「夜勤の巡視でやっと座れたと思ったら、また次の居室へ」——多くの介護現場で毎晩繰り返されているこの光景は、担当者の努力だけでは解決しません。夜間の定時巡視や訪室対応の負担が増すなか、介護施設の見守りセンサー(見守り機器)は「介護テクノロジー導入支援事業」の補助対象にもなり、導入を検討する施設が増えています。意外に思われがちですが、見守りセンサーは1台あたり上限30万円の補助に加え、設置に伴うWi-Fi工事まで別枠で補助対象になり得ます。つまり「機器が高いから」という理由で諦める必要は必ずしもありません。本記事では、マット型・ベッド型・カメラ型・レーダー型など主要方式の仕組みと向き不向き、実在する代表製品、補助金の対象条件、プライバシーと夜勤配置基準の実務、選定チェックリストまでを、施設長・事務長・DX担当者向けに一次情報ベースで整理します。読み終える頃には、「自施設ならどの方式を、どの補助金で、どの順番で入れるか」の見取り図が描けるはずです。
【結論】方式早見と選び方の要点
| 方式 | ひとことで言うと | こんな施設に |
|---|---|---|
| 床置きマット型 | 踏んだら通知。低コスト・工事不要 | まず一部の居室から始めたい |
| ベッドセンサー型(マットレス下) | 体動から睡眠・起き上がりを見える化 | 夜間の定時巡視・訪室回数を見直したい |
| ベッド脚荷重型 | 荷重変化で「動き出し」を検知 | 既存ベッドを活かして後付けしたい |
| カメラ・画像型 | 居室全体を映像・シルエットで確認 | 駆けつけ前に状況を確認して優先順位を付けたい |
| 非接触レーダー型(ミリ波) | カメラなしで居室全体の動きを検知 | プライバシー配慮を最優先したい |
| 複合プラットフォーム型 | 複数センサー+スマホ・記録ソフト連携 | 施設全体のDXとして整備したい |
- 選定の起点は製品でなく業務。「夜勤のどの業務(定時巡視・訪室判断・記録)を減らしたいか」から方式を絞る
- ナースコール・介護記録ソフトとの連携可否を先に確認。ここで運用効率が大きく変わる(記録側の選定は介護記録ソフトの比較も参照)
- 補助金は重点分野④「見守り・コミュニケーション」該当+TAISに介護テクノロジーとして掲載された機器が原則対象。国の基本スキームでは見守り機器は1台あたり上限30万円、Wi-Fi等の通信環境整備も別枠で補助対象
- 公募時期・補助率・台数上限は都道府県ごとに異なる。交付決定前の発注は対象外が原則のため、年度初めからの逆算が必須(制度の全体像は介護テクノロジー導入支援事業の全体像)
見守りセンサーとは?なぜ今、介護施設で導入が進むのか
この章の要点:見守りセンサーは入居者の体動や離床を検知して職員に通知する機器の総称で、人材不足・補助制度の整備・介護報酬上の評価という3つの追い風で導入が加速しています。
介護施設向けの見守りセンサーとは、居室やベッドに設置したセンサーで入居者の体動・起き上がり・離床・入退室などの状態を検知し、スタッフルームのPCや職員のスマートフォンに通知する機器の総称です。職員が居室に行かなくても状態の目安を把握できるため、夜間の定時巡視や訪室の優先順位付けといった見守り業務を支援し、職員の負担軽減と業務効率化につなげることが導入の主目的です。
導入が加速している背景は大きく3つあります。
- 人材不足の長期化:厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計では、必要な介護職員数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人。2022年度の約215万人から大幅な上積みが必要とされており、採用強化だけでは埋めきれない差を生産性向上で補う必要があります。
- 国・都道府県の補助制度の整備:介護ロボット導入支援事業とICT導入支援事業を再構築した「介護テクノロジー導入支援事業」により、見守り機器本体に加えWi-Fi等の通信環境整備まで補助対象になっています(詳細は後述、制度の全体像は介護テクノロジー導入支援事業の全体像を参照)。国の施策の一次情報は厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」ページにまとまっています。
- 介護報酬上の評価:2021年度介護報酬改定では、見守り機器を入所者全員に導入しインカム等のICTを使用すること等を要件に、夜勤職員配置加算の人員要件を緩和する区分(0.9人→0.6人)が設けられるなど、テクノロジー活用が制度面でも位置づけられています(対象サービス・算定要件の詳細は最新の告示・通知の確認が必要です。詳しくは後述の「夜勤職員配置基準の緩和」章で解説します)。
なお、見守りセンサーはあくまで職員の見守り業務を支援するツールであり、事故や体調変化を防ぐことを保証する機器ではありません。本記事も業務効率化・補助金活用の観点から整理しており、機器の医療的な効果を述べるものではない点をあらかじめお断りします。

方式別比較|マット型・ベッド型・カメラ型・レーダー型の違い
この章の要点:見守りセンサーは検知の仕組みで6方式に大別され、どれが最良かではなく「自施設のどの課題に合うか」で選ぶのが原則です。ベッド上を厚く見るか、居室全体をカバーするか、プライバシーをどこまで優先するかが分岐点になります。
見守りセンサーは検知の仕組みによって大きく6方式に分かれます。どの方式にも一長一短があり、「どの方式が一番良いか」ではなく「自施設の課題にどれが合うか」で選ぶのが基本です。
| 方式 | 仕組み | 長所 | 短所・注意点 | 向く施設・場面 |
|---|---|---|---|---|
| 床置きマット型 | ベッドサイドの床に敷いたマットを踏むと荷重で検知し、ナースコール等に通知 | 安価・設置が簡単・工事不要。既存ナースコールに接続できる製品が多い | 検知は離床「後」になりやすい。踏み外し・マットまたぎは検知できない。コード式はつまずきに注意(コードレス製品あり) | 特定の入居者からスモールスタートしたい施設 |
| ベッドセンサー型(マットレス下シート・マット) | マットレスの下に敷いたシート状センサーが体動を捉え、呼吸・心拍の目安や睡眠・覚醒、起き上がり・離床の動きを推定 | 身体に何も装着せず使える。睡眠リズムのデータが蓄積され、訪室タイミングの検討材料になる | 検知範囲はベッド上のみ。居室内の転倒などは分からない。Wi-Fi等の通信環境が前提の製品が多い | 夜間の定時巡視のあり方を見直したい施設、睡眠データを日中ケアの検討に使いたい施設 |
| ベッド脚荷重型 | ベッドの脚の下に荷重センサーを設置し、荷重・重心の変化から「動き出し」「起き上がり」「端座位」等の姿勢を判定 | 既存ベッドに後付けできる。離床に至る前の予備動作の段階で通知設定できる製品がある。臥床のまま体重測定できる製品も | 検知範囲はベッド上のみ。ベッドの型式・脚形状との適合確認が必要 | ベッドからの立ち上がり対応の駆けつけ判断を早めたい施設 |
| カメラ・画像型(天井・壁設置) | 天井等に設置したカメラ・3Dセンサー・赤外線センサーで居室全体の動きを捉え、起き上がり・離床・転倒などの行動を検知して映像やシルエットとともに通知 | ベッド外も含む居室全体をカバー。駆けつけ前に映像で状況確認でき、訪室の優先順位を付けやすい。記録映像を事故後の状況確認や運営改善に使える製品もある | プライバシーへの配慮(シルエット表示・ぼかし・撮影範囲設定等)と本人・家族への説明が不可欠。通信帯域・設置工事の検討が必要 | 夜間の少人数体制で駆けつけ判断の精度を上げたい施設 |
| 非接触レーダー型(ミリ波等) | ミリ波レーダー等の電波で人の位置・動き・姿勢を検知。カメラ映像を使わずに居室全体を見守る | 映像を撮らないためプライバシー面の心理的抵抗が小さい。暗所でも検知でき、トイレ等カメラを置きにくい場所にも設置しやすい | 映像による状況確認はできない。比較的新しい方式のため、検知内容・実績はデモでの確認が重要 | カメラ設置に抵抗が大きい施設、居室外(トイレ・浴室前等)も見守りたい施設 |
| 複合プラットフォーム型(スマホ連携) | ベッドセンサー・人感センサー・温湿度センサー等を組み合わせ、クラウド経由でPC・スマホに一覧表示。ナースコールや介護記録ソフト、インカムと連携する製品が多い | 居室内の在不在や環境まで含め多面的に把握できる。記録連携で転記作業の削減が期待できる。パッケージ型補助と相性が良い | 初期設計(何をどこまで連携するか)の検討負荷が大きい。月額利用料が発生するSaaS型が多く、ランニングコストの確認が必要 | 施設全体のDX・記録業務の効率化まで一体で進めたい施設 |
実際の現場では、入居者の状態や居室タイプに応じて複数方式を使い分けるのが一般的です。全居室に同一機器を一斉導入する前提ではなく、「ベッド上の見守りはベッドセンサー型、行動範囲が広い方の居室はカメラ型またはレーダー型」のような組み合わせも検討しましょう。方式選びに迷ったら、次章の製品一覧で具体的なイメージを掴んだうえで、後半の選定チェックリストに戻ってくると判断しやすくなります。
主要な見守りセンサー製品10選(実在製品・客観整理)
この章の要点:方式ごとの代表製品を公式情報ベースで整理します。優劣ランキングではなく「方式と特徴の対応」を確認するための一覧で、価格は構成・台数で大きく変わるため各社見積もりが前提です。
ここでは公式サイト等で内容を確認できた代表的な製品を方式別に整理します。優劣のランキングではなく、方式と特徴の対応を確認するための一覧です。価格は構成・台数・契約形態により大きく変わるため記載していません。必ず各社に見積もりを依頼してください。製品名にリンクのあるものは各社公式ページ(別タブで開きます)で最新仕様を確認できます。
| 製品名 | 提供企業 | 方式 | 主な特徴(公式情報より) |
|---|---|---|---|
| 眠りSCAN | パラマウントベッド | ベッドセンサー型 | マットレス下に敷くシート状の体動センサー。体動から呼吸数・心拍数の目安、睡眠・覚醒、起き上がり・離床をリアルタイムに把握。カメラ連動オプション『眠りSCAN eye』では通知時に居室の様子を映像で確認できる |
| aams(アアムス) | バイオシルバー | ベッドセンサー型 | マットレス下設置のセンサーマットで心拍・呼吸・体動・離着床・睡眠状態(3段階)を表示。アラート履歴等を30日分蓄積。各社ナースコール・介護記録ソフトとの連携に対応 |
| 見守りライフ | トーテックアメニティ | ベッド脚荷重型 | 既存ベッドの脚下に荷重センサーを設置し、荷重・重心変化から動き出し・起き上がり・端座位等を判定。通知タイミングを入居者ごとに設定可能。臥床したままの体重測定機能あり |
| コールマット・コードレス | テクノスジャパン | 床置きマット型 | ベッドサイドに敷き、踏むとナースコールで通知する定番の離床センサー。コードレスで通り道のコードを排除。ナースコール端子への接続で設置工事不要 |
| Neos+Care(ネオスケア) | ノーリツプレシジョン | カメラ・画像型(3Dセンサー) | 距離センサーと独自アルゴリズムで起き上がり等の動作を検知する予測型見守りシステム。状態をシルエット画像で表示しプライバシーに配慮。介護施設向けに加え医療機関向けの展開もある |
| HitomeQ ケアサポート | コニカミノルタ | カメラ・画像型(天井設置) | 天井の行動分析センサーが起き上がり・離床・転倒等の行動を認識し、職員のスマートフォンに映像付きで通知。映像オフ・ぼかし設定などプライバシー配慮機能あり。2026年発表の新型では2眼3Dカメラ・ミリ波センサー・AIによる行動検知を採用 |
| A.I.Viewlife | エイアイビューライフ | カメラ・画像型(広角赤外線) | 広角IR(赤外線)センサーと生体センサーの連動で居室全域を見える化。プライバシーに配慮した画像で危険につながり得る動作を昼夜問わず検知・通知・記録 |
| ヴェスタ | メティスコム | 非接触レーダー型(ミリ波) | ミリ波(4Dレーダー)センサーで居室内の活動状況や転倒・臥床等の状態を検知。カメラを使わない構成でプライバシーに配慮しつつ遠隔での見守りを支援 |
| ライフリズムナビ+Dr. | エコナビスタ | 複合プラットフォーム型 | マットレス下の非接触睡眠センサーに加え、温湿度センサー・人感センサー等を組み合わせるSaaS型見守りシステム。睡眠・活動量・室内環境をクラウドで一覧化し、アラート通知やレポート作成に対応。介護記録ソフトやインカムとの連携実績も公表されている |
| まもる〜の(SHIP) | ZIPCARE | 複合プラットフォーム型 | 施設向け『まもる〜のSHIP』はベッド上のセンサーで脈拍・呼吸の目安・入離床・睡眠を、環境センサーで室温・湿度・照度を取得し、クラウド上でPC・スマホから一元的に確認できる見守りプラットフォーム |
注意:各製品の検知項目のうち呼吸数・心拍数等は、体動から推定する「目安」として提供されるものであり、医療機器としての測定を意味するものではありません。仕様・対応連携先は変更されることがあるため、最終確認は必ず各社公式サイト・営業窓口で行ってください。掲載製品が補助金の対象機器として選定・掲載されているかは、次に述べるTAIS(福祉用具情報システム)で確認できます。

補助金の対象になる条件|介護テクノロジー導入支援事業との関係
この章の要点:見守りセンサーの主な財源は都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援事業です。対象になるには「重点分野④該当」「TAIS掲載」「取組計画・効果報告」の3条件がカギで、上限額や補助率は都道府県で大きく異なります。
見守りセンサーの導入で最も活用されているのが、地域医療介護総合確保基金を財源に都道府県が実施する「介護テクノロジー導入支援事業」(旧・介護ロボット導入支援事業/ICT導入支援事業の統合再編)です。厚生労働省の事業資料に基づく国の基本スキームは次のとおりです。
| 区分 | 補助対象の例 | 補助上限(国スキーム) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 介護ロボット(見守り機器を含む) | 重点分野に該当する見守りセンサー等(移乗支援・入浴支援以外) | 1台あたり上限30万円(移乗支援・入浴支援は上限100万円)・必要台数 | 一定の要件を満たす場合3/4、それ以外1/2 |
| ICT | 介護ソフト・タブレット・スマートフォン・インカム・Wi-Fi機器の購入設置 等 | 事業所の職員数に応じ100万〜260万円 | 同上 |
| 生産性向上に係る環境づくり | 見守りセンサー導入に伴う通信環境整備(Wi-Fi工事)、見守り情報を介護記録にシステム連動させるネットワーク構築 等 | 上限1,000万円 | 3/4 |
見守りセンサーが補助対象となるためのポイントは3つです。
- 重点分野④「見守り・コミュニケーション」への該当:厚労省・経産省が定める「介護テクノロジー利用の重点分野」(2024年改訂で9分野16項目に拡大)のうち、見守りセンサーは第4分野「見守り・コミュニケーション」の「見守り(施設)」項目に該当することが前提です。
- TAIS(福祉用具情報システム)への掲載:多くの都道府県で、テクノエイド協会のTAISに「介護テクノロジー」として選定・掲載された機器であることが原則要件とされています。例えば愛知県の令和7年度要綱では、単にTAISコードが付与されているだけでは不十分で、介護テクノロジーとしての掲載が必要と明示されています(愛知県の介護補助金も参照)。検討中の製品が掲載済みかは、メーカーと都道府県窓口の双方に必ず確認してください。
- 生産性向上の取組計画と効果報告:導入計画(業務改善計画)を提出し、導入後一定期間の効果を報告することが必須要件とされています。関連事業では補助を受けた翌年度から3年間の効果報告を求める例もあります。申請の全体的な流れと必要書類は補助金申請の流れ・必要書類で解説しています。
都道府県で条件が大きく異なる点に注意:補助率を4/5に引き上げている県(例:愛知県)、見守り機器の台数上限(例:愛知県は従来型施設20台まで、ユニット型は2ユニットの定員まで)、パッケージ型導入(見守り機器+インカム+介護記録ソフト等の一体導入)の上限額設定など、実施要綱は都道府県ごとに異なります。また通信環境整備を「機器導入に付帯する経費のみ」に限定する運用もあります。都市部でも東京都の介護補助金・大阪府の介護補助金・神奈川県の介護補助金で公募時期や上乗せ内容が異なるため、必ず自施設の所在県の当該年度要綱を確認してください。制度全体の仕組みは介護テクノロジー補助金の完全ガイドで詳しく解説しています。
カメラ型のプライバシー配慮と個人情報保護のポイント
この章の要点:カメラ型・画像型の見守りは「撮る側の機能」と「施設側の運用ルール」を必ずセットで整えます。技術(シルエット・ぼかし・撮影範囲設定)だけに頼らず、利用目的の明示・同意取得・保存期間と閲覧権限の内規化まで踏み込むことが、家族の納得と職員の安心の両立につながります。
見守り機器の導入で最も相談が多いのがプライバシーです。特に居室内を映像で捉えるカメラ型・画像型では、入居者の私的空間を継続的に撮影することになるため、機器の配慮機能と施設の運用ルールの両輪で対応する必要があります。整理すべき観点は次の5つです。
- 撮影方式の選択:常時の実映像ではなく、シルエット化・ぼかし・イベント時のみ録画といった方式を選べるかを確認します。カメラ映像そのものを避けたい居室は、ミリ波レーダー型やベッドセンサー型への切り替えも選択肢です。
- 撮影範囲の限定:ベッド周辺のみに範囲を絞る、トイレ・着替えスペースをマスクするなど、目的に照らして必要最小限の範囲に限定できるかを確認します。
- 保存期間・閲覧権限の内規化:録画データを「誰が」「いつまで」「どの目的で」閲覧できるかを内規で定めます。個人情報保護法の考え方に沿い、利用目的の範囲内での取り扱い・アクセス権限の限定・保存期間経過後の削除を明文化します。
- 本人・家族への説明と同意:導入目的(見守り業務の支援であり監視が目的ではないこと)、撮影方式、データの扱いを書面で説明し、同意を得るフローを整えます。契約時の重要事項説明に組み込む施設もあります。
- 職員教育と運用の透明性:映像を業務外で閲覧しない、外部に持ち出さないといった職員ルールを研修で徹底します。運用状況を委員会で定期的に振り返ると、家族への説明責任も果たしやすくなります。
プライバシーは「機器を入れれば解決」するものではなく、施設としての方針・内規・説明フローが揃って初めて成立します。機器選定と並行して、個人情報の取り扱いルールを整備しておきましょう。
夜勤職員配置基準の緩和|見守り機器で人員要件はどう変わるか
この章の要点:2021年度以降の介護報酬改定で、見守り機器やインカム等の活用を前提に夜勤職員配置加算の人員要件を緩和する仕組みが設けられています。ただし機器の導入割合・試行期間・委員会設置・負担軽減の確認など要件は細かく、緩和ありきではなく「業務再設計の結果として適用を検討する」のが実務上の順序です。
「見守りセンサーを入れれば夜勤の人を減らせるのか」は、導入検討時に必ず出る論点です。制度上は、テクノロジー活用を前提に人員要件を緩和する区分が段階的に整備されてきました。代表的な考え方は次のとおりです。
- 見守り機器+ICTの活用による緩和:見守り機器を入所者全員に導入し、インカム等のICTで職員間の連携を効率化するなどの要件を満たす場合、夜勤職員配置加算の人員換算を緩和する区分(例:0.9人分→0.6人分)が設けられています。
- 導入割合・試行の要件:機器の導入割合(一定割合以上の居室・入所者への導入)や、緩和適用前の試行期間・データ確認が求められる場合があります。いきなり基準緩和を前提にはできない設計です。
- 安全確保のための委員会設置:テクノロジー活用にあたり、職員の負担・ケアの質・利用者の安全を検証する委員会の設置と定期的な検討が要件として位置づけられています。
実務上の注意:対象となるサービス種別・具体的な算定要件・換算の考え方は、介護報酬の告示・通知やQ&Aで細かく定められ、改定のたびに見直されます。人員削減を先に立てるのではなく、まず巡視・訪室業務の負担軽減と業務再設計を目的に導入し、基準緩和の適用可否は最新の告示・通知と指定権者(都道府県・市町村)への確認を経て検討してください。本記事は制度の枠組みを紹介するもので、個別施設への適用可否を保証するものではありません。
見守りセンサーのWi-Fi・通信環境要件と補助金での整備
この章の要点:多くの見守りセンサーはWi-Fi等のネットワークが前提で、通信環境が弱いと通知の遅延・欠落という「入れたのに使えない」状態を招きます。介護テクノロジー導入支援事業では見守りセンサー導入に伴う通信環境整備が補助対象に含まれるため、機器とネットワークは一体で計画するのが定石です。
見守りセンサーの効果は、通知が確実に届いてこそ発揮されます。ところが介護施設は鉄筋コンクリート造が多く、電波が減衰しやすいため、通信環境の設計を後回しにすると通知の遅延・取りこぼしが起きやすいのが実情です。検討時に押さえるべき通信要件は次のとおりです。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 電波の到達範囲 | 全居室・スタッフ動線でWi-Fiが安定して届くか。鉄筋造・厚い壁・エレベーター付近の減衰を実測で確認。アクセスポイントの増設が要るかを事前に把握する |
| 帯域(特にカメラ型) | 映像を扱うカメラ型は必要帯域が大きい。同時接続台数が増えても遅延しないか、業務系ネットワークと分離すべきかを確認 |
| 有線/無線の選択 | 安定性を優先する箇所は有線接続、可搬性が要る箇所は無線と使い分ける。センサー→ゲートウェイ間の通信方式(Wi-Fi/独自無線)も確認 |
| セキュリティ | 入居者情報を扱うため、ネットワーク分離・暗号化・アクセス権限管理を設計。介護記録ソフト連携時は記録側のセキュリティ要件とも整合させる |
| 補助金の活用 | 見守りセンサー導入に伴うWi-Fi工事・ネットワーク構築は「生産性向上に係る環境づくり」枠等で補助対象になり得る。ただし機器導入に付帯する経費のみを対象とする県もあるため要綱を確認 |
通信環境は「機器を選んでから考える」のではなく、機器選定と同時に設計・見積もりし、補助金の対象範囲もセットで確認するのが失敗しないコツです。Wi-Fi整備の補助可否や上限は介護テクノロジー補助金の完全ガイド、記録連携まで見据えた設計は介護記録ソフトの比較も参考にしてください。
よくある不採択理由・併用可否・複数事業所での申請
この章の要点:見守りセンサー補助でつまずく典型は「交付決定前の発注」「対象外機器の選定」「計画・報告書類の不備」の3つです。他制度との併用可否や複数事業所での申請可否は都道府県で扱いが分かれるため、窓口確認が前提になります。
よくある不採択・対象外になる理由
- 交付決定前に発注・契約してしまった:最も多いつまずき。原則として交付決定通知の後に発注する必要があり、先行発注分は対象外になりやすい
- TAISに介護テクノロジーとして掲載されていない機器を選んだ:TAISコードが付いていても、介護テクノロジーとしての掲載が要件の県では対象外になり得る
- 取組計画・効果報告の書類不備:業務改善計画の具体性不足、効果測定の指標が曖昧、期日までに報告できない等
- 予算枠の上限到達:先着・予算到達で締め切る県では、要件を満たしても時期を逃すと受けられない
他の補助金との併用可否
同一の経費に対して複数の補助金を重複して受けること(同一経費の二重取り)は原則できません。一方で、対象経費が異なれば、見守り機器は導入支援事業、別の設備は別制度、というように制度を使い分けられる場合があります。市区町村独自の上乗せ補助を併用できる地域もあります。併用の可否は制度ごと・自治体ごとに扱いが異なるため、申請前に必ず所在県・市区町村の窓口に確認してください。地域別の制度は東京都の介護補助金や大阪府の介護補助金などの都道府県ページで確認できます。
複数事業所・複数拠点を運営する法人の申請
複数の事業所・施設を運営する法人では、事業所単位で申請するのが基本ですが、上限額の算定方法(事業所ごとか法人ごとか)や、同一法人での申請件数の扱いは都道府県で異なります。拠点が複数県にまたがる場合は、それぞれの県の要綱に沿って別々に申請することになります。段取りの全体像は補助金申請の流れ・必要書類、制度横断の理解は介護テクノロジー導入支援事業の全体像で確認しておくと、法人全体の導入計画を立てやすくなります。
見守りセンサー選定チェックリスト
この章の要点:方式と候補製品を絞ったら、契約前に通信・連携・運用・コスト・補助金スケジュールを一気に点検します。「使われないセンサー化」を防ぐ鍵は、機器スペックよりも運用設計にあります。
方式と候補製品を絞ったら、契約前に次の項目を確認しましょう。導入後の「使われないセンサー化」を防ぐ鍵は、機器スペックよりも運用設計です。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 通信環境 | 全居室にWi-Fiが届くか(鉄筋造は電波減衰に注意)。Wi-Fi工事が必要な場合は補助金の「通信環境整備」枠を併用できるか。カメラ型は帯域が足りるか |
| 既存ナースコール連携 | 現在のナースコール設備(メーカー・型式)と接続可能か。通知がナースコールとセンサーアプリの二重管理にならないか |
| 介護記録ソフト連携 | 使用中の記録ソフトにデータ連携できるか(転記作業が残ると効果が半減)。連携ソフトの選定・見直しは介護記録ソフトの比較も参照 |
| 夜勤動線・通知設計 | 通知の受け先(スマホ・インカム・PC)が夜勤者の動線に合っているか。通知が多すぎて疲弊しない感度設定・入居者ごとの通知条件設定ができるか |
| プライバシー配慮 | カメラ型はシルエット・ぼかし・撮影オフ設定の有無、録画データの保存期間・閲覧権限。入居者本人・家族への説明と同意取得のフローを用意できるか |
| 設置形態・工事 | 天井工事の要否、既存ベッドとの適合(荷重型)、居室レイアウト変更の要否、退去・入替時の付け替えやすさ |
| 試用・デモ | 本契約前に実環境でのデモ・貸出ができるか。夜勤帯の実運用で誤通知の頻度・通知の遅れを確認したか |
| 教育・定着支援 | 職員向け研修・マニュアル・導入後のフォロー体制。委員会等での運用ルール整備を支援してくれるか |
| コスト構造 | 本体価格に加え、月額利用料(SaaS)・保守費・通信費・更新費まで含めた5年総額で比較したか。補助対象経費と対象外経費の切り分けを確認したか |
| 補助金スケジュール適合 | 所在県の公募時期・交付決定時期と導入計画が整合しているか。交付決定前の発注・契約になっていないか |
導入の流れと注意点
この章の要点:課題の言語化から効果報告まで、補助金活用を前提にすると導入は半年〜1年がかりのプロジェクトになります。交付決定前に発注しないこと、Wi-Fi工期まで年度内に収めることを起点に逆算しましょう。
- 課題の言語化(〜1か月):夜勤帯のタイムスタディ等で「どの見守り業務に何分かかっているか」を把握し、減らしたい業務を特定する。都道府県の介護生産性向上総合相談センターの活用も補助要件に位置づけられている。
- 情報収集・デモ(1〜2か月):方式を2〜3に絞り、複数メーカーのデモ・貸出で夜勤帯の実運用を試す。TAIS掲載状況とナースコール・記録ソフト連携可否をこの段階で確認。
- 都道府県の公募確認・計画書作成:当該年度の実施要綱・公募期間を確認し、業務改善計画(生産性向上の取組計画)と見積書を揃えて申請する。予算枠に達し次第締め切る県もあるため早めに動く(書類の詳細は補助金申請の流れ・必要書類)。
- 交付決定→発注・設置:原則として交付決定通知の後に発注・契約する(先行発注は補助対象外となるのが一般的)。Wi-Fi工事を伴う場合は工期も含めて年度内完了を逆算する。
- 運用開始・定着(導入後1〜3か月):通知条件のチューニング、職員研修、運用ルール(通知対応の優先順位・記録方法)の整備。委員会での振り返りを定例化する。
- 実績報告・効果報告:導入効果(業務時間の変化等)を測定し、都道府県に報告する。翌年度以降も継続報告を求められる場合がある。
よくあるつまずき:①Wi-Fi未整備のまま機器だけ導入して通知が不安定になる(通信環境整備枠の併用を検討)、②通知の感度が高すぎて夜勤者が通知疲れを起こす(入居者ごとの条件設定と試用期間が重要)、③記録ソフト未連携で二重入力が発生する、④交付決定前に発注してしまい補助対象外になる——の4点は事前設計で回避できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 見守りセンサーの補助金はいくら受けられますか?
国の基本スキームでは、見守り機器は1台あたり上限30万円(必要台数分)、補助率は一定要件を満たす場合3/4(それ以外1/2)です。都道府県によっては補助率4/5への引き上げや、パッケージ型導入(見守り機器+インカム+介護ソフト等)でのより大きな上限額の設定があります。加えて、Wi-Fi整備等の通信環境整備が別枠で補助される場合があります。金額・条件は年度と都道府県で異なるため、必ず所在県の当該年度要綱を確認してください(介護テクノロジー補助金の完全ガイドでも詳しく解説)。
Q2. どの製品でも補助対象になりますか?
なりません。重点分野④「見守り・コミュニケーション」に該当し、テクノエイド協会のTAISに「介護テクノロジー」として掲載されている機器であることが原則です(単なるTAISコード付与では不十分とする県もあります)。候補製品が対象かどうかは、メーカーの営業窓口と都道府県の補助金窓口の両方に確認するのが確実です。
Q3. 施設にWi-Fiがなくても導入できますか?
多くの見守りセンサーはWi-Fi等のネットワークを前提とするため、未整備の場合は通信環境の工事が必要です。介護テクノロジー導入支援事業では「見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備」(Wi-Fi環境の整備、見守り情報を介護記録に連動させるネットワーク構築等)が補助対象に含まれています。ただし、機器導入に付帯する経費のみを対象とする県もあるため、Wi-Fi単独整備が可能かは要綱の確認が必要です(詳細は本記事「Wi-Fi・通信環境要件」章を参照)。
Q4. カメラ型はプライバシー面が心配です。導入時に何をすべきですか?
シルエット表示・ぼかし・映像オフ設定など配慮機能の有無を確認したうえで、①撮影範囲と録画データの保存期間・閲覧権限を内規で定める、②入居者本人・家族へ目的と運用を説明し同意を得る、③居室の状況に応じてカメラを使わないレーダー型やベッドセンサー型と使い分ける——の3点が基本です。機器の機能と施設側の運用ルールをセットで整備することが重要です(本記事「プライバシー配慮と個人情報保護」章で詳述)。
Q5. 見守りセンサーを導入すれば夜勤の人員を減らせますか?
2021年度介護報酬改定以降、見守り機器の入所者全員への導入やインカム等ICTの使用、安全確保の委員会設置などを要件に、夜勤職員配置加算等の人員要件を緩和する仕組みが設けられています。ただし要件は細かく、機器導入割合・試行期間・職員の負担軽減の確認などが求められます。人員削減を先に立てるのではなく、まず巡視・訪室業務の負担軽減と業務再設計を目的に導入し、基準緩和の適用は最新の告示・通知と指定権者への確認を経て検討することをおすすめします(本記事「夜勤職員配置基準の緩和」章を参照)。
最終確認日・一次情報・免責事項
最終確認日:2026年7月8日
本記事の主な一次情報:
- 厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」:https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html
- 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業」事業概要資料:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001258062.pdf
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41379.html
- 公益財団法人テクノエイド協会:https://www.techno-aids.or.jp/
- テクノエイド協会 福祉用具情報システム(TAIS):https://www.techno-tais.jp/
- 愛知県「介護テクノロジー導入支援事業費補助金」:https://www.pref.aichi.jp/soshiki/korei/kaigotekunorozi.html
- パラマウントベッド「眠りSCAN/眠りSCAN eye」:https://www.paramount.co.jp/media/service/care-dx/care-dx_product_A-04
- バイオシルバー「aams」:https://www.biosilver.co.jp/aams/
- トーテックアメニティ「見守りライフ」:https://www.totec-mlife.jp/
- テクノスジャパン「コールマット・コードレス」:https://www.technosjapan.jp/product/sensor/callmat/3799/
- ノーリツプレシジョン「Neos+Care」:https://neoscare.noritsu-precision.com/
- コニカミノルタ「HitomeQ ケアサポート」:https://www.konicaminolta.com/jp-ja/care-support/service/hitomeq-caresupport/index.html
- エイアイビューライフ「A.I.Viewlife」:https://aiview.life/
- メティスコム「ヴェスタ」:https://metiscom.co.jp/
- エコナビスタ「ライフリズムナビ+Dr.」:https://info.liferhythmnavi.com/
- ZIPCARE「まもる〜の」:https://mamoruno.zipcare.co.jp/
【免責事項】本記事は介護施設の業務効率化および補助金活用に関する情報提供を目的としたものであり、特定製品の購入を勧誘するもの、または機器による事故防止・健康管理等の効果を保証するものではありません。見守りセンサーは職員の見守り業務を支援する機器であり、その導入をもってケアの安全が確保されるものではありません。補助金の要件・金額・スケジュールは年度および都道府県により異なり、変更される場合があります。申請にあたっては必ず所在都道府県の最新の実施要綱および厚生労働省の公表資料をご確認ください。製品仕様・連携対応は変更されることがあるため、最新情報は各メーカー公式サイトにてご確認ください。
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