「後継者は決まっているのに、設備は古いまま。引き継ぐ側にそこまでの資金力はない」——和歌山県橋本市で代替わりを控えた事業者から、よく聞く悩みです。
そして多くの方が、商工会議所や取引金融機関で名前だけ聞いた制度を検索して、ここでつまずきます。「事業承継・引継ぎ補助金」という名称の制度は、現在は公募されていません。中身をほぼ引き継いだまま、「事業承継・M&A補助金」という名前に変わって続いています。名前が違うだけで「もう終わった制度だ」と諦めてしまう事業者が、毎年います。
結論を3行で示します。
- 橋本市の中小企業・小規模事業者・個人事業主が使えるのは、国の「事業承継・M&A補助金」(中小企業生産性革命推進事業)です。市独自の「事業承継補助金」は確認できませんでした。
- 16次公募の申請受付は2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00まで。枠と類型により補助上限は150万円〜2,000万円、補助率は1/3〜2/3です。
- 申請先は橋本市役所ではなく国の事務局(電子申請)。相談は橋本商工会議所(0736-32-0004)と和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(073-499-5221・相談無料)が入口です。
この記事で分かることは、①制度名が変わった経緯と今の正式名称、②国・和歌山県・橋本市の役割分担、③4つの枠ごとの対象者・補助率・上限額、④対象経費と申請の流れ・締切、⑤橋本市内で相談できる窓口の連絡先、⑥橋本市独自に使える「第二創業」向け補助金、⑦申請前に知っておきたい落とし穴です。
最後まで読むと、「自社はどの枠で、いつまでに、誰に相談して動くのか」を今日のうちに1本に絞れます。この記事は2026年10月10日時点の公式情報に基づきます。

結論|橋本市の事業者が使う「事業承継・引継ぎ補助金」の今の名前
橋本市の事業者が検索する「事業承継・引継ぎ補助金」は、現在は国の「事業承継・M&A補助金」として公募されている同系統の制度です。
この補助金は、経済産業省・中小企業庁の「中小企業生産性革命推進事業」のメニューのひとつです。中小企業生産性革命推進事業とは、ものづくり補助金・IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金などと同じ枠組みで、中小企業の生産性向上を支援する国の事業群を指します。その中で、事業の引き継ぎ・M&A・廃業に特化したのがこの補助金です。
運営は国が選定した事業承継・M&A補助金事務局が担い、公募回ごとに受付期間が区切られています。直近は14次公募が2026年2月27日〜4月3日、15次公募が2026年6月19日〜7月24日、そして16次公募が2026年10月2日〜11月6日17:00という流れです。年に複数回チャンスがあるため、今回に間に合わなくても次回を待てる設計になっています。
| 制度名 | 事業承継・M&A補助金(旧「事業承継・引継ぎ補助金」/中小企業生産性革命推進事業) |
|---|---|
| 実施主体 | 経済産業省・中小企業庁(運営:事業承継・M&A補助金事務局) |
| 対象者 | 橋本市を含む全国の中小企業・小規模事業者・個人事業主(枠ごとに要件あり・審査あり) |
| 補助率・上限 | 補助率1/3〜2/3、補助上限150万円〜2,000万円(枠・類型による) |
| 申請期間 | 16次公募:2026年10月2日(金)〜2026年11月6日(金)17:00まで |
| 窓口 | 申請=事務局へ電子申請/相談=橋本商工会議所 0736-32-0004、和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター 073-499-5221 |
| 公式URL | 事業承継・M&A補助金(令和7年度補正予算)公式サイト |
国・和歌山県・橋本市の役割分担を先に整理する
事業承継の支援は「国=補助金、和歌山県=計画・税制・融資、橋本市・商工会議所=相談と伴走」という三層構造になっています。
国(中小企業庁・事務局)が出すのが、この事業承継・M&A補助金です。設備投資やM&Aの専門家費用といった実費を補助します。
和歌山県は、商工労働部 商工労働政策局 商工振興課(073-441-2744)が窓口となり、事業承継計画策定支援、法人版事業承継税制特例の認定、個人版事業承継税制特例の認定、事業承継融資制度、事業承継・集約・活性化支援資金(企業活力強化貸付)などを案内しています。また、行政機関(近畿経済産業局ほか)・商工団体・金融機関・士業等専門家で構成する和歌山県事業承継ネットワークが組まれており、切れ目のない支援を掲げています。補助金だけでなく、税制と融資をセットで検討できるのが県の層です。
橋本市は、経済推進部 産業振興課(0736-33-1247)が商工業支援の担当課です。ただし、2026年10月10日時点で橋本市公式サイト上に「事業承継」を名称に冠した市独自の補助金は確認できませんでした。市の制度は創業・新商品開発・販路開拓・ECサイト構築などが中心で、事業承継そのものの費用は国の補助金で、承継後の新しい挑戦は市の補助金でという組み合わせが現実的です。
橋本商工会議所(橋本市市脇1-3-18/0736-32-0004)は、経営に関する相談や資金調達の相談を受け付けています。さらに和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターの出張相談会の会場にもなっており、原則毎月第2火曜日の13:00〜16:00に橋本商工会議所で個別相談が受けられます(予約制・申込は同センター073-499-5221)。国の補助金の事業計画を一緒に考えてもらう相手として、まずここに電話するのが最短です。
対象者は誰か|4つの枠と補助率・上限額
事業承継・M&A補助金は「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「PMI推進枠」「廃業・再チャレンジ枠」の4つに分かれ、自社の状況でどれを選ぶかが決まります。
PMIとは Post Merger Integration の略で、M&A成立後に組織や業務を統合していく取り組みを指します。初めて聞く言葉でも、「引き継いだ後の立ち上げ直し」と考えれば十分です。
| 枠・類型 | 主な対象 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している者 | 1/2・2/3(小規模事業者は2/3) | 800〜1,000万円(一定の賃上げ実施で1,000万円に引上げ) |
| 専門家活用枠(買い手支援類型) | 株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業者等 | 2/3以内(100億企業特例は1/2・1/3以内) | 600万円(DD実施時+200万円/100億企業特例は2,000万円) |
| 専門家活用枠(売り手支援類型) | 株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等 | 1/2又は2/3以内 | 600万円(DD実施時+200万円) |
| 専門家活用枠(小規模売り手支援類型) | 小規模事業者の売り手 | 2/3 | 450万円 |
| PMI推進枠(PMI専門家活用類型) | M&A後の経営統合を円滑に進める中小企業 | 1/2 | 150万円 |
| PMI推進枠(事業統合投資類型) | 同上(統合に伴う設備投資等) | 1/2・2/3(小規模事業者は2/3) | 800〜1,000万円(一定の賃上げ実施で1,000万円に引上げ) |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継やM&Aの検討・実施等に伴い廃業等を行う者 | 2/3以内(単独申請)/併用申請時は各枠の事業費の補助率に従う | 300万円(他の枠との併用申請でも300万円を加算) |
上記の数値は、事務局が公開している16次公募の各枠の公募要領「10.補助上限額、補助率等」に基づきます。あわせて補助下限額が定められており、事業承継促進枠とPMI推進枠(事業統合投資類型)は100万円、専門家活用枠(買い手・売り手)とPMI推進枠(PMI専門家活用類型)・廃業・再チャレンジ枠は50万円、小規模売り手支援類型は下限なしです。参考として中小企業基盤整備機構の補助金活用ナビ「事業承継・M&A補助金のご案内」にも一覧があります。ただし公的機関の案内ページでは廃業・再チャレンジ枠の上限が150万円と表示されている場合があり、16次公募の公募要領の300万円とずれています。同じ中小企業基盤整備機構のJ-Net21「16次公募10月2日受付開始」も、廃業・再チャレンジ枠の上限を300万円、専門家活用枠を最大600万円(DD実施時は最大200万円上乗せ)と案内しています。案内ページは更新時点が異なることがあるため、自社が申請する枠の金額は16次公募の公募要領(事務局サイトでダウンロード可)で必ず確認してください。
橋本市の事業者に当てはめると、選び方はおおむね次のようになります。息子・娘や従業員に継がせる予定で、その機会に設備を入れ替えたいなら事業承継促進枠。後継者がおらず第三者に譲りたい、または市内・近隣の同業を譲り受けたいなら専門家活用枠。譲り受けた後の統合作業にお金がかかるならPMI推進枠。一部の事業をたたんで身軽に引き継ぐなら廃業・再チャレンジ枠です。いずれも要件を満たしたうえで審査があり、申請すれば必ず採択されるものではありません。
補助対象経費と申請の流れ・締切(16次公募)
対象経費は枠ごとに決まっており、「何に使えるか」を先に確認してから計画を作るのが順序です。
公表されている主な補助対象経費は次のとおりです。
- 事業承継促進枠:設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費 等
- 専門家活用枠:謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料(M&A仲介・FA費用、デュー・デリジェンス費用、表明保証保険料などが含まれます)
- PMI推進枠:事業統合投資類型は設備費、外注費、委託費/PMI専門家活用類型は謝金、旅費、委託費
- 廃業・再チャレンジ枠:廃業支援費(補助上限50万円)、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費(移転・移設費は併用申請のみ)
デュー・デリジェンス(DD)とは、譲り受ける側が相手企業の財務・法務・事業内容を事前に調査することです。専門家活用枠では、この調査費用が補助対象に含まれる点が実務上の大きなメリットです。
申請の流れは次のようになります。
- 相談:橋本商工会議所または和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターで、承継の方針(親族内・従業員・第三者)を固める。
- 枠の確定と公募要領の入手:事務局サイトの「16次公募 公募要領等ダウンロード」から公募要領・必要書類チェックリスト・Jグランツ申請フォーム項目定義書を入手する。
- 必要書類の準備:決算書類、承継計画や契約関連書類、見積書などを揃える(必要書類は枠ごとに異なります)。
- 電子申請:公募要領で指定された方法で申請する。本補助金は電子申請システム「Jグランツ」からの申請のみを受け付けます。利用にはGビズIDプライムアカウントの取得が必須で、16次公募の公募要領では申請・発行に1週間程度(混雑時は3週間程度)かかる場合があると案内されています。未取得なら先に取得手続きを始めてください。
- 締切:2026年11月6日(金)17:00まで。締切間際はシステムが混み合うため、1週間前の提出完了を目標にしてください。
- 審査・交付決定:交付決定前に発注・契約・支払いをした経費は、原則として補助対象になりません。
橋本市内・和歌山県内の相談窓口
橋本市の事業者が最初に接触すべき窓口は、商工会議所・県のセンター・市の産業振興課の3つです。
橋本商工会議所(〒648-0073 和歌山県橋本市市脇1-3-18/TEL 0736-32-0004/FAX 0736-33-3326)。経営に関する相談や資金調達の相談窓口です。公式サイトで案内されている法律相談と確定申告の相談は会員以外は有料(1回3,000円)のため、会員かどうかで扱いが変わる相談があります。窓口の受付時間は公式サイトに掲載がないので、初回の電話で確認してください。国の補助金の事業計画づくりを地元で相談できる、いちばん近い相手です。
和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(〒640-8156 和歌山県和歌山市七番丁26-1 モンティグレ ダイワロイネットホテル和歌山3階/TEL 073-499-5221/受付9:00〜17:30・土日祝を除く)。国の委託事業として設置された公的な相談窓口で、相談は無料です。親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)、後継者人材バンク、事業承継計画策定を扱っています。和歌山市まで出向くのが難しい場合は出張相談会が使えます。橋本会場は橋本商工会議所(橋本市市脇1-3-18)で原則第2火曜日の13:00〜16:00、令和8年度は4月14日・5月12日・6月9日・7月14日・8月10日(月曜)・9月8日・10月13日・11月10日・12月8日・1月12日・2月9日・3月9日の日程が公表されています。予約制で、申込・問い合わせは同センター(073-499-5221)が受け付けます。
橋本市 経済推進部 産業振興課 産業支援係(〒648-8585 橋本市東家1丁目1番1号/TEL 0736-33-1247/平日8:30〜17:15)。市独自の補助金の相談先です。国の補助金の申請先ではありませんが、承継後に使える市の制度をまとめて聞けます。

橋本市独自に使える制度|第二創業なら創業スタートアップ支援事業補助金
橋本市には「事業承継補助金」という名前の制度は見当たりませんが、承継を機に新しいことを始めるなら市の創業支援が候補になります。
橋本市創業スタートアップ支援事業補助金は、「新たに創業する者又は第二創業を行う者」を対象としています。補助率は3分の2以内、補助限度額は30万円。加算はU39・Hashi-Mo・空き家バンク・店舗賃貸借/購入・移住者の5区分(各10万円)から最大2つまで選べ、加算を含めた補助金の上限は50万円です(交付要綱 別表2・令和8年度募集要領)。令和8年度(2026年度)の募集期間は令和8年4月6日(月)〜令和8年12月25日(金)、補助事業期間は交付決定日〜令和9年2月26日(金)とされています(予算額に達した時点で受付を終了する運用があるため、早めの相談が安全です)。
この補助金の交付要綱では「第二創業を行う者」を、募集開始日の6か月前の日から募集開始日以後6か月以内に事業承継を行った者または行う予定の者であって、募集開始日以後その年度内に市内で既存事業以外の新事業を開始する者と定義しています。事業を引き継いだ二代目が、新しい業態に踏み出す場面がまさにこれに当たります。承継の時期がこの6か月の幅に収まるかどうかで結論が変わるため、自社のケースは産業振興課(0736-33-1247)に事前相談してください。
このほか橋本市は「新商品開発補助金・販路開拓等支援補助金」(旧・産業振興基金事業補助金。令和8年度から名称変更と補助内容の見直しが行われています)を用意しており、新商品開発・改良事業、販路開拓事業、ECサイト構築事業の3メニューがあります。承継後の売上づくりに直結するメニューです。金額・要件・募集期間は年度ごとに変わるため、橋本市の新商品開発補助金・販路開拓等支援補助金のページの募集要領でご確認ください。
申請前に知っておきたい落とし穴
事業承継系の補助金は、金額の大きさよりも「手順の前後関係」でつまずく事業者が多いのが特徴です。
- 旧名称で情報を集めてしまう:「事業承継・引継ぎ補助金」の過去要領と現行の要件は別物です。必ず16次公募の資料を見てください。
- 交付決定前に動いてしまう:仲介契約や設備の発注を先に済ませると、原則として補助対象外になります。契約日・発注日・支払日の管理が最重要です。
- 締切を「11月6日中」と思い込む:締切は17:00です。当日の夕方に作業が残っていると間に合いません。
- 枠を取り違える:親族内承継なのに専門家活用枠で考えていた、というずれが起きます。枠が違えば対象経費も上限も問い合わせ先も変わります。
- 補助は後払いである:補助金は原則、事業完了後の精算払いです。承継の資金繰りそのものは、県の事業承継融資制度など借入とあわせて設計してください。
- 相談先をゼロから探す:橋本商工会議所と県のセンターという無料の公的窓口があります。民間の有料サービスに先に相談する必要はありません。
- 「必ず採択される」と考える:いずれの枠も審査があります。採択後も確定検査で対象外の経費が除かれることがあります。

よくある質問
橋本市に市独自の「事業承継補助金」はありますか?
2026年10月10日時点で、橋本市公式サイト上に事業承継を名称に冠した市独自の補助金は確認できませんでした。事業承継の費用は国の事業承継・M&A補助金、承継後の新分野展開は橋本市創業スタートアップ支援事業補助金(第二創業)という組み合わせで検討してください。最新の有無は産業振興課(0736-33-1247)にご確認ください。
親族内承継でも補助金は使えますか?
はい、要件を満たせば対象になり得ます。「事業承継促進枠」が、5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している者を対象としています。補助率は1/2・2/3(小規模事業者は2/3)、補助上限は800〜1,000万円です。詳細な要件は16次公募の公募要領でご確認ください。
申請書は橋本商工会議所や橋本市役所に提出するのですか?
いいえ。申請は国の事務局への電子申請です。橋本商工会議所や和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターは「相談・計画づくり」の窓口であり、提出先ではありません。相談と申請を分けて考えてください。
M&Aの仲介手数料やデュー・デリジェンス費用は補助されますか?
専門家活用枠の補助対象経費として、謝金・旅費・外注費・委託費・システム利用料・保険料が示されており、FAや仲介に係る費用、デュー・デリジェンス費用が含まれます。デュー・デリジェンスを実施する場合は、買い手支援類型・売り手支援類型のいずれも補助上限600万円に200万円が加算されます。対象となる契約形態や時期の条件は公募要領で確認してください。
今回の締切に間に合わない場合はどうなりますか?
この補助金は年に複数回公募されています。2026年は14次(2月27日〜4月3日)、15次(6月19日〜7月24日)、16次(10月2日〜11月6日)という形で実施されました。次回公募の有無と時期は事務局公式サイトで発表されますので、その間に承継計画と見積書を整えておくのが現実的です。
公式情報の確認先
申請前の最終確認は、必ず以下の公式ページで行ってください。
- 事業承継・M&A補助金 公式サイト(令和7年度補正予算・16次公募)
- 16次公募 事業承継促進枠 公募要領等ダウンロード
- 中小企業基盤整備機構 補助金活用ナビ|事業承継・M&A補助金のご案内
- 和歌山県 商工振興課|事業承継支援
- 和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター
- 橋本商工会議所
- 橋本市創業スタートアップ支援事業補助金
