石川県で介護ロボットや見守りセンサー、介護記録ソフトの導入を考え始めると、たいてい「県の補助金はいくら出るのか」「次の募集はいつか」で手が止まります。
見積りは手元にある。現場も夜間の見守りや記録の二重入力を何とかしたいと言っている。それでも理事会や法人本部に回す稟議書は、補助率・上限額・締切の3つが埋まらないと前に進みません。石川県内の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、デイサービス、訪問介護事業所——規模を問わず、詰まる場所はほぼ同じです。
結論(令和8年度・2026年度)
- 誰が:石川県内に所在する、介護保険法に基づくサービスを提供する全てのサービス事業所と、老人福祉法に基づく養護老人ホーム・軽費老人ホーム
- いくら:補助率4/5(事業者負担1/5)、1事業所あたりの上限400万円。機器区分ごとに基準額あり
- いつまで:令和8年度の募集は令和8年8月24日〜9月14日で終了。交付決定を受けた事業所は、原則 令和9年1月末日までに納品・支払いと実績報告
- どこへ:石川県健康福祉部長寿社会課 施設サービスグループ(TEL 076-225-1416)
この記事では、石川県の公式サイトに掲載されている交付要綱・別表・Q&A・補助金計算例・年間スケジュールの原文から、対象になる事業所、対象機器、機器区分ごとの基準額、400万円という上限の当てはめ方、申請から実績報告までの日程、そして石川県だけの要件(研修受講・委員会設置・ケアプランデータ連携システム・SECURITY ACTION宣言)を順番に整理します。
最初に1つだけ押さえてください。石川県のQ&Aには「交付決定日よりも前に、機器を導入(購入)することは可能か」という問いが立てられており、回答は「不可。交付決定日後に発注及び契約したものが補助対象となる」と明記されています。ここを読み飛ばすと、交付決定を受けても経費が認められません。
この記事は2026年10月29日時点の石川県公式サイトの公表情報に基づきます。最新の内容は必ず県の公式ページと公募要領でご確認ください。
1. 結論|石川県の介護テクノロジー補助金は「定着支援事業」1本に集約
石川県が令和8年度に実施している介護テクノロジー向けの補助金は、県が所管する「石川県介護テクノロジー定着支援事業費補助金」が中心で、介護ロボットも見守り機器も介護ソフトも、この1本の中の区分として扱われます。
正式名称は「令和8年度石川県介護テクノロジー定着支援事業費補助金」です。交付要綱は令和8年8月7日から施行され、県の担当は健康福祉部長寿社会課 施設サービスグループです。介護ロボット用の補助金、ICT用の補助金、と別々の事業に分かれている県もありますが、石川県は機器の種類で事業を分けず、1つの補助金の中で「区分ごとの基準額」と「1事業所あたり400万円」という2段階の上限で金額が決まる設計です。
| 事業名 | 令和8年度石川県介護テクノロジー定着支援事業費補助金 |
|---|---|
| 実施主体 | 石川県(健康福祉部長寿社会課 施設サービスグループ) |
| 対象施設 | 石川県内に所在する、介護保険法に基づくサービスを提供する全てのサービス事業所/老人福祉法に基づく養護老人ホーム及び軽費老人ホーム |
| 対象機器 | TAISに「介護テクノロジー」として選定された機器等(移乗支援・入浴支援・見守り機器・インカム・介護ソフト ほか)、介護ソフトの定着促進支援(一体利用するタブレット・Wi-Fi環境整備等)、パッケージ型導入支援(伴走支援事業所に選定された事業所のみ)、導入支援と一体的に行う業務改善支援 |
| 補助率・上限 | 補助率4/5(事業者負担1/5)/1事業所あたり400万円。区分ごとの基準額は1機器100万円・1機器30万円、介護ソフト等は職員数に応じて100万〜250万円、パッケージ型500万円、業務改善支援48万円 |
| 申請期間 | 令和8年8月24日(月)〜令和8年9月14日(月)※伴走支援事業に選定された事業所については10月中旬に別途募集 |
| 窓口 | 石川県健康福祉部長寿社会課 施設サービスグループ(金沢市鞍月1丁目1番地/TEL 076-225-1416/FAX 076-225-1418) |
| 公式URL | 石川県「介護現場の生産性向上事業(介護テクノロジー定着支援事業費補助金)」 |
つまり2026年10月末の時点では、令和8年度の通常の募集はすでに締め切られています。これから申請を検討する施設は、県の公式ページで伴走支援事業所向けの別途募集の案内を確認しつつ、次年度(令和9年度)の募集に向けて要件を先に満たしておく、という組み立てになります。すでに交付決定を受けている施設にとっては、令和9年1月末という実績報告の期限が目前の山場です。

2. 制度の全体像|国の基金と石川県の事業名の関係
石川県の補助金は県が独自に作った制度ではなく、国の通知にもとづく全国共通の枠組みを、石川県の要綱として具体化したものです。
交付要綱の第1条には、根拠として「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業の実施について(令和8年4月7日付け老発0407第3号厚生労働省老健局長通知)」の別紙1「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」と、石川県補助金交付規則が挙げられています。国の事業の財源は地域医療介護総合確保基金(消費税財源を使い、都道府県が計画を立てて介護人材確保などに充てる基金)で、都道府県が実施主体になります。
このため、国の制度名(介護テクノロジー導入支援事業)と石川県の補助金名(介護テクノロジー定着支援事業費補助金)は一致しません。検索で「石川県 介護テクノロジー導入支援 補助金」と調べても県の該当ページにたどり着きにくいのはこのためで、石川県では「定着支援」という言葉が正式名称に入ります。国側の考え方や全国の動きは厚生労働省の介護テクノロジーの利用促進のページで確認できます。全国共通の設計と各県の違いは介護テクノロジー導入支援事業の全体像と介護テクノロジー補助金の完全ガイドでも整理しています。
もう一つ、石川県には相談の受け皿があります。いしかわ介護業務改善相談支援センター(金沢市赤土町ニ13-1 石川県リハビリテーションセンター内/TEL 076-266-2860/相談対応時間9:00〜17:00、土日祝を除く)で、相談窓口・体験展示・試用貸出・研修会・伴走支援といったメニューが示されています。後述のとおり、このセンターの研修受講または支援を受けることが補助要件そのものに組み込まれているため、機器選定の前段階から関わる存在だと考えてください。
3. 対象になる介護事業所と対象機器|出発点はTAIS掲載
対象は「石川県内の介護事業所」と広く取られていますが、機器の側には「TAISに介護テクノロジーとして選定されていること」という明確な線引きがあります。
対象になる事業所・ならない事業所
交付要綱第2条は、補助事業者を「介護保険法に基づくサービスを提供する全てのサービス事業所」と「老人福祉法に基づく養護老人ホーム及び軽費老人ホーム」と定めています。通所介護も訪問介護も居宅介護支援も含む、かなり広い設計です。一方でQ&Aは、介護給付・介護予防給付の対象ではない総合事業のみを行う事業所は「介護事業所」に含まれず対象外と明記しています(指定訪問介護・指定通所介護等と一体的に実施していて、指定事業所で導入した機器を総合事業でも使う形であれば差し支えない、とされています)。
事業所の数え方も要注意です。Q&Aでは、同一敷地内に特別養護老人ホームと通所介護事業所が併設されている場合は「指定ごとに1事業所としてカウントする」ため2事業所と計算し、申請書は法人でまとめて提出する、と整理されています。空床型については本体施設と合わせて1事業所です。市町直営・民間運営を問わず介護予防支援事業所で使う機器は対象ですが、地域包括支援センターとしての業務分は対象外とされています。
対象機器はTAIS掲載が原則
対象経費の中心は、公益財団法人テクノエイド協会が提供する福祉用具情報システム「TAIS」で「介護テクノロジー」として選定された機器等の導入費用です。TAISは、国内の福祉用具の製造・輸入事業者から企業情報と福祉用具情報を集めて公開している仕組みで、掲載はテクノエイド協会のサイトから確認できます。要綱はこのほかに、TAISに申請できていない等の理由で未掲載でも機能が同水準と知事が判断した機器等、職場環境整備として有効と知事が判断した機器等(バックオフィスソフト=電子サインシステム・給与・勤怠管理等が例示)も対象に含めています。
Q&Aで示された個別の線引きは、稟議前に目を通しておく価値があります。TAISに介護テクノロジーとして選定されているナースコールは対象、防犯を目的とした監視カメラは対象外。入浴支援機器の浴槽洗浄剤や専用ボディーソープなどの消耗品、SDカードやタブレットケースなどの付属品も対象外。機器導入に係る配送料は導入費用の一部として対象。福祉用具貸与事業所が貸与するために購入する福祉用具は対象外です。見守り機器の導入にあたっては、利用者のプライバシーに配慮し、利用者または家族等に必要な説明を行って同意を得ることが求められています。機種の比較検討は見守りセンサーの比較・選び方もあわせてご覧ください。
4. 補助率4/5と上限額|機器区分別の基準額と1事業所400万円
令和8年度の金額は、区分ごとの基準額で一度切られ、その合計がさらに1事業所400万円で切られる、という二段構えで決まります。
交付要綱第5条は、まず別表3の区分ごとに「対象経費の実支出額×補助率4/5」と「基準額」を比べて少ない方を選び(千円未満の端数は切捨て)、次にその合計額と1事業所ごとの基準額400万円を比べて少ない方を補助額とする、と定めています。基準額に4/5を掛けるのではなく、4/5を掛けた額と基準額を比べる点が、計算を誤りやすいところです。
| 区分 | 対象機器等(要約) | 補助率 | 基準額 |
|---|---|---|---|
| 介護テクノロジー等の導入支援 | TAISの「移乗支援(装着型・非装着型)」「入浴支援」、「介護業務支援」のインカム、これらと同水準と判断された機器等、要綱第3条(1)ウ②のうちバックオフィスソフト以外 | 4/5 | 1機器につき100万円 |
| 同上 | TAISの「介護業務支援」の介護ソフト、同水準と判断された機器等、バックオフィスソフト | 4/5 | 別表4の第2欄(職員数に応じて100万〜250万円) |
| 同上 | 上記以外の介護テクノロジー(見守り機器 など) | 4/5 | 1機器につき30万円 |
| 介護ソフトの定着促進支援 | 介護ソフトと一体的に使うPC・タブレット端末、介護ソフト利用のためのWi-Fi環境整備、導入前後のベンダーによるサポート費用 等 | 4/5 | 導入する介護ソフトの経費と合わせて別表4の第3欄(115万〜265万円)※パッケージ型と合わせて対象とする場合はパッケージ型の上限に15万円上乗せ |
| パッケージ型導入支援(機器等の合計経費) | 「介護業務支援」に分類される介護テクノロジー等と、連動することで効果が高まると判断できる介護テクノロジー等 ※伴走支援事業所に選定された事業所のみ | 4/5 | 500万円(県の「補助対象経費整理表」では「上記と併用不可」と注記されており、導入支援・業務改善支援の区分との併用はできないとされています) |
| 導入支援と一体的に行う業務改善支援 | コンサルティング会社等による事前評価(課題抽出)・業務改善の助言や指導・事後評価の費用。メーカーや販売店による機器の操作説明は対象外 | 4/5 | 48万円 |
介護ソフトは「職員数」で基準額が動く
令和8年度の別表4では、介護ソフト・バックオフィスソフトは、職員数に応じてライセンス数が変わる契約の場合、申請時点の職員数で基準額が変わります。それ以外の契約方式なら一律250万円(定着促進支援を併用する場合は265万円)です。
| 職員数(申請時点) | 基準額(介護ソフト等のみ) | 基準額(定着促進支援を併用) |
|---|---|---|
| 1名以上10名以下 | 100万円 | 115万円 |
| 11名以上20名以下 | 150万円 | 165万円 |
| 21名以上30名以下 | 200万円 | 215万円 |
| 31名以上 | 250万円 | 265万円 |
職員数には直接処遇職員だけでなく、ICTの活用が見込まれる管理者や生活相談員等も算入して差し支えないとされ、常勤換算が原則ですが、訪問系職員や管理者・生活相談員等は実人数でも差し支えないとされています。また、訪問介護事業所等の居宅サービス事業所または居宅介護支援事業所(介護予防を含む)が、令和8年度中にケアプランデータ連携システムで5事業所以上とデータ連携を実施する場合は、基準額に5万円が加算されます。介護ソフトそのものの選び方は介護記録ソフトの比較で詳しく扱っています。
県が示した補助金計算例
石川県は令和8年度の「補助金計算の例」という資料を公開しています。1事業所が、介護ソフト1式(対象経費240万円・税抜)、入浴支援機器1台(200万円)、機能訓練支援機器4台(1台40万円)を導入するケースです。
| 導入機器 | 1式(台)あたりの対象経費 | ×4/5 | 基準額と比べた補助申請額 |
|---|---|---|---|
| 介護ソフト(1式) | 240万円 | 192万円 | 192万円 |
| 入浴支援機器(1台) | 200万円 | 160万円 | 100万円(基準額100万円/台) |
| 機能訓練支援機器(4台) | 40万円 | 32万円 | 120万円(30万円×4台) |
| 合計 | — | — | 412万円 → 400万円(1事業所あたりの上限) |
なお要綱第5条第1項(2)には「ただし、第3条(3)の支援を受ける補助事業者は、別表3の第4欄に定める基準額と比較して少ない方の額を補助額とする」というただし書きがあります。業務改善支援(48万円)を使う場合の400万円との関係は読み手によって解釈が分かれうる部分なので、該当する場合は長寿社会課に確認してください。補助金の額は審査のうえ交付決定で確定するもので、申請額が満額認められるとは限りません。
5. 申請の流れと締切|交付決定前の発注は対象外
石川県は年間スケジュールを1枚の図で公開しており、県側の動きと事業所側の動きが時期ごとに対応づけられています。
| 時期 | 県の動き | 事業所の動き |
|---|---|---|
| 8月上旬 | 交付要綱・申請書様式の発出 | 研修受講、センターへ相談(課題抽出・分析) |
| 8月24日〜9月14日 | 募集期間 | 交付申請書・業務改善計画書の提出 |
| 9月末 | 交付決定通知の発出 | — |
| 10月〜1月ごろ | — | (交付決定後)機器導入・支払い、機器導入後の分析 |
| 〜1月末 | 実績報告書の締め切り | 実績報告書の提出 |
| 2月下旬 | 額の確定通知の発出 | 請求書の提出 |
| 3月末 | 支払い(精算払) | — |
重要なのは順番です。交付決定前に事業着手した経費は要綱第5条第2項(4)で補助対象外とされ、Q&Aも「交付決定日後に発注及び契約したもの」が対象と明示しています。見積りの取得や機種の比較検討まではもちろん可能ですが、発注書・契約書・リース契約の日付が交付決定日より前になっていないかを必ず確認してください。実績報告は「介護テクノロジー等の導入に係る支払から30日を経過する日」または「別に定める期日」のいずれか早い日までで、Q&Aでは事業完了後1か月以内もしくは令和9年1月末日のいずれか早い日と案内されています。事業完了日は、機器の導入が完了し導入業者への支払いを完了した日(領収日)です。機器の納品と支払いも原則として令和9年1月末日までに終えておく必要があります。
交付決定後に経費の内容が変わる場合は、補助金変更承認申請書(様式第2号)による知事の承認が必要です(交付決定額の20%以内の増減による変更は除く)。申請書類の一般的な並びや注意点は補助金申請の流れ・必要書類にまとめています。
次の募集に向けた逆算スケジュール
令和9年度の実施は2026年10月29日時点で未発表ですが、令和8年度と同じ時期で動くと仮定した場合に、いつ何を終えておくべきかを整理すると次のようになります(あくまで準備の目安で、日程は県の公表を待つ必要があります)。
| 時期の目安 | やっておくこと | 根拠 |
|---|---|---|
| 募集の4〜5か月前 | 現場の困りごとの洗い出し、センターへの相談予約、機器の体験展示・試用貸出の活用 | センターの支援メニュー |
| 募集の2〜3か月前 | センターの研修受講(オンデマンド受講可。アンケート提出で受講とみなされる) | 要綱第4条(1)・概要資料 |
| 募集の1〜2か月前 | 入所系は委員会の設置、通所・訪問系はケアプランデータ連携システムの利用開始準備、SECURITY ACTIONの宣言 | 要綱第4条(2)(3)(5) |
| 募集の1か月前 | 機器の見積り取得(税抜額の確認)、業務改善計画書の作成、法人内での申請書の取りまとめ | 要綱第4条(6)・Q&A |
| 交付決定後 | 発注・契約・納品・支払い、導入後の分析、実績報告の準備 | Q&A(共通9・7・8) |

6. 石川県ならではの注意点|要件・併用・リース・複数事業所
石川県の補助要件は交付要綱第4条に7項目が並び、機器を買う前に整えておくべき手続きが複数あります。
研修受講か、業務改善支援か
要綱第4条(1)は「いしかわ介護業務改善相談支援センターが実施する研修又は前条(3)に掲げる支援を受けること」としています。県の概要資料では、応募資格として「介護生産性向上基礎研修」と「課題の見える化研修」の2つの研修受講(オンデマンド受講可、オンデマンドはアンケート提出をもって受講とみなす)が示されています。研修を受けるか、コンサルティング会社等による業務改善支援を受けるか、いずれかのルートで「外部の目」を通すことが要件になっている点が石川県の特徴です。研修の開催形態や回数は年度によって変わるため、最新はセンターに確認してください。
入所系は委員会、通所・訪問系はケアプランデータ連携
別表1に掲げるサービス(短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院 など)は、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会(名称は問わない)の設置が必要です。別表2に掲げるサービス(訪問介護、通所介護、訪問看護、居宅介護支援、地域密着型通所介護 など)は、令和8年度内にケアプランデータ連携システムの利用を開始することが要件で、実績報告時にデータ連携の実績が分かる書類の提出が必要とされています。
SECURITY ACTIONとLIFE
要件(5)として、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかの宣言が求められます。IPAには介護テクノロジー定着支援事業・介護テクノロジー導入支援事業向けのSECURITY ACTION特設ページが用意されています。Q&Aでは、宣言は事業所単位で行うことを想定しており、中小企業・大企業の別に関わらず複数法人を運営する場合は事業所単位で法人番号がないと考えられるため「個人事業主」として申し込むことを想定、と説明されています。あわせて要件(7)で、補助を受けた事業所は科学的介護情報システム(LIFE)による情報収集に協力することとされ、Q&Aでは「加算の算定の有無に関わらず、LIFEを活用する全てのサービス事業所を対象とする」と整理されています。
リース・サブスク・クラウドの扱い
Q&Aは、リースの場合も実績報告書の提出期限である令和9年1月末日までに支払った金額が補助対象になるとしています。介護ソフトのライセンスも同じ考え方で、使用権の期間ではなく支払金額で判断し、複数年分を初年度にまとめて支払った場合はその費用全体が対象、1年分の毎年払いなら1年分が対象、月払いは対象期間中に支払った経費が対象です。Wi-Fi環境整備のみへの補助は行われておらず、介護テクノロジー機器の導入に伴うWi-Fi環境整備が対象という点も明示されています。
複数事業所の申請と他補助金との併用
複数の事業所を運営する法人は、申請書を法人でまとめて提出しますが、業務改善計画書は事業所ごとに作成する必要があります。他の補助金との関係では、要綱第5条第2項(1)が「他の補助金の交付を受けているもの又は受けることを予定しているもの」を対象外とし、第8条(9)も「本事業により取得した介護テクノロジー機器については、他の補助金、助成金又は交付金を受けてはならない」と定めています。同じ機器に国や市町の別の補助金を重ねることはできないと考えてください。石川県には政令指定都市がなく(金沢市は中核市)、県内全域をこの県事業が一括してカバーする形ですが、市町が独自に上乗せする制度の有無までは公式に確認できませんでした。お住まいの市町の介護保険担当課にも確認しておくと安全です。
導入後も手続きは続きます。要綱第10条により、補助事業者は導入の翌年度から原則3年間、業務改善効果等を知事に報告しなければなりません。単価30万円以上の機器は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令で定める期間を経過するまで、知事の承認なく処分できない点にも注意してください。近隣県の制度と比べたい方は新潟県の介護補助金、規模の大きい自治体の設計を見たい方は愛知県の介護補助金や京都府の介護補助金もご覧ください。
7. よくある質問
石川県の介護テクノロジー定着支援事業費補助金について、問い合わせの多い5点を公式資料の記載に沿って整理します。
Q1. 令和8年度の申請にまだ間に合いますか?
令和8年度の募集期間は令和8年8月24日(月)から9月14日(月)までで、すでに終了しています。県の概要資料には「伴走支援事業に選定された事業所については、10月中旬に別途募集」との注記があるため、該当する事業所は県の公式ページと長寿社会課に確認してください。令和9年度(2027年度)の実施有無・予算・募集時期は2026年10月29日時点で未発表です。
Q2. 交付決定より前に購入した機器は対象になりますか?
対象になりません。Q&Aは「不可。交付決定日後に発注及び契約したものが補助対象となる」と回答しており、要綱第5条第2項(4)も交付決定前に事業着手した経費を対象外としています。年度内に事業が完了しない経費も対象外です。
Q3. タブレットやWi-Fi工事だけでも補助対象になりますか?
Wi-Fi環境整備のみへの補助は行われていません。介護テクノロジー機器の導入に伴うWi-Fi環境整備が対象で、介護ソフト以外の介護テクノロジーの導入に伴って導入するPCやタブレット端末、配線工事、モデム・ルーター、アクセスポイント等が付帯経費として認められます。介護ソフトと一体的に使う情報端末やWi-Fi環境整備は、介護ソフトの定着促進支援の区分で扱われます。
Q4. 複数の事業所を運営している法人はどう申請しますか?
申請書は法人でまとめて提出します。併設施設は指定ごとに1事業所としてカウントし(空床型は本体施設と合わせて1事業所)、上限400万円は事業所ごとに適用されます。業務改善計画書は事業所ごとに作成し、法人内でとりまとめて提出するよう案内されています。
Q5. リースやサブスクの介護ソフトも対象ですか?
対象になり得ます。リース費用やサブスクリプション費用も含め、実績報告書の提出期限である令和9年1月末日までに支払った金額が補助対象と整理されています。複数年分を初年度にまとめて支払った場合はその全体が、毎年払いの場合は1年分が対象です。なお、補助対象経費に消費税及び地方消費税は含めません。
8. まとめ|石川県は「研修・計画・交付決定」の順番がすべて
石川県の介護テクノロジー補助金は、金額の設計よりも手続きの順番でつまずきやすい制度です。
令和8年度は補助率4/5、1事業所あたり400万円。区分ごとの基準額は、移乗支援・入浴支援・インカムが1機器100万円、見守り機器などその他の機器が1機器30万円、介護ソフト等は職員数に応じて100万〜250万円。この数字だけ見れば使いやすい制度ですが、研修受講または業務改善支援、委員会の設置かケアプランデータ連携システムの利用開始、SECURITY ACTIONの宣言、業務改善計画の作成という4つの準備が、申請より前に終わっていなければ土俵に上がれません。そして交付決定の通知が届いてから発注する。この順番さえ守れば、あとは実績報告の期限管理だけです。
令和8年度の通常募集は終了していますので、いま動くなら「次に備える」が正解です。センターへの相談と研修受講は募集前でも進められますし、機器の体験展示や試用貸出で現場の納得を取っておけば、業務改善計画の中身も濃くなります。制度全体の考え方は介護テクノロジー導入支援事業の全体像、他県の締切感覚は東京都の介護補助金や大阪府の介護補助金も参考にしてください。

この記事は2026年10月29日時点の石川県公式サイト(交付要綱・別表・Q&A・補助金計算の例・年間スケジュール)および厚生労働省・IPAの公表情報に基づきます。要件や金額、日程は変更される場合があります。申請にあたっては必ず石川県の公式ページと最新の公募要領をご確認いただくか、石川県健康福祉部長寿社会課 施設サービスグループ(TEL 076-225-1416)へお問い合わせください。
出典(公式)
- 石川県 介護現場の生産性向上事業(介護テクノロジー定着支援事業費補助金)
- 令和8年度石川県介護テクノロジー定着支援事業費補助金交付要綱(PDF)
- 別表(PDF)
- (概要)令和8年度石川県介護テクノロジー定着支援事業費補助金(PDF)
- Q&A(PDF)
- 補助金計算の例(PDF)
- 年間スケジュール(予定)(PDF)
- 補助対象経費整理表(PDF)
- いしかわ介護業務改善相談支援センター
- 厚生労働省 介護テクノロジーの利用促進
- 公益財団法人テクノエイド協会(福祉用具情報システム TAIS)
- IPA SECURITY ACTION(介護テクノロジー定着支援事業・介護テクノロジー導入支援事業)
