月雇用・賃金支払→2か月以内に支給申請」の5段階です。順番を逆にすると受給できません。
ステップ1:キャリアアップ計画の作成・提出
各コースの実施日の前日までに、管轄労働局長へキャリアアップ計画書を提出します。実施するコースに関する取組を記載していないと受給できません。計画期間は3年以上5年以内で定め、事業所ごとにキャリアアップ管理者(複数事業所や労働者代表との兼任不可)を決め、全労働者の代表から意見を聴く必要があります。提出は窓口持参・郵送・電子申請が可能で、公式にはコース実施日の1か月前など余裕を持った提出が推奨されています。
ステップ2:就業規則等の改定
転換規定がない場合は就業規則または労働協約に転換制度を規定します。転換日の6か月以前から「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けていることが必要です。就業規則は従業員に周知した日付で効力を持つため、原則として発効と施行は同日付とし、発効後すみやかに労働基準監督署へ届け出てください。
ステップ3:就業規則等に基づく正社員転換
ステップ4:転換後6か月分の賃金の支払い(転換前6か月と比較して3%以上の増額が必要)
ステップ5:支給申請
取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(和歌山県内の事業所は和歌山労働局)へ支給申請書と添付書類を提出します。郵送も可能ですが、申請先への到着日が申請期間内である必要があるため余裕を持って送付してください。
なお、GビズIDを取得すれば「雇用関係助成金ポータル」(https://www.esop.mhlw.go.jp/)から電子申請も可能です。海南市から和歌山市の労働局まで出向く時間を考えると、電子申請は現実的な選択肢になります。操作に関する問い合わせ先は0570-081-857(受付9:30〜18:00、土日祝・年末年始を除く)です。
海南市の相談・申請窓口一覧
「計画書の書き方が分からない」段階なら、まず市内のハローワークか無料相談センターに行くのが最短です。
| 窓口 | 所在地・連絡先 | できること |
|---|---|---|
| ハローワークかいなん | 〒642-0001 海南市船尾186の85/073-483-8609(管轄:海南市、海草郡) | キャリアアップ計画の作成支援・受理、助成金の相談 |
| 和歌山労働局 職業安定部 職業対策課 | 〒640-8581 和歌山市黒田二丁目3番3号 和歌山労働総合庁舎5階/073-488-1161 | 雇用に係る助成金に関すること(計画提出先・支給申請先) |
| 和歌山働き方改革推進支援センター | 〒640-8317 和歌山市北出島1丁目5番46号/0120-547-888(平日9:00〜17:00) | 社会保険労務士による無料相談。非正規雇用労働者の待遇改善、就業規則の見直し、助成金の活用方法 |
| 海南商工会議所 | 〒642-0002 海南市日方1294-18/073-482-4363 | 経営革新等支援機関としての経営相談 |
| 海南市 産業振興課 商工観光班 | 073-483-8460 | 市の就職支援・事業者向け施策の案内 |
| ワークサロンかいなん | 海南市南赤坂11番地(海南市役所5階)/073-488-1371(平日9:00〜17:00) | 就職支援の窓口 |
公式ページは和歌山労働局「県内ハローワークの所在地と管轄地域一覧」、海南市「就職支援等窓口」、海南商工会議所、和歌山働き方改革推進支援センターをご確認ください。
なお、海南市独自のキャリアアップ助成金への上乗せ補助があるかどうかは、今回の調査では公式サイト上で確認できませんでした。市独自の支援の有無は海南市 産業振興課(073-483-8460)にご確認ください。
海南市の事業者がつまずきやすい落とし穴
不支給になる理由の多くは、金額ではなく「順番」と「書類」です。
落とし穴1:先に正社員にしてしまった。キャリアアップ計画はコース実施日の前日までの提出が必須です。転換後に計画を出しても、その転換分は受給できません。
落とし穴2:賃金3%増額の計算を間違える。比較するのは基本給および定額で支給されている諸手当を含む賃金の総額で、原則として所定労働時間1時間当たりの賃金で比較します(転換前後で所定労働時間に変更がなく、いずれも月給の場合は6か月分の総額)。実費弁償的な手当や毎月変動する手当は含められません。
落とし穴3:就業規則に差がない。実態として待遇差があっても、就業規則上に正規・非正規の区分の差が規定されていなければ「異なる雇用区分の就業規則等の適用」を受けていたと確認できず、支給対象外になります。
落とし穴4:直近に会社都合の離職者がいる。転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に事業主都合の離職があると対象外です。
落とし穴5:業者の勧誘を鵜呑みにする。公式パンフレットには、FAXや電話で「100%助成金が受けられます」等と執拗に勧誘する業者の情報が寄せられていること、厚生労働省や労働局・ハローワークはこうした勧誘に関与していないことが明記されています。また、申請事務を代理人に委ねていても、内容が不正受給に該当すれば事業主も不正処分の対象となります。
不正受給が発覚した場合、返還に加えて年3%の延滞金と返還額の20%の違約金が請求され、5年間は雇用関係助成金を受給できません。企業名公表・刑事告訴の対象となる場合もあります。
よくある質問
海南市の個人事業主でも対象になりますか。
雇用保険適用事業所の事業主であることなど全コース共通の要件を満たせば対象になり得ます。公式パンフレットでは、民間の事業者のほか公益法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、医療法人、社会福祉法人なども含まれると説明されています。個別の該当可否はハローワークかいなん(073-483-8609)にご確認ください。
1年度に何人まで申請できますか。
正社員化コースは1年度1事業所当たりの支給申請上限人数が20名です(同一対象者の2回目の申請を除く)。賃金規定等改定コースは100名が上限です。
締切はいつですか。
公募回のような一律の締切はなく通年の制度ですが、取組ごとに期限があります。キャリアアップ計画はコース実施日の前日まで、支給申請は取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内です。年度途中で助成金制度の要件等が変更になる場合があるため、取組を実施する際には事前に管轄の労働局またはハローワークへ最新の要件を確認してください。
和歌山県や海南市の上乗せ制度はありますか。
今回の調査では、海南市独自の上乗せ制度は公式サイト上で確認できませんでした。市の事業者向け施策は海南市 産業振興課 商工観光班(073-483-8460)、県の制度は和歌山県の公式サイトでご確認ください。
社労士に頼まず自社で申請できますか。
できます。キャリアアップ計画の作成支援・受理はハローワークかいなんで対応しており、和歌山働き方改革推進支援センター(0120-547-888)では社会保険労務士による無料相談を受けられます。ただし公式には「コンサルタントの実施や事前審査は行っていない」とされているため、要件の達成状況は事業主自身で確認する必要があります。
まとめ:海南市で正社員化を考えているなら、まず計画書から
・令和8年度の正社員化コースは、中小企業で有期→正規・重点支援対象者なら1人80万円(40万円×2期)、上限20名/年度
・令和8年度から情報公表加算20万円(大企業15万円)が新設された
・キャリアアップ計画はコース実施日の前日までに提出。転換が先になると受給できない
・転換後6か月の賃金を転換前より3%以上増額させることが必須
・海南市の相談先はハローワークかいなん、申請先は和歌山労働局。無料相談は和歌山働き方改革推進支援センター
人手不足が続く海南市で、すでに働いてくれている人を正社員として迎え入れることは、採用コストをかけずに戦力を固める現実的な一手です。要件を満たせば、その決断の初期コストを国の制度で軽くできます。まずは就業規則と直近6か月の賃金台帳を手元に、ハローワークかいなんへ相談に行くところから始めてください。
この記事は2026年10月5日時点の公式情報に基づきます。制度は年度途中で変更される場合があるため、申請前に必ず厚生労働省・和歌山労働局の公式サイトおよび支給要領で最新情報をご確認ください。

