この記事は2026年11月6日(JST)時点の公式情報に基づきます。制度は見直されることがあるため、申請前に必ず鳥取県の公式ページと交付要綱で最新情報をご確認ください。
記録は紙、請求ソフトとは別システムで、月末になると同じ数字を何度も転記している。インカムもタブレットも入れたいが、職員が30名を超える事業所だと見積もりはすぐ300万円を超える——鳥取県内の特別養護老人ホーム・デイサービス・訪問介護事業所から、こうした相談が増えています。
「県の補助金を使えばいい」と言われても、鳥取県の公式サイトで「介護 ICT 補助金」と検索しても目的のページにたどり着けません。理由は単純で、鳥取県の事業名には「ICT」も「介護ロボット」も入っておらず、正式名称が「鳥取県介護テクノロジー定着支援事業補助金」だからです。
結論(誰が・いくら・いつまで・どこへ)
・誰が:県内の介護保険サービス事業所(訪問介護・居宅介護支援を含む)、養護老人ホーム・軽費老人ホームを運営する法人等
・いくら:令和8年度は補助率4/5。介護ソフトは職員数に応じ基準額100万〜250万円、タブレット・Wi-Fiが伴えば+15万円、インカムは1機器100万円、見守り等は1機器30万円、パッケージ型は1事業所1,000万円
・いつまで:令和8年度の事前申請(7月17日)と令和9年度の要望調査(2026年10月16日)はいずれも受付終了。実績報告は令和9年1月31日
・どこへ:鳥取県福祉保健部ささえあい福祉局 長寿社会課 介護人材確保・制度担当(0857-26-7174/0857-26-7176、問い合わせは原則メール)
この記事では、鳥取県の介護ソフト・ICT導入補助金について、(1)対象になるICTの範囲、(2)職員数別の基準額と2つの加算、(3)介護ソフトだけに課されるデータ連携要件、(4)全部満たす必要がある8つの交付要件、(5)申請の流れと締切、(6)鳥取県特有の注意点、の6点を交付要綱の原文に沿って整理します。県全体の制度像は鳥取県の介護補助金のページも併せてご覧ください。
先に1つだけお伝えすると、鳥取県は県ページと交付要綱で表記が食い違っている箇所が2つあります。どちらも金額や報告義務に関わる部分なので、後半の「鳥取県特有の注意点」で両方を併記します。

1. 鳥取県の介護ソフト・ICT補助金は「介護テクノロジー定着支援事業」1本に統合
鳥取県にはICT専用の補助事業が無く、介護ソフト・インカム・タブレット・Wi-Fiは介護ロボットと同じ1本の補助金の中で扱われます。
令和8年度の正式名称は「鳥取県介護テクノロジー定着支援事業補助金」です。交付要綱(令和8年6月12日施行)第2条は、この補助金の目的を「介護サービス事業者等が介護ロボットやICT機器等の介護テクノロジーの導入や定着に向けた補助を通じて、介護現場の生産性向上による職場環境の改善を図ること」と定めています。つまり、記録ソフトの導入も移乗リフトの導入も、入口は同じ1つの要綱です。
他県のように「ICT導入支援事業」という独立メニューが存在しないため、介護ソフトだけを入れたい事業所も、この介護テクノロジー定着支援事業の要件をすべて満たす必要があります。ロボットは入れないのに委員会やセミナー受講の要件が出てくるのは、このためです。
なお、国は介護分野のデジタル化を厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」として進めており、都道府県の補助事業はその枠組みの中で設計されています。都道府県事業の共通構造は介護テクノロジー導入支援事業の全体像で解説しています。「地域医療介護総合確保基金」(消費税財源をもとに都道府県が介護・医療の基盤整備に使う基金)が財源に充てられる県もありますが、鳥取県の公式資料では本事業の財源名を確認できませんでした。
| 事業名 | 鳥取県介護テクノロジー定着支援事業補助金(令和8年度) |
|---|---|
| 実施主体 | 鳥取県(福祉保健部ささえあい福祉局 長寿社会課) |
| 補助対象事業者 | 対象事業所を運営する法人等 |
| 対象事業所 | 介護保険法に基づくサービスを提供する県内のサービス事業所(訪問介護事業所や、居宅介護支援事業所を含む)/老人福祉法に基づく県内の養護老人ホーム及び軽費老人ホーム |
| 対象(ICT関係) | 介護ソフト、インカム、見守り・コミュニケーション機器、バックオフィスソフト(電子サインシステム、給与、勤怠管理等)、介護ソフトと一体的に使うタブレット端末・Wi-Fi環境整備 |
| 補助率 | 4/5(千円未満切り捨て/交付要綱第3条第2項) |
| 基準額 | 介護ソフト:職員数別100万〜250万円(+タブレット等15万円/居宅系のケアプランデータ連携5万円の加算あり)、インカム:1機器100万円、その他の機器:1機器30万円、パッケージ型:1事業所1,000万円 |
| 令和8年度の申請期間 | 事前申請:令和8年7月17日(金)で受付終了/実績報告:令和9年1月31日(日) |
| 窓口 | 鳥取県 長寿社会課 介護人材確保・制度担当(〒680-8570 鳥取市東町1丁目220)TEL 0857-26-7174・0857-26-7176/FAX 0857-26-8168/choujyushakai@pref.tottori.lg.jp(問い合わせは原則メール) |
| 公式URL | 鳥取県 介護テクノロジー定着支援事業/交付要綱(PDF) |
2. 対象になるICTの範囲——介護ソフト・インカム・タブレット・Wi-Fiの線引き
対象経費は「TAIS掲載の介護テクノロジー等」と「それ以外で県が有効と判断した機器等」の2本立てで、タブレットやWi-Fiは単独ではなく主たる機器とセットで扱われます。
交付要綱の別表1は、補助対象経費を次のように分けています。
- ア:「福祉用具情報システム」((公財)テクノエイド協会が提供。以下「TAIS」という。)に掲載された介護テクノロジー等。TAISにおいて「介護テクノロジー」として選定された機器等及びこれと機能等が同水準と県が判断した機器等の導入に要する経費。当該年度に当該機器を導入する場合には、一体的に使用するためのタブレット端末の購入費用やWi-Fi環境整備に必要な経費等を含みます。
- イ:アによらず、介護従事者の身体的負担の軽減や、間接業務時間の削減など業務の効率化など、介護従事者が継続して就労するための職場環境整備として有効であり、介護サービスの質の向上につながると県が判断した機器等。要綱は例として「バックオフィスソフト(電子サインシステム、給与、勤怠管理等)」を挙げています。
TAISは福祉用具の企業情報・製品情報を集約した公開データベースで、公益財団法人テクノエイド協会のTAISで機器を検索できます。見守りセンサーやインカムを選ぶ際は、まず候補機器がTAISに掲載されているかを確認すると手戻りが減ります。機器選定の考え方は見守りセンサーの比較・選び方と介護記録ソフトの比較も参考にしてください。
タブレット・Wi-Fiは「主となる機器」と一緒でなければ対象外
要綱の注記は付帯経費の扱いを明確に定めています。別表1(1)第4欄アのテクノロジーの機器等(介護ソフトを除く。)の導入に付帯して必要となる経費は、主となる機器と併せて導入する場合に限って補助の対象となり、基準額は主となる機器と付帯経費を合計したうえで1台あたりの基準額×導入台数で計算します。つまり、見守り機器を入れずにWi-Fi工事だけを申請する、タブレットだけを買う、という組み立ては要綱の文面上成り立ちません。
付帯経費の例として要綱が挙げているのは次のとおりです。
- 介護ソフト以外の介護テクノロジーを利用するためのWi-Fi環境を整備するために必要な経費(配線工事(Wi-Fi環境整備のために必要な有線LANの設備工事も含む)、モデム・ルーター、アクセスポイント、システム管理サーバー、ネットワーク構築等)
- 介護ソフト以外の介護テクノロジーの導入に伴って導入するPC、タブレット端末 等
また要綱は「通信費は上記経費には含まない」と明記しています。回線の月額利用料は対象外と読める書きぶりです。さらに補助対象になるのは「販売価格が公表されており、一般に購入できる状態にある機器等」で、開発に要する経費は対象外とされています。オーダーメイドの作り込みは想定されていません。
介護ソフトは付帯経費ではなく「15万円加算」のルート
介護ソフトは上記の付帯経費ルールから明示的に除外され、代わりに基準額に15万円を加算する形でタブレット・Wi-Fiを見る仕組みです。計算方法が機器側と逆になっているため、稟議書の積算では分けて書く必要があります。
3. 補助率4/5と上限額——職員数別の基準額表と2つの加算
令和8年度の補助率は一律4/5で、介護ソフトとバックオフィスソフトだけが職員数に応じた階段式の基準額になります。
注意したいのは、基準額は「必ずもらえる額」ではなく上限だという点です。交付要綱第3条第2項は、補助対象経費に補助率を乗じた額を、別表1第6欄に定める額を限度とし、千円未満の端数は切り捨てると定めています。審査があり、予算の範囲内での交付です。
| 区分 | 基準額(上限) | 補助率 |
|---|---|---|
| 移乗支援(装着型・非装着型)、入浴支援、「介護業務支援」のうちインカム | 1機器につき100万円 | 4/5 |
| 「介護業務支援」のうち介護ソフト(職員数連動の契約方式) | 職員数別に100万/150万/200万/250万円 | 4/5 |
| 介護ソフト(上記以外の契約方式) | 1事業所につき250万円 | 4/5 |
| 上記以外の機器(見守り・コミュニケーション機器など) | 1機器につき30万円 | 4/5 |
| バックオフィスソフト以外の「その他」機器(第4欄イ) | 1機器につき100万円 | 4/5 |
| バックオフィスソフト(職員数連動の契約方式) | 職員数別に100万/150万/200万/250万円 | 4/5 |
| バックオフィスソフト(上記以外の契約方式) | 1事業所につき250万円 | 4/5 |
| パッケージ型導入支援(機器等の合計経費) | 1事業所につき1,000万円 | 4/5 |
職員数別の階段と、申請時点の数え方
介護ソフト・バックオフィスソフトは、職員数に応じて必要なライセンス数が変動するなど、職員数により合計金額が変動する契約方式の場合に次の表が適用されます。
| 職員数(申請時点) | 基準額 | タブレット等15万円加算後 | 参考:補助額の上限(基準額×4/5) |
|---|---|---|---|
| 1名以上10名以下 | 100万円 | 115万円 | 80万円/92万円 |
| 11名以上20名以下 | 150万円 | 165万円 | 120万円/132万円 |
| 21名以上30名以下 | 200万円 | 215万円 | 160万円/172万円 |
| 31名以上 | 250万円 | 265万円 | 200万円/212万円 |
| 職員数に連動しない契約方式 | 1事業所250万円 | 265万円 | 200万円/212万円 |
職員数の数え方は要綱の注記にあり、実務では見落とされがちです。職員数には、訪問介護員等の直接処遇職員だけでなく、ICTの活用が見込まれる管理者や生活相談員等の職員も算入して差し支えないとされています。原則は申請時点における常勤換算方法で算出した人数(小数点以下は四捨五入)ですが、居宅を訪問してサービスを提供する職員(訪問介護員、居宅介護支援専門員等)及び管理者や生活相談員等については、従事する職務の性質上、実人数(常勤・非常勤の別は問わない)としても差し支えないと定められています。常勤換算で20.4名なら20名として11〜20名の階段、実人数で数えれば21名以上の階段になる——という境目に該当する事業所は、どちらで積算するかで50万円変わります。
加算は2つ:タブレット等15万円と、居宅系のケアプランデータ連携5万円
1つ目は、介護ソフトの導入に伴い一体的に使用するためのタブレット端末の購入費用やWi-Fi環境整備に必要な経費が発生する場合、基準額に15万円を加算するというものです。パッケージ型導入支援にも同じ注記が付いています。
2つ目は、訪問介護事業所等の居宅サービス事業所又は居宅介護支援事業所(介護予防も含む)であって、交付決定年度中に「ケアプランデータ連携システム」により5事業所以上とデータ連携を実施する場合、基準額に5万円を加算するというものです。施設系には適用されません。
なお、要綱の文面上、15万円加算の注記は介護ソフト(別表1(1)第6欄ア(イ))とパッケージ型に付されており、バックオフィスソフト(同イ(イ))には同じ注記がありません。また2つの加算を同時に適用できるかも要綱からは読み取れないため、両方に該当しそうな居宅系事業所は長寿社会課に確認してから積算することをおすすめします。
限度台数が定められているのは4分野だけ
1事業所当たりの限度台数は、「移乗支援」「移動支援」「排泄支援」「入浴支援」に該当するテクノロジーについて、導入目的ごとに施設・居住系サービスは利用定員数に1/10を乗じた数、在宅系サービスは利用定員数に1/20を乗じた数(1台未満の端数は切り上げ)と定められています。裏を返すと、介護ソフト・インカム・見守り機器については要綱上の限度台数の定めがなく、基準額と限度額の範囲内で必要台数を積み上げる形になります。ただし必要性の説明は求められますので、導入計画書で台数の根拠を書けるようにしておいてください。
4. 介護ソフトだけに課される「一気通貫」とデータ連携の要件
鳥取県は、介護ソフトについて機能面の条件を要綱の注記で細かく指定しており、居宅系と施設系で求められる機能が異なります。
まず共通の条件です。要綱は介護ソフトを「介護事業所等の業務を支援するソフトウェアであって、記録業務、情報共有業務(事業所内の情報連携のみならず、居宅サービス計画やサービス利用票等を他事業所と連携する場合を含む。)、請求業務を一気通貫で行うことが可能となっているものであること(転記等の業務が発生しないものであること)」と定義しています。既に導入している介護ソフト等と組み合わせて一気通貫が実現できていれば補助対象になる、という点が実務上は重要です。全面刷新でなくても、足りないモジュールの追加で一気通貫になるなら申請の土俵に乗ります。
加えて、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の趣旨を踏まえ、システム更新の際の移行を迅速に行えるよう、介護記録等のデータについてはCSVファイル、JSONファイル等、変換が容易なデータ形式で出力・入力できる機能を備えていることが望ましい、とされています。これは「望ましい」であって必須要件ではありません。
居宅介護支援・居宅サービス事業所に求められる①の条件
居宅介護支援事業所、介護予防支援事業所、居宅サービス事業所、介護予防サービス事業所が介護ソフトを申請する場合、上記に加えて次の①が要件になります。
公益社団法人国民健康保険中央会(以下「中央会」)が実施するベンダー試験結果及び厚生労働省が情報提供する「介護ソフトの機能調査」の結果において、(1)「ケアプランデータ連携標準仕様」に準じたCSVファイルの出力・取込機能を有していること、(2)中央会が運営する「ケアプランデータ連携システム」の活用促進のためのサポート体制が整っていることが確認できるものであること。
ケアプランデータ連携システムは、国民健康保険中央会のケアプランデータ連携システム公式サイトによれば、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所とのケアプランのやりとりをオンラインで完結できる仕組みです。同サイトは費用について「一月あたり1,750円の投資で年間約80万円の削減が見込めます」と案内しており、あわせて「フリーパスキャンペーン」を「介護保険資格確認等WEBサービス(介護WEBサービス)」への統合(2027年1月予定)まで延長し、期間中は無料で利用できる旨も掲載されています。ライセンス料の年額や統合後の利用料の取扱いは、国民健康保険中央会の公式サイト・最新の案内でご確認ください。
施設サービス・地域密着型介護老人福祉施設に求められる②の条件
施設サービス事業所、及び地域密着型サービスにおける地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護事業所が介護ソフトを申請する場合は、②として、厚生労働省が情報提供する「介護ソフトの機能調査結果」において、科学的介護情報システム(LIFE)について「CSV連携仕様書(LIFE)」に準じたCSVファイルの出力機能を有していることが確認できるものであることが求められます。なお要綱でいう施設サービスとは、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス及び介護医療院サービスを指します。
この①②は「どのソフトを選ぶか」を直接左右する条件です。見積もり段階でベンダーに対し、ケアプランデータ連携標準仕様のCSV入出力(居宅系)、LIFEのCSV出力(施設系)に対応しているかを、機能調査結果の掲載有無とあわせて確認してください。補助金全般の必要書類と進め方は補助金申請の流れ・必要書類にまとめています。
5. 全部満たす必要がある8つの交付要件
鳥取県の要件は別表1第8欄にア〜クの8項目が並び、要綱は「全て満たすこと」と明記しています。
| 要件 | 内容(要綱別表1第8欄) | ICT単独導入でも必要か |
|---|---|---|
| ア 委員会の設置 | 別表2のサービスについては、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会(名称は問わない)を設置すること | 別表2に該当する施設・居住系サービスなら必要 |
| イ ケアプランデータ連携 | 別表3のサービスについては、交付決定年度内に「ケアプランデータ連携システム」(「介護保険資格確認等WEBサービス」に統合された場合は当該サービス)の利用を開始すること | 別表3に該当する居宅系サービスなら必要 |
| ウ 賃金への還元 | 導入・活用により業務の改善・効率化等が進められ、収支の改善が図られた場合には、職員の賃金へも適切に還元し、その旨を職員等に周知すること(第9欄の効果の報告により確認) | 必要 |
| エ SECURITY ACTION | IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」又は「★★二つ星」のいずれかを宣言すること。加えて、個人情報保護の観点から十分なセキュリティ対策を講じること | 必要 |
| オ 業務改善計画 | 厚生労働省が発行する資料を参考に業務改善に取り組み、第9欄に基づき業務改善計画を作成すること | 必要 |
| カ LIFEへの協力 | 補助を受けた介護事業所等は、科学的介護情報システム(LIFE)による情報収集に協力すること | 必要 |
| キ 効果検証への協力 | 厚生労働省等が実施する効果検証事業等に可能な限り協力すること(厚生労働省等から補助事業所に対して直接協力依頼の打診をする場合がある) | 必要 |
| ク 研修の受講 | 県が設置する介護生産性向上総合相談センターが実施する研修を受講すること。やむを得ず受講できない場合は、厚生労働省委託事業による「生産性向上ビギナーセミナー」「生産性向上フォローアップセミナー」又は「デジタル中核人材養成研修」を受講し、別途指示する方法により受講報告書を提出すること | 必要 |
介護ソフトだけを導入する施設系の事業所でも、委員会の設置・SECURITY ACTIONの宣言・業務改善計画の作成・研修の受講はすべて必要です。ロボットを入れないから関係ない、という切り分けはできません。
SECURITY ACTIONは事業所単位が原則
要綱は、事業所単位で単一の法人番号を有していない場合には、法人単位として、または事業所の代表者を「個人事業主」として申し込むこと、と補足しています。加えて、セキュリティ対策については最新版の厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参考にすること、SECURITY ACTION対象外の事業所については同等の対策(一つ星又は二つ星)を講じていることを宣言することも定められています。宣言の手続きはIPAのSECURITY ACTIONから行えます。
研修と相談先——介護生産性向上総合相談センター
要件クの研修を実施するのは、鳥取県介護生産性向上総合相談センターです。公益財団法人介護労働安定センター鳥取支部内(〒680-0846 鳥取市扇町116 田中ビル2号館2階、TEL 0857-21-6571、平日9時〜17時30分)に置かれ、生産性向上や業務改善に関する相談に対面・メール・オンライン・電話等で対応しています(鳥取県介護生産性向上総合相談センター)。令和8年度は「介護現場における生産性向上の取組普及セミナー」が令和8年7月13日(月)に米子コンベンションセンターで開催され、申込期限は6月26日(金)でした。受講後は受講報告書の提出が必要です。
要綱第9欄は業務改善計画についても、「補助を受ける介護事業所等は、業務改善計画を作成するものとし、県に提出する。なお、当該計画の作成や取組の実施にあたっては、原則として、県に設置されている介護生産性向上総合相談センターに相談するものとする」と定めています。計画づくりの相談先が制度に組み込まれている形です。
6. 申請の流れと締切——令和8年度は受付終了、動くのは令和9年度の準備
鳥取県は事前申請を入口に置いており、事前申請をしていない法人は交付申請に進めません。
| 時期 | 手続き | 令和8年度の実績 |
|---|---|---|
| 前年度の秋 | 翌年度分の要望調査に回答(予算枠の積み上げ) | 令和9年度分は2026年10月16日(金)17時で受付終了 |
| 6月下旬 | 生産性向上セミナーの申込 | 令和8年6月26日(金) |
| 7月中旬 | セミナー受講(要件ク) | 令和8年7月13日(月)米子コンベンションセンター |
| 7月中旬 | 事前申請(必須) | 令和8年7月17日(金)で受付終了 |
| 事前申請後 | 交付申請(別に通知する日まで/要綱第4条) | 様式第1号・第2号を添付 |
| 交付申請から30日以内 | 交付決定(原則/要綱第5条) | 様式第3号で通知 |
| 交付決定後 | 契約・発注・納品・支払、導入と定着 | 令和9年1月31日までに発注・納品・支払の完了が必要 |
| 事業完了後 | 実績報告(完了・中止・廃止の日から30日を経過する日又は別に通知する日のいずれか早い日まで/要綱第7条) | 令和9年1月31日(日) |
| 翌年度から3年間 | 業務改善計画に対する効果の報告 | 補助を受けた翌年度から3年間 |
2026年11月6日時点では、令和8年度の事前申請も令和9年度の要望調査もすでに受付を終えています。いま介護ソフトやインカムの導入を検討している事業所が現実的に狙えるのは令和9年度(2027年度)以降の枠です。県ページの留意事項には、予算枠を超える申請があった場合は前年度の要望調査に回答した法人を優先し、交付額を調整する旨が記載されています。要望調査は交付を保証するものではありませんが、回答しておくかどうかで優先度が変わる設計です。
準備しておく書類
県ページで様式が公開されているのは、交付申請書、収支予算書、導入計画書、業務改善計画の様式、受講報告書、変更申請書、実績報告書、導入報告書、口座振込依頼書などです。見積書の取得やベンダーの機能確認には時間がかかるため、次の順序で逆算すると間に合います。
- 秋(10月中旬):翌年度の要望調査に回答。この時点で概算の機器構成と金額が必要
- 冬〜春:ベンダーに一気通貫・CSV連携仕様・LIFE出力の対応可否を確認し、相見積もりを取得
- 5〜6月:セミナーの申込、委員会の設置、SECURITY ACTIONの宣言
- 6〜7月:業務改善計画と導入計画書を作成(相談センターに相談)、事前申請
- 交付決定後〜1月:契約・発注・納品・支払、実績報告
他県の締切・様式と見比べたい場合は、近隣の兵庫県の介護補助金、広島県の介護補助金、京都府の介護補助金もあわせて確認すると、鳥取県の設計の特徴がつかめます。
7. 鳥取県特有の注意点——県内事業者発注、表記の食い違い、交付決定前の扱い
鳥取県には他県にない条文と、公式情報どうしの食い違いがあります。申請前に押さえておきたい6点を整理します。
(1) 県内事業者への発注に努める義務がある
交付要綱第3条第3項は「鳥取県産業振興条例(平成23年鳥取県条例第68号)の趣旨を踏まえ、補助事業の実施に当たっては、県内事業者への発注に努めなければならない」と定めています。これは他県の介護テクノロジー補助金にはあまり見られない鳥取県独自の規定で、県外のベンダーを選ぶこと自体を禁じるものではありませんが、見積もり段階で県内事業者も比較対象に入れておくのが安全です。
(2) 県ページの「入力支援」は交付要綱では「入浴支援」
県ページの基準額の説明では100万円区分が「移乗支援、入力支援、インカム」と記載されていますが、交付要綱別表1第6欄ア(ア)の原文は「『移乗支援(装着型・非装着型)』、『入浴支援』、『介護業務支援』のうちインカム」です。金額区分の判断は交付要綱側で行ってください。
(3) 効果報告の提出先が県ページと要綱で異なる
3年間の効果報告について、交付要綱第9欄イは「補助を受けた翌年度から3年間、当該事業所等においてアで定めた業務改善計画に対する効果を県に対し報告する」と定めています。一方、県ページの留意事項では厚生労働省への報告(別途県から依頼)と説明されています。実務上は県からの依頼文書に従うことになりますが、どちらにしても補助を受けて終わりではなく、3年間の報告義務が続く点は共通です。
(4) 交付決定前の契約・発注の可否は公式情報では確認できない
多くの都道府県の補助金では交付決定前の契約・発注は対象外とされますが、鳥取県の交付要綱と県ページには、この点を明示した記載が見当たりませんでした。県ページの留意事項にあるのは「令和9年1月31日までに『発注・納品・支払』が完了している必要があります」という期限の定めです。発注のタイミングは補助の可否そのものに関わるため、契約書に判を押す前に長寿社会課(0857-26-7174/0857-26-7176)へメールで確認してください。
(5) 政令指定都市が無く、窓口は県に一本化
鳥取県には政令指定都市がなく、介護テクノロジーの導入支援は県の長寿社会課が窓口です。鳥取市・米子市など市町村独自の介護ICT補助制度は、今回の確認では見つけられませんでした。市町村単位の上乗せ制度があるかどうかは、所在市町村の介護保険担当課にも一度確認しておくと取りこぼしがありません。
(6) 他補助金との併用・リースの扱い
国のIT導入補助金など他制度との併用可否、リース契約やクラウドのサブスクリプション利用料の扱いについては、鳥取県の交付要綱・県ページでは明確な記載を確認できませんでした。要綱が定めているのは「販売価格が公表されており、一般に購入できる状態にある機器等が補助対象」「通信費は(付帯経費に)含まない」という2点です。月額課金型のソフトを検討している場合は、契約形態をそのまま県に伝えて事前に判断を仰ぐのが確実です。制度全体の考え方は介護テクノロジー補助金の完全ガイドも参考にしてください。
8. よくある質問
鳥取県の介護ソフト・ICT導入補助金について、問い合わせの多い5点を公式情報の範囲で整理します。
Q1. 介護ソフトだけ、あるいはタブレットだけの導入でも対象になりますか
介護ソフトは単独で基準額が設定されており、職員数に応じた100万〜250万円の区分で申請できます。一方、タブレット端末やWi-Fi環境整備は、交付要綱上「主となる機器と併せて導入する場合に限って」対象となる付帯経費か、介護ソフト導入に伴う15万円の加算として扱われます。機器やソフトを伴わないタブレット単独・Wi-Fi工事単独の申請は、要綱の文面からは想定されていません。
Q2. 職員数はどう数えますか。パートも含めてよいのでしょうか
要綱の注記では、原則として申請時点における常勤換算方法で算出した人数(小数点以下四捨五入)とされています。ただし居宅を訪問してサービスを提供する職員(訪問介護員、居宅介護支援専門員等)及び管理者や生活相談員等の職員については、職務の性質上、実人数(常勤・非常勤の別は問わない)としても差し支えないとされています。また、直接処遇職員だけでなくICTの活用が見込まれる管理者や生活相談員等も算入して差し支えありません。
Q3. 令和8年度の申請にまだ間に合いますか
間に合いません。令和8年度の事前申請は令和8年7月17日(金)で受付を終了しており、令和9年度分の要望調査も2026年10月16日(金)17時で締め切られています。次の機会に備えるなら、ベンダーの機能要件の確認、委員会の設置、SECURITY ACTIONの宣言といった、締切に左右されない準備から着手するのが現実的です。最新の公募状況は鳥取県の公式ページでご確認ください。
Q4. 交付決定の前に契約・発注してもよいですか
鳥取県の交付要綱・県ページでは、交付決定前の契約・発注の可否を明記した記載を確認できませんでした。補助金は一般に交付決定前の契約・発注が対象外とされることが多いため、自己判断で発注せず、必ず事前に長寿社会課へ確認してください。なお交付決定は、原則として交付申請を受けた日から30日以内に行うものとされています(要綱第5条)。
Q5. 補助金は満額もらえますか。審査はありますか
基準額は上限であり、満額の交付が保証されるものではありません。補助額は補助対象経費に4/5を乗じた額と基準額のいずれか低い方で、千円未満は切り捨てられます。交付は予算の範囲内で行われ、県ページの留意事項には、予算枠を超える申請があった場合は前年度の要望調査に回答した法人を優先して交付額を調整する旨が記載されています。
9. まとめ——鳥取県のICT補助金で先に決めておくべき3つ
鳥取県の介護ソフト・ICT導入補助金は、1本の要綱にロボットもソフトも収まっている分、要件が広く課されるのが特徴です。
今日の時点で動かせることは次の3つに整理できます。第一に、検討中の介護ソフトが「一気通貫」かつ居宅系ならケアプランデータ連携標準仕様のCSV入出力、施設系ならLIFEのCSV出力に対応しているかをベンダーに確認すること。第二に、職員数を常勤換算と実人数の両方で数え、どちらの階段に乗るかを把握すること。第三に、委員会の設置とSECURITY ACTIONの宣言、相談センターへの相談という、締切に関係なく進められる要件から着手することです。
そのうえで、令和9年度(2027年度)の要望調査と事前申請の時期を長寿社会課に確認し、スケジュールを押さえてください。鳥取県全体の介護向け補助制度は鳥取県の介護補助金、申請実務は補助金申請の流れ、制度の全体像は令和8年度の介護テクノロジー導入支援事業にまとめています。
この記事は2026年11月6日(JST)時点で各公式サイトに掲載されていた情報をもとに作成しています。補助率・基準額・要件・締切は年度や国の制度改正により変更されることがあります。申請にあたっては必ず鳥取県の公式ページおよび交付要綱の最新版をご確認いただき、判断に迷う点は長寿社会課へお問い合わせください。
出典(公式)
- 鳥取県 長寿社会課「鳥取県介護テクノロジー定着支援事業」
- 鳥取県介護テクノロジー定着支援事業補助金交付要綱(令和8年6月12日施行・PDF)
- 厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」
- 公益財団法人テクノエイド協会 福祉用具情報システム(TAIS)
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)SECURITY ACTION
- 国民健康保険中央会 ケアプランデータ連携システム
- 鳥取県介護生産性向上総合相談センター(公益財団法人介護労働安定センター鳥取支部内)
