この記事は2026年10月14日時点の公式情報(厚生労働省・和歌山労働局・御坊市)に基づきます。
「売上が前年より1割以上落ちた。社員を休ませたいが、休業手当を払い続けられるだろうか」。和歌山県御坊市で製造業・小売・宿泊・運送などを営む事業主なら、一度は頭をよぎる不安ではないでしょうか。
人手不足の御坊市で、せっかく育てた従業員を景気の波で手放すのは大きな損失です。雇用調整助成金は、休業・教育訓練・出向によって雇用を守る事業主に、休業手当などの一部を国が助成する制度です。
ただし、ネットに多い「中小企業なら休業手当の3分の2がもらえる」という説明は正確ではありません。支給を受けた日数が計30日に達すると、翌月以降の助成率は教育訓練の実施率で決まり、訓練をほとんど行わない中小企業は1/2に下がります。長期の休業を予定している御坊市の事業者ほど、この仕組みを知らないと資金計画が狂います。
いくら:休業手当・賃金相当額の中小企業2/3・大企業1/2(1人1日上限9,110円、令和8年8月1日時点)。支給30日到達後は教育訓練実施率で1/2〜2/3に変動
いつまで:通年受付。計画届は休業開始の前日まで、支給申請は支給対象期間末日の翌日から2か月以内
どこへ:和歌山労働局 職業安定部 職業対策課(073-488-1161)。窓口受付はハローワーク御坊(0738-22-3527)でも可。電子申請は雇用関係助成金ポータル
この記事では、御坊市の事業者が雇用調整助成金を使うために必要な対象要件・助成率と上限額・対象となる休業や訓練・申請の流れと締切・和歌山県内の窓口・よくある落とし穴を、厚生労働省のガイドブック(令和8年8月1日現在版)と和歌山労働局の公式情報だけで整理します。最後に、御坊市で相談できる4つの窓口を1枚の表にまとめました。

御坊市の事業者が使える雇用調整助成金とは(国の制度・市の上乗せ無し)
雇用調整助成金は厚生労働省が全国一律で実施する制度で、御坊市や和歌山県の独自補助ではありません。
厚生労働省の制度概要では、「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されます」と説明されています(厚生労働省 雇用調整助成金)。
ポイントは「一時的」であることです。事業を続ける前提で、仕事が減った期間だけ従業員を休ませ、その休業手当を国が一部負担するという設計になっています。廃業や整理解雇の費用を補助する制度ではありません。
御坊市役所の商工・雇用の担当は産業建設部 産業振興課です。同課の業務一覧には「勤労者福祉及び雇用に関すること」「労政に関すること」が含まれますが、2026年10月14日時点で同課ページに雇用調整助成金の案内や市独自の上乗せ補助は掲載されていません(御坊市 産業振興課)。申請・審査・支給はすべて和歌山労働局(国)が行い、市役所では申請を受け付けません。
なお、新型コロナ期の特例(日額上限や助成率の引き上げなど)はすでに終了しています。特例時の具体的な数値は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。検索で出てくる古い記事の数字は、令和8年度(2026年度)の通常制度には当てはまりません。
対象になる御坊市の事業主と労働者の要件
雇用調整助成金は「売上が10%以上減った雇用保険適用事業所」が基本の対象で、休業の規模や過去の受給歴にも条件があります。
事業主の主な要件(生産指標・雇用量・休業規模)
厚生労働省のガイドブック(令和8年8月1日現在版)に基づく主な要件は次の4つです(雇用調整助成金ガイドブック(PDF))。
- 生産指標要件:売上高または生産量などの指標について、最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること
- 雇用量要件:雇用保険被保険者数と受け入れ派遣労働者数の合計が、中小企業は10%を超えてかつ4人以上、大企業は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと
- 休業規模要件:判定基礎期間における対象労働者の休業・教育訓練の延日数が、所定労働延日数の1/20(大企業は1/15)以上であること
- クーリング期間:前回の対象期間の最後の判定基礎期間末日などの翌日から1年を超えていること
「判定基礎期間」とは、休業等の実績を判定する1か月単位の期間で、原則として毎月の賃金締切日の翌日から次の締切日までを指します。御坊市の事業所なら、自社の給与締め日に合わせて期間を区切ると考えてください。
支給限度日数は、休業・教育訓練の初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分です。
対象となる労働者(雇用保険被保険者で雇用6か月以上)
助成の対象となる労働者は、雇用調整の対象となりうる雇用保険被保険者です。ただしガイドブックでは、「休業等を行った日の属する判定基礎期間の初日の前日、または出向を開始する日の前日まで、同一の事業主に引き続き被保険者として雇用された期間が6か月未満である方」は対象外とされています。
雇用保険に入っていないパート・アルバイトや、入社6か月未満の従業員の休業手当は助成されません。繁忙期に短期で雇った人員を休ませる場合は、この点を先に確認してください。
助成率と上限額:中小企業2/3は「30日まで」が前提
助成率は中小企業2/3・大企業1/2から始まりますが、支給日数が計30日に達すると教育訓練の実施率で3区分に分かれます。
助成率の表(令和8年度・ガイドブック令和8年8月1日現在版)
| 区分 | 中小企業 | 大企業 | 教育訓練加算(1人1日) |
|---|---|---|---|
| 支給を受けた日数が計30日に達するまで | 2/3 | 1/2 | 1,200円 |
| 30日到達後・教育訓練実施率10%未満 | 1/2 | 1/4 | 1,200円 |
| 30日到達後・実施率10%以上20%未満 | 2/3 | 1/2 | 1,200円 |
| 30日到達後・実施率20%以上 | 2/3 | 1/2 | 1,800円 |
ガイドブックの原文は「支給を受けた日数が計30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間より、当該判定基礎期間における教育訓練の実施率によった助成率及び訓練加算が適用されます」です。
つまり、2か月目以降も休業を続ける御坊市の中小企業が助成率2/3を維持するには、休業日の10%以上を教育訓練に充てる必要があります。休業だけで乗り切ろうとすると、助成率は1/2に下がります。
1人1日あたりの上限額(9,110円)
助成額には1人1日あたりの上限があり、ガイドブックでは「雇用保険基本手当日額の最高額(令和8年8月1日時点で9,110円)」と定められています。この金額は毎年見直されるため、申請時点の額は厚生労働省の最新ガイドブックで確認してください。
たとえば1人1日の休業手当が12,000円でも、助成の計算基礎は9,110円が天井になります。賃金水準が高い従業員ほど、自社負担の割合が大きくなる点は資金計画に織り込んでください。
中小企業の範囲(御坊市の事業者はほぼ該当)
| 業種 | 資本金または出資額 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
資本金と労働者数のいずれか一方を満たせば中小企業です。御坊市内の小売・宿泊・製造の多くはこの範囲に入ります。

対象となる休業・教育訓練・出向の条件
助成の対象になる雇用調整は3種類で、それぞれに「どのような休ませ方・訓練・出向なら認められるか」の基準があります。
休業:休業手当は平均賃金の60%以上
休業は、労使協定に基づき所定労働日に労働者を休ませることです。支払う休業手当は、「労働基準法第26条の規定に違反していないもの」、すなわち平均賃金の60%以上であることが条件です。60%を下回る休業手当は法令違反となり、助成の対象にもなりません。
教育訓練:全日または2時間以上の短時間訓練
教育訓練は、「受講する対象労働者の所定労働時間の全日または短時間(2時間以上で所定労働時間未満)にわたり行われるもの」が対象です。訓練を実施した日は、助成率表の加算額(1人1日1,200円または1,800円)が上乗せされます。
御坊市の製造業なら安全衛生や新設備の操作訓練、宿泊・飲食なら接客やインバウンド対応の社内研修などが考えられますが、内容が助成対象になるかは計画届の段階で労働局に確認してください。
出向:3か月以上1年以内で出向元に復帰
出向は、「出向期間が3か月以上1年以内であって出向元事業所に復帰するもの」が対象です。出向先への転籍や、復帰予定のない出向は対象外です。
申請の流れと締切:計画届は休業前日まで、支給申請は2か月以内
申請は「計画届を出す→休業等を実施する→支給申請する」の3段階で、計画届の事前提出と支給申請の2か月期限が守れないと受給できません。
- 労使協定の締結:休業の期間・日数・休業手当の支払率などを労働者代表と協定します。
- 休業等実施計画届の提出:提出期限は「支給対象期間中の、休業等を開始する日の前日まで」です。ガイドブックは「初回の届出の場合は、休業等の初日の2週間前までをめどに提出」するよう求めています。
- 休業・教育訓練・出向の実施:計画どおりに実施し、出勤簿・賃金台帳・訓練の受講記録を保管します。
- 支給申請:期限は「支給対象期間の末日の翌日から2か月以内(ただし支給申請に係る休業手当又は賃金の支払日以降に限る)」です。
- 審査・支給決定:和歌山労働局が審査し、支給・不支給を決定します。
「支給対象期間」は、1つの判定基礎期間、または連続する2つか3つの判定基礎期間のいずれかを、事業主が計画届ごとに選べます。月ごとに申請する手間を減らしたいなら最長3か月分をまとめられますが、その分、支給までの時間も延びる点には注意してください。
支給申請に必要な主な書類
- 支給申請書(休業等)様式第5号(1)
- 助成額算定書 様式第5号(2)
- 休業・教育訓練実績一覧表及び所定外労働等の実施状況に関する申出書 様式第5号(3)
- 出勤簿やタイムカード、賃金台帳
- 教育訓練を行った場合は受講実績を示す書類(受講者レポート等)
電子申請:雇用関係助成金ポータル
計画届と支給申請は、厚生労働省の雇用関係助成金ポータルから電子申請できます。ポータルの新着情報では、2026年4月9日より令和8年4月8日改正に対応した休業等実施計画届・支給申請書の電子申請受付が始まったと案内されています。ログインにはGビズIDが使われるため、未取得の事業者はアカウント発行の日数も見込んでください。詳細な対象様式と操作方法はポータルの電子申請マニュアルで確認してください。
御坊市の窓口:和歌山労働局・ハローワーク御坊・市・商工会議所
申請先は和歌山労働局 職業安定部 職業対策課で、御坊市内ならハローワーク御坊の窓口でも受け付けています。
| 制度名 | 雇用調整助成金(令和8年度・2026年度) |
|---|---|
| 実施主体 | 厚生労働省(和歌山県内の申請先は和歌山労働局) |
| 対象者 | 雇用保険適用事業所の事業主で、最近3か月の生産指標が前年同期比10%以上減少などの要件を満たすもの |
| 補助率・上限 | 中小企業2/3・大企業1/2(支給30日到達後は教育訓練実施率で1/2〜2/3)。1人1日上限9,110円(令和8年8月1日時点)。教育訓練加算1,200円または1,800円 |
| 申請期間 | 通年。計画届は休業等開始の前日まで、支給申請は支給対象期間末日の翌日から2か月以内 |
| 窓口 | 和歌山労働局 職業安定部 職業対策課 073-488-1161(〒640-8581 和歌山市黒田二丁目3番3号 和歌山労働総合庁舎5階)。窓口受付はハローワーク御坊 0738-22-3527 でも可 |
| 公式URL | 厚生労働省 雇用調整助成金 |
御坊市内外の相談・提出先一覧
| 窓口 | 役割 | 連絡先・所在地 |
|---|---|---|
| 和歌山労働局 職業安定部 職業対策課 | 申請の正式な提出先・審査・実地調査 | 073-488-1161/〒640-8581 和歌山市黒田二丁目3番3号 和歌山労働総合庁舎5階 |
| ハローワーク御坊 | 窓口受付(管轄:御坊市、日高郡(みなべ町を除く)) | 0738-22-3527/〒644-0011 御坊市湯川町財部943/平日8:30〜17:15 |
| 御坊市 産業建設部 産業振興課 | 市の雇用・労政・商工の担当課(申請受付は行わない) | 0738-23-5510/〒644-8686 御坊市薗350番地2 |
| 御坊商工会議所 | 経営・労務の相談先 | 0738-22-1008/〒644-0002 御坊市薗350-28/平日8:30〜17:30 |
厚生労働省の問い合わせ先一覧では、和歌山県の雇用調整助成金の担当は和歌山労働局 職業対策課で、「窓口受付は各ハローワークでも行う(ハローワーク和歌山及びその付属施設は除く)」とされています(雇用調整助成金 お問い合わせ先一覧(PDF))。御坊市の事業者は、和歌山市まで出なくてもハローワーク御坊で書類を提出できることになりますが、提出前に電話で受付状況を確認すると確実です。
御坊商工会議所のサイトには雇用調整助成金の個別案内はありません。労使協定の作り方や休業手当の計算など労務面の相談先として活用し、制度そのものの判断は労働局に確認してください。

御坊市の事業者がつまずきやすい5つの落とし穴
不支給や返還につながる典型例は、30日ルールの見落とし、対象外の従業員の計上、計画届の後出し、そして不正受給の重い措置です。
1. 2か月目以降の助成率が下がる
前述のとおり、支給日数が計30日に達した次の判定基礎期間から、教育訓練実施率10%未満なら中小企業の助成率は1/2になります。長期休業を見込むなら、初月から教育訓練の計画を組み込むのが現実的です。
2. 雇用保険未加入・入社6か月未満の従業員を計上する
対象労働者は雇用保険被保険者で、同一事業主に6か月以上雇用されている人に限られます。該当しない従業員の休業手当を申請に含めると、その分は不支給になります。
3. 計画届を休業後に出す
計画届の期限は休業等を開始する日の前日までです。「とりあえず休ませてから書類を整える」は通りません。初回は2週間前までの提出が目安とされているため、売上減少の兆候が見えた時点で労働局に相談を始めてください。
4. 休業手当が平均賃金の60%を下回る
休業手当は労働基準法第26条で平均賃金の60%以上と定められています。支払率が60%未満だと法令違反となり、助成も受けられません。
5. 不正受給の措置は返還だけで終わらない
ガイドブックでは、不正受給が判明した場合、助成金の返還に加えて年3%の延滞金と返還額の20%相当額が課され、5年間の不支給措置がとられます。さらに「不正受給による支給取消額及び不正を理由として不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円以上の場合であって、返還命令後1か月以内に全額納付されないときは事業主名等を公表します」と明記されています。
和歌山労働局も「休業・教育訓練等の実施計画届を提出していただいた事業所に対して実地調査を行っています」と公表しています。休業日に出勤させていた、タイムカードと申請内容が合わないといったケースは実地調査で判明します。出勤簿と賃金台帳は申請内容と一致させ、保管してください。
よくある質問
御坊市独自の上乗せや、和歌山県の加算はありますか?
2026年10月14日時点で、御坊市産業振興課のページに雇用調整助成金の上乗せ制度は掲載されていません。雇用調整助成金は国の制度で、申請先も和歌山労働局です。市の支援を併用したい場合は、産業振興課(0738-23-5510)に直接確認してください。
ハローワーク御坊で申請書を提出できますか?
厚生労働省の問い合わせ先一覧では、和歌山県内の窓口受付は各ハローワークでも行うとされています(ハローワーク和歌山とその付属施設を除く)。ハローワーク御坊(0738-22-3527、平日8:30〜17:15)に事前に電話で確認したうえで持参するのが確実です。
助成率は中小企業なら必ず2/3ですか?
いいえ。2/3は支給を受けた日数が計30日に達するまでの率です。その後は判定基礎期間ごとの教育訓練実施率で決まり、10%未満なら1/2、10%以上なら2/3です。20%以上なら教育訓練加算が1人1日1,800円になります。
売上が10%減ったかどうかは、どの期間で比べますか?
売上高または生産量などの指標について、最近3か月間の月平均値を前年同期と比べ、10%以上減少していることが要件です。比較に使う指標と期間は計画届で示すため、月次の売上資料を用意してから労働局に相談してください。
支給申請の期限を過ぎるとどうなりますか?
支給申請の期限は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内です。期限を過ぎた判定基礎期間分は原則として申請できません。判定基礎期間を2〜3か月まとめる場合も、末日から2か月のカウントは変わらないため、締め日ごとにカレンダーに期限を記録しておくことをおすすめします。
この記事は2026年10月14日時点の公式情報に基づきます。制度は年度途中で改定されることがあるため、申請前に厚生労働省・和歌山労働局の最新情報をご確認ください。
