この記事は2026年10月4日時点で公開されている公式情報(事業承継・M&A補助金事務局/中小企業基盤整備機構/和歌山県/和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター)に基づいて作成しています。
「そろそろ、後を誰かに任せたい」。和歌山市で長く商売を続けてきた方なら、一度は頭をかすめたことがあるテーマだと思います。
ただ、いざ動こうとすると止まります。設備が古いまま渡せない、後継者に借入を背負わせたくない、M&Aの仲介手数料が数百万円と言われた。相談先も分からず、気づけば数年が過ぎている——事業承継でいちばん多いのが、この「決めないまま時間が過ぎる」パターンです。
そしてもう一つ、見落としが起きやすい事実があります。国の「事業承継・引継ぎ補助金」は、現在「事業承継・M&A補助金」という名称で公募されています。古い名称だけで情報を探すと、最新の公募回や要件にたどり着けないことがあります。
・誰が:和歌山市の中小企業・小規模事業者・個人事業主のうち、事業承継やM&A、承継に伴う廃業を予定している(または実施した)方
・いくら:枠と類型により異なり、補助率1/3〜2/3・補助上限150万円〜1,000万円(専門家活用枠 買い手支援類型(Ⅰ型)100億企業特例のみ2,000万円)
・いつまで:令和8年(2026年)10月2日(金)〜11月6日(金)17:00(16次公募。2026年10月2日に公募申請の受付が開始済み)
・どこへ:申請は電子申請「Jグランツ」のみ。和歌山での相談は和歌山市七番丁の和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(073-499-5221・相談無料)
この記事では、和歌山市の事業者の立場から、①制度の正式名称と国・県・市の役割分担、②4つの枠の補助率と上限額、③対象者と対象経費、④申請の流れと締切、⑤和歌山市内の相談窓口、⑥つまずきやすい落とし穴、を公式情報だけで整理します。数値は出典URL付きで示すので、そのまま自社の判断材料に使えます。

和歌山市で事業承継補助金を使うなら、まず押さえる基本情報
和歌山市の事業者が事業承継で使う中心は、市独自の補助金ではなく国の「事業承継・M&A補助金」です。
和歌山市の公式サイト上では、2026年10月4日時点で「和歌山市独自の事業承継補助金」を確認できませんでした。一方で和歌山県は公式ページ「事業承継サポート」で、県内事業者が使える支援として事業承継・M&A補助金、事業承継計画策定支援、法人版・個人版の事業承継税制特例認定、事業承継融資制度などを案内しています。つまり、補助金そのものは国、相談と計画づくりは県の支援センター、という役割分担で考えるのが実務的です。
| 制度名 | 事業承継・M&A補助金(旧名称:事業承継・引継ぎ補助金)/令和7年度補正予算分・16次公募 |
|---|---|
| 実施主体 | 中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構(事業承継・M&A補助金事務局が運営) |
| 対象者 | 事業承継・M&A、またはそれに伴う廃業等を行う中小企業者・小規模事業者・個人事業主(枠ごとに要件あり) |
| 補助率・上限 | 補助率1/3〜2/3/補助上限150万円〜1,000万円(専門家活用枠 買い手支援類型(Ⅰ型)100億企業特例のみ2,000万円) |
| 申請期間 | 令和8年(2026年)10月2日(金)〜11月6日(金)17:00(16次公募・2026年10月2日受付開始) |
| 申請方法 | 電子申請「Jグランツ」のみ(GビズIDプライムアカウントが必要) |
| 和歌山の相談窓口 | 和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(和歌山市七番丁26-1 モンティグレ ダイワロイネットホテル和歌山3階/073-499-5221/平日9:00〜17:30/相談無料) |
| 公式URL | 事業承継・M&A補助金(令和7年度補正予算)/和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター |
「事業承継・引継ぎ補助金」と「事業承継・M&A補助金」の関係
名称が変わっただけで、ねらいは同じ「経営資源の引継ぎを後押しする補助金」です。
事業承継・引継ぎ補助金は、親族内承継や従業員承継、第三者へのM&Aをきっかけに新しい取組みを行う中小企業者を支援する国の補助金として続いてきました。現在の公募は「事業承継・M&A補助金」という名称で、中小企業庁の中小企業生産性革命推進事業の一つとして、中小企業基盤整備機構と補助金事務局が実施しています。
中小企業基盤整備機構の「補助金活用ナビ」では、この補助金を「事業承継・M&Aによる経営資源の引継ぎを行おうとする中小企業者等を後押しする」ものと説明し、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業・再チャレンジ枠の4枠を案内しています(中小機構 補助金活用ナビ)。
「PMI」は Post Merger Integration の略で、M&A後に経営・業務・人材を統合していく取組みを指します。初めて承継を考える段階では、まず事業承継促進枠と専門家活用枠の2つを見れば十分です。
4つの枠と補助率・補助上限額【令和7年度補正予算・16次公募】
枠と類型で補助率・上限が大きく変わるため、自社がどの立場(渡す側か、受ける側か、廃業も伴うか)かを先に決めるのが近道です。
| 枠・類型 | 補助率 | 補助上限 | 主な対象経費 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 2/3以内(小規模事業者等以外は1/2以内)。補助額800万円超〜1,000万円の部分は一律1/2以内 | 下限100万円/上限800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円)。廃業費を併用申請する場合+300万円 | 設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費 等 |
| 専門家活用枠(買い手支援類型Ⅰ型) | 2/3以内(100億企業特例は1,000万円以下の部分1/2以内・1,000万円超〜2,000万円の部分1/3以内) | 下限50万円/上限600万円(DD費用を申請する場合+200万円、廃業費を併用申請する場合+300万円)。100億企業特例は上限2,000万円 | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 |
| 専門家活用枠(売り手支援類型Ⅱ型) | 1/2以内(直近決算期の営業利益・経常利益が赤字、または物価高等により営業利益率が低下している場合は2/3以内) | 下限50万円/上限600万円(DD費用を申請する場合+200万円、廃業費を併用申請する場合+300万円) | 同上 |
| 専門家活用枠(小規模売り手支援類型) | 2/3以内 | 450万円(下限なし。廃業費を併用申請する場合+150万円) | 同上 |
| PMI推進枠(PMI専門家活用類型) | 1/2以内 | 下限50万円/上限150万円(単独申請で廃業費を併用申請する場合+300万円) | 謝金、旅費、委託費 |
| PMI推進枠(事業統合投資類型) | 2/3以内(小規模事業者等以外は1/2以内)。補助額800万円超〜1,000万円の部分は一律1/2以内 | 下限100万円/上限800万円(賃上げ要件を満たす場合1,000万円)。廃業費を併用申請する場合+300万円 | 設備費、外注費、委託費 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 2/3以内(併用申請の場合は併用する枠の事業費の補助率に従う) | 下限50万円/上限300万円 | 廃業支援費(上限50万円)、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費(移転・移設費は併用申請のみ計上可) |
出典:事業承継・M&A補助金 16次公募の各公募要領(事業承継促進枠/専門家活用枠/PMI推進枠/廃業・再チャレンジ枠)および16次公募パンフレット。「DD」はデューデリジェンス(買収前の調査)の略です。
上の金額は「上限」です。要件を満たせば必ず満額が出るものではなく、審査があります。補助率が2/3以内か1/2以内かは中小企業基本法上の小規模事業者等に該当するかで分かれ、補助上限額を800万円から1,000万円へ引き上げる賃上げ要件は16次公募では「従業員1人当たりの給与支給総額の上昇率が3%以上」と定められています。これらは公募回ごとに変わるため、申請前に必ず16次公募の公募要領の原文でご確認ください。
和歌山市のどんな事業者が対象になるか・何に使えるか
対象は「これから承継する」「もう承継した」「M&Aで買う/売る」「承継に伴って一部をやめる」のいずれかに当てはまる中小企業者・小規模事業者です。
和歌山市に多い業種で言えば、次のようなケースが枠に当てはまりやすい形です(あくまで枠の考え方の整理で、採択を保証するものではありません)。
- 市内の飲食店・小売店を息子や従業員に引き継ぐ→ 事業承継促進枠。承継を機にした厨房設備の入れ替え、店舗の設備投資などが設備費として想定される経費に入ります
- 後継者がおらず、県内外の企業に譲渡したい→ 専門家活用枠の売り手支援類型(小規模なら小規模売り手支援類型)。仲介手数料やDD費用が外注費・委託費にあたります
- 和歌山市内の同業者を買って事業を広げたい→ 専門家活用枠の買い手支援類型
- 譲渡・承継に合わせて一部店舗を閉める→ 廃業・再チャレンジ枠。解体費・原状回復費・リースの解約費などが対象経費として挙げられています
一方で、単なる設備更新や、承継と関係のない販促費だけを目的にした申請は、この補助金の対象になりません。その場合は小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金など別の制度を検討する流れになります。自社の経費が対象かどうかの最終判断は、公募要領の「補助対象経費」の章と事務局への確認が必要です。
申請の流れと締切、つまずきやすい落とし穴
申請は紙ではなく電子申請のみで、締切直前に動くと間に合わないのが最大のリスクです。
大まかな流れは次の通りです。
- GビズIDプライムアカウントを取得する(Jグランツの利用に必要。発行まで日数がかかります)
- 和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談し、承継の方針・スケジュールを固める
- 16次公募の公募要領・申請手引きを読み、該当する枠と必要書類を確定する
- Jグランツで申請(16次公募の受付は2026年10月2日〜11月6日17:00)
- 審査・交付決定 → 補助事業の実施 → 実績報告 → 補助金の受領(後払い)
よくある落とし穴は4つです。
①GビズIDの取得待ちで締切に間に合わない。16次公募の公募要領は申請方法を「Jグランツを用いた電子申請を行う」と定めており、紙での申請はできません。アカウントが無い事業者は、まずここから着手してください。
②交付決定前に契約・発注してしまう。補助金は一般に交付決定後の経費が対象です。「先に設備を買ってから申請」は認められない可能性が高いので、順番を必ず公募要領で確認してください。
③後払いである点を資金計画に入れていない。補助金は実績報告後の精算払いが基本です。承継時は資金需要が重なるため、和歌山県の中小企業融資制度「事業承継支援資金」など、つなぎ資金の相談も並行させると安全です。
④旧名称の情報だけを見て要件を間違える。「事業承継・引継ぎ補助金」で検索して出てくる過去の公募回の条件は、今回の16次公募と異なる場合があります。必ず現行の事務局サイトを起点にしてください。

和歌山市内の相談窓口一覧(すべて公式窓口)
和歌山市で事業承継を相談するなら、国の委託機関である支援センターが最初の入口です。
| 窓口 | 所在地 | 電話 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター | 和歌山市七番丁26-1 モンティグレ ダイワロイネットホテル和歌山3階 | 073-499-5221(FAX 073-499-5224) | 国の委託による公的相談窓口。親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)・後継者人材バンクに対応。相談無料・秘密厳守、平日9:00〜17:30 |
| 和歌山県よろず支援拠点 | 和歌山市本町二丁目1番地 フォルテワジマ6階 | 073-433-3100 | 経営課題の総合相談。補助金の情報収集や事業計画の相談 |
| 和歌山県中小企業活性化協議会 | 和歌山市十番丁19 Wajima十番丁ビル3階(2026年3月19日移転) | 073-402-7788(FAX 073-402-7789) | 財務課題を抱える事業者の再生・承継支援 |
| 和歌山県 商工労働部 商工振興課 | 和歌山県庁 | 073-441-2744(県中小企業融資制度「事業承継支援資金」の担当は073-441-2740) | 県の融資制度「事業承継支援資金」、事業承継税制の特例認定などの窓口 |
| 事業承継・M&A補助金事務局 | — | 事業承継促進枠 050-3192-6274/専門家活用・廃業再チャレンジ枠 050-3145-3812/PMI推進枠 050-3192-6228 | 公募要領・申請手続き・経費の該当性に関する一次窓口 |
和歌山商工会議所(和歌山市七番丁26-1 モンティグレ ダイワロイネットホテル和歌山2階/073-422-1111)も経営サポートの一環として事業承継・引継ぎの相談を案内しています。会員事業者であれば、まず普段の経営指導員に声をかけるのが動き出しとしては早いでしょう。
補助金と一緒に検討したい和歌山県の支援
補助金は後払いなので、県の融資・税制の支援と組み合わせて初めて承継計画が回ります。
和歌山県は公式ページで、中小企業融資制度の一つとして「事業承継支援資金」を案内しています。対象は「事業を承継する際や事業承継を契機に資金が必要」な方で、経営承継円滑化法の認定を受けた場合や事業承継計画を定めた場合などに、一定の要件を満たすと優遇利率での融資が受けられるとされています。融資限度額や利率は取扱金融機関・年度により変わるため、和歌山県中小企業融資制度のご案内と県商工振興課の事業承継支援資金担当(073-441-2740)でご確認ください。
あわせて、県は事業承継サポートのページで、事業承継計画策定支援、法人版・個人版事業承継税制の特例認定、後継者募集の情報(わかやまLIFE、日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援)も紹介しています。「補助金・融資・税制・マッチング」の4点を同じテーブルに並べて考えるのが、和歌山市での承継の進め方です。

よくある質問
和歌山市独自の事業承継補助金はありますか?
2026年10月4日時点で、和歌山市の公式サイト上に「和歌山市独自の事業承継補助金」は確認できませんでした。中心となるのは国の事業承継・M&A補助金で、相談は和歌山市七番丁の和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターが窓口になります。最新の市独自施策については和歌山市の公式サイトおよび産業振興担当課にご確認ください。
「事業承継・引継ぎ補助金」という名前で探しても出てきません
現在は「事業承継・M&A補助金」という名称で公募されています。令和7年度補正予算分の公募情報は事務局サイト(shoukei-mahojokin.go.jp)に掲載されており、16次公募は4枠で実施されています。
16次公募の締切はいつですか?
事務局サイトでは令和8年(2026年)10月2日(金)〜11月6日(金)17:00と案内されており、2026年10月2日に公募申請の受付が開始されています。公募期間は変更されることがあるため、申請直前に公式サイトで必ず再確認してください。
個人事業主でも申請できますか?
この補助金は中小企業者・小規模事業者を対象としており、個人事業主も要件を満たせば対象になり得ます。ただし枠ごとに「承継の形態」「承継時期」「経営資源の引継ぎの有無」などの要件が細かく定められているため、該当するかどうかは公募要領と事務局(事業承継促進枠 050-3192-6274 など)で確認が必要です。
相談は有料ですか?専門家に頼む必要はありますか?
和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターは国の委託による公的窓口で、相談は無料・秘密厳守です。まず無料の公的窓口で方針を固め、M&Aの実務が必要になった段階で専門家費用を専門家活用枠の対象経費として検討する、という順番が無駄が少ない進め方です。
・和歌山市の事業者が事業承継で使う中心は、国の事業承継・M&A補助金(旧・事業承継・引継ぎ補助金)
・16次公募は4枠。補助率1/3〜2/3、補助上限150万〜1,000万円(買い手支援類型(Ⅰ型)100億企業特例のみ2,000万円)。いずれも上限であり審査があります
・受付は2026年10月2日〜11月6日17:00(受付開始済み)。申請はJグランツのみで、GビズIDの取得から逆算が必須
・和歌山の入口は和歌山市七番丁の和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター(073-499-5221・無料)
・補助金は後払い。県の事業承継支援資金など融資・税制とセットで計画する
この記事は2026年10月4日時点の公式情報に基づきます。補助率・上限額・締切・窓口は変更される場合があるため、申請前に必ず各公式サイトの原文と公募要領をご確認ください。
