この記事は2026年10月30日時点の公式情報に基づきます。
「山口県で介護ロボットや見守りセンサーを入れたいが、県の補助金はどれを見ればいいのか分からない」——そう感じて検索された施設長・事務長の方は少なくないはずです。
山口県の制度は、令和7年度に事業名が変わりました。かつての「介護ロボット導入支援事業」「介護事業所ICT導入推進事業」「介護テクノロジー導入支援事業」は廃止・統合され、現在は「山口県介護テクノロジー定着支援事業補助金」という1本の事業に集約されています。検索キーワードが「導入支援」のままだと、県の最新ページにたどり着きにくいのが実情です。
結論を3行でお伝えします。
- 補助率は5分の4(4/5)、機器区分ごとの基準額と比べて低い方の額が補助されます。
- パッケージ型導入の上限は1事業所あたり1,000万円(介護ソフトの付帯経費を含む場合は15万円上乗せ)。
- 令和8年度の受付は令和8年7月22日8時30分に開始しましたが、同日11時45分に受付を一時停止し、令和8年9月9日に受付終了(当初の締切は令和8年11月30日17時でした)。
この記事では、山口県の交付要綱・Q&A・チラシ・申請例という4つの公式資料の原文から、対象事業所、対象機器、機器区分別の基準額、申請の流れ、そして山口県だけの独特な要件(前年度に使った事業所は対象外、研修受講、SECURITY ACTIONの宣言など)を整理します。最後まで読めば、次の公募に向けて「自施設が今から何を準備すべきか」が順番で分かります。
特に見落としやすいのが、「令和7年度にこの補助金を受けた事業所・施設は、令和8年度は対象外」という山口県独自のルールです。法人単位ではなく事業所・施設単位で判定されるため、同じ法人でも使える事業所と使えない事業所が分かれます。ここを誤解したまま稟議を回すと、計画そのものが組み直しになります。

結論:山口県の介護テクノロジー補助金は「誰が・いくら・いつまで・どこへ」
山口県の介護テクノロジー導入支援は、県内の指定介護事業所等が、補助率4/5・上限1,000万円で介護ロボットやICT機器を導入できる制度です。
まず全体像を基本情報表で押さえてください。窓口は山口県庁ではなく「山口県介護生産性向上総合相談センター」で、申請は原則メール提出です。センターは(公財)介護労働安定センター山口支部内に置かれています。
| 事業名 | 山口県介護テクノロジー定着支援事業補助金(令和8年度) |
|---|---|
| 実施主体 | 山口県(交付要綱第3条)。補助金申請に係る受付事務および職場環境の改善に資する意見付与は山口県介護生産性向上総合相談センターが実施 |
| 対象施設 | 山口県内に所在する、(1)介護保険法に基づくサービスを提供する全てのサービス事業所(訪問介護事業所や居宅介護支援事業所を含む)、(2)老人福祉法に基づく養護老人ホームおよび軽費老人ホーム。ただし本要綱に基づく補助を過去に受けたことがある事業所等は対象外 |
| 対象機器 | (公財)テクノエイド協会の「福祉用具情報システム(TAIS)」で「介護テクノロジー」として選定された機器等。TAIS未掲載でも県が同水準・有効と認める機器、インカム、バックオフィスソフト等を含む。見守り機器・インカム・介護ソフトのいずれか1種以上を含むことが要件(既に導入済みの場合を除く) |
| 補助率・上限 | 補助率5分の4。機器区分ごとの基準額(1台100万円/1台30万円/介護ソフトは職員数別100〜265万円/パッケージ型は1事業所1,000万円)と比較して低い方の額。1事業所の補助額合計は1,000万円以下 |
| 申請期間 | 令和8年7月22日(水)8時30分〜令和8年11月30日(月)17時必着。ただし初日の令和8年7月22日11時45分に受付を一時停止し、申請額が予算額に達したため令和8年9月9日に受付終了 |
| 窓口 | 山口県介護生産性向上総合相談センター((公財)介護労働安定センター山口支部内)/〒753-0824 山口市穂積町1-2 リバーサイド山陽II 2F/電話083-920-0926(8時30分〜17時、土日祝を除く)/E-mail kaigoyamaguchi@kaigo-center.or.jp |
| 公式URL | 令和8年度介護テクノロジー定着支援事業補助金(かいごへるぷやまぐち) |
なお、山口県内に政令指定都市はありません。中核市である下関市の事業所も、交付要綱第4条の「山口県内に所在する介護事業所・介護施設等」に含まれるため、同じ県の窓口に申請します。市町が独自に上乗せする補助制度の有無は、今回の調査では公式に確認できませんでした。お住まいの市町の高齢福祉担当課にご確認ください。
制度の全体像:国の「介護テクノロジー導入支援」と山口県の「定着支援事業」の関係
国が進める介護テクノロジーの導入支援を、山口県は「定着支援」という名前の県事業として実施しています。
介護ロボットやICT機器の導入補助は、国の方針のもとで各都道府県が実施要綱を定めて行う形が基本です。厚生労働省は介護テクノロジーの利用促進のページで重点分野や介護ソフトの機能調査結果を公表しており、山口県の交付要綱もこの資料を参照するよう求めています。制度の設計思想を先に押さえたい方は、介護テクノロジー導入支援事業の全体像もあわせてご覧ください。
山口県の特徴は、事業名に「導入」ではなく「定着」を使っている点です。交付要綱第2条は目的を「介護ロボットやICT機器等の介護テクノロジーの導入や定着に向けた取組を行う介護サービス事業者等に対して補助を行うことにより、介護現場の生産性向上による職場環境の改善を図ること」と定めています。つまり、機器を買って終わりではなく、業務改善計画の作成・研修受講・3年間の効果報告までがセットになった設計です。
年度ごとの経緯も整理しておきます。交付要綱の附則によれば、本要綱は令和7年6月6日から施行され、同時に「山口県介護テクノロジー導入支援事業補助金交付要綱」は廃止されました。さらに令和8年6月1日施行の改正附則により、令和8年度分の補助金から現行の内容が適用されています。令和7年3月31日以前に、廃止前の「介護ロボット導入支援事業」「介護事業所ICT導入推進事業」「介護テクノロジー導入支援事業」で交付を受けた事業については、なお従前の例によるとされています。
補助金申請そのものの手順に不安がある方は、補助金申請の流れ・必要書類で全体の型を確認してから、山口県の様式に落とし込むと迷いません。
対象となる介護事業所・施設と、対象にならないケース
山口県内の指定介護事業所等が広く対象ですが、過去の受給歴と総合事業の扱いで線引きがあります。
交付要綱第4条が定める対象は、(1)介護保険法に基づくサービスを提供する全てのサービス事業所(訪問介護事業所や居宅介護支援事業所を含む)、(2)老人福祉法に基づく養護老人ホームおよび軽費老人ホーム、の2つです。特養・老健・グループホーム・有料老人ホーム(特定施設)・デイサービス・訪問介護まで、介護保険の指定を受けていれば入口は広いと考えてよい設計です。
一方で、対象外になるケースは公式資料ではっきり書かれています。
- 本要綱に基づく補助を過去に受けたことがある介護事業所等は対象外(交付要綱第4条ただし書き)。県のQ&Aは「令和7年度に本補助金の交付を受けた事業所・施設は、今年度は補助対象外となります」とし、有無の判断は事業所・施設単位で行うため、昨年度利用した法人であっても、昨年度補助を受けていない事業所・施設については申請可能と説明しています。
- 令和6年度以前の旧制度(介護テクノロジー導入支援事業補助金、介護ロボット導入支援事業補助金、介護事業所ICT導入推進事業補助金)の交付を受けている場合は、Q&Aによれば「過去の申請回数や補助額に関わらず申請可能」です。
- 介護給付・介護予防給付の対象ではない総合事業(通所型サービスB等)のみを行う事業所は、Q&Aで「介護事業所」に含まれず対象外とされています。ただし指定訪問介護・指定通所介護と総合事業を一体的に実施している場合、指定事業所で導入した機器を総合事業でも利用することは可能とされています。
- これから開設する事業所は、申請書の提出日時点で対象事業所が開設されている必要があります。
- 福祉用具貸与事業所が「貸与するための福祉用具」を購入する場合は、Q&Aで補助対象として認められないと明記されています。
同一敷地内に特養と通所介護が併設されている場合は、指定ごとに1事業所としてカウントされるため、2事業所分として計算します。機器の共用は差し支えないものの、実質的に特定の事業所のみで活用されるような使い方は目的に反するとして注意喚起されています。
対象機器:TAIS掲載が原則、見守り・インカム・介護ソフトのいずれかが必須
対象はTAIS掲載の介護テクノロジーが原則で、そこに「見守り機器・インカム・介護ソフトのいずれか1種以上」という交付条件が重なります。
交付要綱第5条は、補助対象事業を(1)介護テクノロジー等の導入支援と(2)パッケージ型導入支援に分けています。(1)はさらに、ア「TAIS掲載の介護テクノロジー」、イ「介護ソフトの定着促進支援」、ウ「その他」に枝分かれします。TAISは(公財)テクノエイド協会が提供する福祉用具情報システムで、TAISの掲載商品検索では移乗支援・入浴支援・見守り・コミュニケーション・介護業務支援などのカテゴリから機器を探せます。
イの「介護ソフトの定着促進支援」は、介護ソフトの導入に伴って一体的に使うタブレット端末の購入費やWi-Fi環境整備に必要な経費が対象です。要綱は具体例として、介護ソフトと一体的に使用するPC・タブレット端末(リース費用を含む)、配線工事やモデム・ルーター・アクセスポイント・システム管理サーバ・ネットワーク構築等、導入前後のベンダーによるサポート費用を挙げています。
ウの「その他」は、TAIS未掲載でも県が同水準と認める機器や、職場環境整備として有効と県が認める機器です。例として床走行式リフト、調理支援機器(加熱・冷蔵機能等を備えた配膳車や配膳ロボット等)、訪問介護事業所で使用するスライディングボード、インカム、バックオフィスソフト(電子サインシステム、給与、勤怠管理等)、バイタル測定が可能なウェアラブル端末が挙げられています。
そのうえで、交付要綱第7条(1)は「見守り機器、インカム又は介護ソフトのいずれか1種以上を必ず導入すること」を交付条件としています。ただし、既に導入済みの場合、または本要綱に基づかずに当年度中に導入する場合はこの限りではないとされています。機器選定の前提を整理したい方は、見守りセンサーの比較・選び方と介護記録ソフトの比較が参考になります。
介護ソフトについては追加の縛りがあります。記録業務・情報共有業務・請求業務を一気通貫で行えるもの(転記等の業務が発生しないもの)であることが前提で、既に導入しているソフトと組み合わせて一気通貫が実現できていれば対象です。さらに居宅介護支援事業所・介護予防支援事業所・居宅サービス事業所・介護予防サービス事業所がソフトを申請する場合は「ケアプランデータ連携標準仕様に準じたCSVの出力・取込機能」等が、施設サービス事業所等が申請する場合は「LIFEのCSV連携仕様書に準じた出力機能」が要件として加わります。
申請の可否で迷いやすい論点も、県のQ&Aが答えています。PCやタブレット端末は、テクノロジー機器の導入に伴い一体的に使用する情報端末であれば対象ですが、単体での申請は不可です。通信環境整備のみの申請も対象になりません。機器設置に係る工事費やメーカーの説明費(出張代金を含む)は「機器等の導入に付帯して必要となる経費」として対象です。付属品・オプション品は、生産性向上に資するための機器の使用に必要不可欠と考えられるものであれば対象になります。
補助率4/5と機器区分別の基準額【表で確認】
補助額は「対象経費の5分の4」と「区分ごとの基準額」を比べ、低い方の額に決まります。
交付要綱第6条は、実支出額(消費税および地方消費税を除く)に5分の4を乗じた額を算出し、表1・表2の基準額と比較して少ない方の額(千円未満切り捨て)を補助額とすると定めています。機器単価が高くても、区分ごとの1台あたり基準額を超えた部分は補助されません。
| 区分 | 基準額 |
|---|---|
| TAISで「移乗支援(装着型・非装着型)」「入浴支援」に掲載されているテクノロジー、「介護業務支援」に掲載されているインカム等/これらと同水準と判断された機器等/県が「生産性向上に資する機器等」と認める機器(バックオフィスソフトを除く) | 100万円/台 |
| 「介護テクノロジー」のうち上記以外のもの(見守り機器、排泄支援機器 など) | 30万円/台 |
| 介護ソフト・バックオフィスソフト | 下の表2による |
| 介護ソフトの定着促進費用(一体的に使うタブレット・Wi-Fi環境整備等) | 導入する介護ソフトの経費と合わせて表2の右欄。パッケージ型導入支援に合わせて対象とする場合は、パッケージ型の上限に15万円上乗せ |
| パッケージ型導入支援(機器等の合計経費) | 1,000万円/事業所 |
介護ソフト・バックオフィスソフトの基準額は、職員数に応じて必要なライセンス数が変動する契約かどうかで変わります。
| 職員数(申請時点) | ソフトのみを導入する場合 | 定着促進費用(端末・Wi-Fi等)を含む場合 |
|---|---|---|
| 1名以上10名以下 | 100万円 | 115万円 |
| 11名以上20名以下 | 150万円 | 165万円 |
| 21名以上30名以下 | 200万円 | 215万円 |
| 31名以上 | 250万円 | 265万円 |
| 職員数でライセンス数が変動しない契約(上記以外の方式) | 一律250万円 | 265万円 |
この表には加算があります。訪問介護事業所等の居宅サービス事業所または居宅介護支援事業所(介護予防も含む)で、令和8年度中に「ケアプランデータ連携システム」により5事業所以上とデータ連携を実施する場合は、基準額に5万円を加算することとされています。職員数は申請時点の常勤換算で算出しますが、居宅を訪問してサービスを提供する職員や管理者・生活相談員等は実人数(常勤・非常勤を問わない)としても差し支えないとされ、直接処遇職員だけでなくICT活用が見込まれる管理者等も算入できます。
県公式の「申請例」で金額の決まり方を確認する
山口県は申請例のPDFを公開しており、上限との比較がどう働くかが具体的に分かります。補助申請額は対象経費×4/5で、1,000円未満は切り捨てです。
| 事例 | 導入内容と対象経費 | 上限との比較 | 申請額 |
|---|---|---|---|
| 介護老人保健施設(定員60人・職員30人) | センサーマット20台 400万円+タブレット10台(付帯経費)50万円=450万円 | 上限600万円(30万円×20台) | 360万円 |
| 認知症対応型共同生活介護(定員10人・職員15人) | 排泄支援機器10台 1,087,000円 | 上限300万円(30万円×10台) | 869,000円 |
| 訪問介護事業所(職員10人) | 介護ソフト300万円+タブレット10台50万円=350万円 | 上限270万円(250万円+付帯15万円+データ連携5万円) | 270万円 |
| 通所介護事業所(定員60人・職員20人) | 介護ソフト(ライセンス数が変動)200万円 | 上限150万円(職員11〜20名・付帯経費なし) | 150万円 |
| 養護老人ホーム(定員50人・職員20人) | 介護ソフト+センサーマット50台+タブレット+排泄支援+インカム=1,400万円 | パッケージ型1,000万円+付帯経費15万円=1,015万円 | 1,015万円 |
パッケージ型は、「介護業務支援」に分類されるテクノロジー(介護ソフト等)と、それと連動することで効果が高まると県が認めるテクノロジーを組み合わせて導入する場合の支援です。組み合わせ例として「介護業務支援+見守り・コミュニケーション」「介護業務支援に該当する複数の機器」「介護ソフト+インカム」が挙げられています。Q&Aは、連動の判断について「単体で活用するよりも効果的に活用できるかどうかを判断し、発生する効果を様式1の業務改善計画に記載してください」としています。補助金の考え方を横断的に確認したい方は、介護テクノロジー補助金の完全ガイドもご覧ください。

申請の流れと締切:交付決定前の契約は対象外
流れは「交付申請→交付決定→契約・発注→納品・運用開始→実績報告→額の確定・支払い」で、順番を飛ばすと対象外になります。
県のページは「交付決定を受ける前に契約・購入したものは、補助金の対象となりません」と明記しています。Q&Aはさらに踏み込み、「交付決定日の翌日以降に契約をお願いします」「事業の完了については、当該年度の2月末までに契約、支払い、納品、運用開始の全てを完了させてください」と回答しています。年度末ぎりぎりの発注では間に合わない設計です。
| ステップ | 令和8年度の時期・期限 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 1. 事前相談 | 随時 | 業務改善計画の作成等にあたり、山口県介護生産性向上総合相談センターに相談することが交付条件 |
| 2. 交付申請 | 令和8年7月22日(水)8時30分〜令和8年11月30日(月)17時必着(初日の令和8年7月22日11時45分に一時停止、令和8年9月9日に予算額到達で受付終了) | 原則メール提出。交付申請書、業務改善計画書、経費所要額調書、誓約書、見積書、カタログ等を添付。メールは添付込み10MB以内 |
| 3. 受付確認 | センター到着後3営業日以内 | 受信確認の返信メールが届く。これは到着の通知であり交付を約束するものではない。届かない場合は要問い合わせ |
| 4. 交付決定 | 随時(到着順に審査。交付決定の時期を明示した公式資料はありません) | 到着順に審査・手続き。予算残額は県HPに随時掲載 |
| 5. 契約・発注・納品・運用開始 | 交付決定日の翌日以降〜当該年度(令和9年)の2月末まで | 契約・支払い・納品・運用開始のすべてを完了させる |
| 6. 実績報告 | 補助事業が完了した日から20日を経過した日、または当該年度の2月末日のいずれか早い期日 | 交付要綱第11条。事業の完了には第7条の交付条件の充足を含む |
| 7. 額の確定・精算払請求・交付 | 実績報告の提出・額の確定手続後(Q&A)。時期を明示した公式資料はありません | 額の確定通知後に精算払請求書を提出し、補助金が交付される |
| 8. 効果報告 | 補助を受けた年度の翌年度から3年間 | 交付要綱第15条。業務改善計画に対する効果を知事に報告 |
令和8年度の受付状況についても公式に記録が残っています。県は令和8年7月22日に「既に予算額を超過している可能性が高いため、7月22日11時45分をもって、受付を一時停止いたします」というお知らせを出し、その後、受付済みの申請を精査した結果、申請額が予算額に達したことが確認されたとして令和8年9月9日に申請受付の終了を公表しました。同ページでは、未申請の案件についても今後の導入に向けての相談対応を継続すること、次年度以降の補助ニーズ把握を今後行う予定で、方法等は後日案内することが示されています。
山口県特有の注意点:ここで落としやすい9つの条件
金額や締切よりも、交付要綱第7条の「交付の条件」で足元をすくわれるケースが目立ちます。
以下は、山口県の交付要綱・Q&Aに明記されている条件のうち、稟議や社内スケジュールに影響が大きいものです。機器の見積もりより先に、この9項目を自施設で満たせるかを確認してください。
- 前年度の受給歴:本要綱に基づく補助を過去に受けた事業所等は対象外。判定は事業所・施設単位で、法人単位ではありません。
- 1機種限り:同一年度内に複数の機種を同一の目的のために導入する場合、複数の機種への補助は認められません(留意事項)。
- 限度台数と総額:1事業所当たりの限度台数は、業務内容および規模に照らして適当と認められる台数で、全ての機器に係る補助額(付帯経費を含む)の合計が1,000万円以下とされています。
- 研修の受講:令和8年4月1日から実績報告書を提出する日までの間に、厚生労働省委託事業の相談窓口が実施する研修、「生産性向上ビギナーセミナー」「生産性向上フォローアップセミナー」「デジタル中核人材養成研修」、センターが実施する研修、県の「介護テクノロジー定着セミナー」等のいずれかを受講することが条件です。Q&Aは「必ず令和8年度に研修を受講してください」「過年度に全く同じ内容の研修を受講している場合には、他の担当者が受講する等工夫してください」としています。
- 業務改善計画の作成:交付要綱第14条により業務改善計画を作成し知事に提出します。作成や取組の実施にあたっては、原則としてセンターに相談するものとされています。
- SECURITY ACTIONの宣言:IPAが実施するSECURITY ACTION(介護テクノロジー定着支援事業向け特設ページ)で「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかを宣言することが必要です。Q&Aは「宣言をしなければ当事業の補助を受けることができません」と明言しています。対象外の事業所は同等の対策を講じていることを宣言します。
- ケアプランデータ連携システム:訪問介護・通所介護・居宅介護支援など要綱第7条(5)に列挙された43サービスを提供する事業所等は、令和8年度内に同システム(または同等と認められたシステム)の利用を開始することが条件です。Q&Aは「システムの利用を開始し、連携実績があることが補助要件」とし、業務改善計画様式の該当欄にチェックを入れるよう求めています(年度内に利用見込みの場合を含む)。
- 委員会の設置:短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院など要綱第7条(4)に列挙されたサービスでは、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保および職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置が必要です。Q&Aは「3か月に1回以上開催し」検討を行うよう求めています。
- 他の補助金との併用:交付要綱第5条のただし書きは「他の補助金等を受けて導入する機器等については、本補助事業の対象とならない」と定めています。同じ機器に別の補助金を重ねることはできません。
リース・月額クラウド・按分の扱い
支払い方式が月額のときの扱いは、県のQ&Aが年度区切りで整理しています。リースも月額の介護ソフトも「当該年度の3月末まで」が対象期間です。
年度途中からタブレット等のリースを行う場合、歳出科目で「使用料及び賃借料」に該当するときは、リース期間にかかわらず当該年度の3月末までが対象とされています(書類等の提出は2月末まで)。毎月費用を支払う介護ソフトも同じく当該年度の3月末までが対象です。一方、5年間の使用権(ライセンス)を購入時に一括で支払う買い切り型に近い契約の場合は、購入した年度の2月末までに支払った全額を補助対象経費として扱って差し支えないとされています。
1つの機器を同じ法人内の複数の事業所で使用する場合は、合理的な計算方法で按分して申請し、具体的な按分方法を記載した資料(様式任意)を添付します。申請は事業所ごとに行いますが、提出は法人ごとにとりまとめたうえで行うのが県の指定です。複数拠点をまとめる手順の考え方は、広島県の介護補助金や兵庫県の介護補助金と比べると、県ごとの違いが見えてきます。
導入後に効いてくる財産処分と賃金還元の条件
補助金は交付されて終わりではありません。補助事業により購入またはリースにより取得した機器等を3年を経過せずに処分、またはリース契約を解除した場合は、既に受けた補助金の全額を返還しなければならないとされています。ただし交付要綱第7条(12)のただし書きにより、「山口県介護テクノロジー定着支援事業補助金に係る財産処分承認基準」において県納付に関する条件を付さずに承認される場合、またはリースにより導入した機器等を購入するために当該リース契約を解除した場合は、この限りではありません。
さらに、取得価格が30万円以上の機械・器具等の財産は、減価償却資産の耐用年数を経過するまで、知事の承認を受けずに目的に反して使用・譲渡・交換・貸付け・担保提供・取壊し・廃棄をしてはならないと定められています。Q&Aは、処分の際には必ず「事前に」山口県長寿社会課介護政策班に問い合わせるよう求めており、抵触した場合は補助金を返還いただく可能性があるとしています。
また交付要綱第7条(6)は、導入・活用により業務の改善・効率化等が進み、収支の改善が図られた場合には、職員の賃金へも適切に還元し、その旨を職員等に周知することを求めています(第15条の報告により確認)。事業計画を組む段階から、経営層と現場に共有しておきたい条件です。
次の公募に向けた逆算スケジュール(令和9年度は未発表)
令和9年度の公募内容は未発表のため、令和8年度の実績から逆算して準備だけ先に進めるのが現実的です。
県は令和8年9月9日の受付終了のお知らせで、次年度以降の補助ニーズ把握を今後行う予定であり、方法等は後日案内すると述べています。実際、令和8年9月28日に「介護テクノロジー定着支援事業ニーズ調査(アンケート)」のお知らせが掲載され、令和8年10月5日に再周知されました。調査期間は令和8年9月28日(月)〜10月9日(金)で、すでに終了しています(問合せ先は山口県健康福祉部長寿社会課介護政策班・083-933-2807)。ニーズ調査の受付は終了しているため、次の一歩は山口県介護生産性向上総合相談センターへの事前相談です。
| 時期の目安 | やること | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 公募前(今すぐ) | 山口県介護生産性向上総合相談センターへ事前相談する(県のニーズ調査は令和8年10月9日で終了) | 業務改善計画の作成等はセンターへの相談が交付条件 |
| 公募前 | SECURITY ACTION(★一つ星/★★二つ星)を宣言する | 宣言がなければ補助を受けられない |
| 公募前 | 対象機器がTAISに掲載されているかを確認し、見積書・カタログを揃える | TAIS未掲載機器は県の判断が必要で、迷う場合はセンターに相談 |
| 公募前 | 自事業所が前年度に本補助金を受けていないかを事業所単位で棚卸しする | 受給歴のある事業所は対象外 |
| 公募開始直後 | 交付申請書・業務改善計画書・経費所要額調書・誓約書を提出(メール10MB以内) | 到着順に審査され、予算額到達で受付終了するため |
| 交付決定後 | 決定日の翌日以降に契約・発注 | 交付決定前の契約・購入は対象外 |
| 年度内(4月〜実績報告まで) | 指定された研修を受講し、委員会を3か月に1回以上開催 | 交付要綱第7条の交付条件 |
| 年度の2月末まで | 支払い・納品・運用開始を完了し、実績報告を提出 | 完了日から20日経過した日か2月末日の早い方が期限 |
なお、令和9年度に同じ事業が実施されるか、補助率や基準額が据え置かれるかは、現時点の公式情報では確認できません。かいごへるぷやまぐちの新着情報で最新の公表を必ずご確認ください。制度が動くタイミングで他県の設計を見比べたい方には、福岡県の介護補助金や大阪府の介護補助金が比較材料になります。

よくある質問
山口県の介護事業者からよく出る疑問を、公式資料の記載にもとづいて整理します。
令和8年度はもう申請できませんか?
令和8年度分は受付が終了しています。当初の申請期間は令和8年7月22日8時30分から令和8年11月30日17時必着でしたが、初日の7月22日11時45分に受付が一時停止され、その後、申請額が予算額に達したことが確認されたため、令和8年9月9日に受付終了が公表されました。県は未申請の案件についても今後の導入に向けた相談対応を継続するとしています。次年度以降のニーズ把握が行われる予定ですので、山口県介護生産性向上総合相談センター(083-920-0926)にご相談ください。
令和7年度にこの補助金を使った事業所も、また申請できますか?
できません。交付要綱第4条は、本要綱に基づく補助を過去に受けたことがある介護事業所等を対象外としています。ただし判定は事業所・施設単位のため、同じ法人でも昨年度補助を受けていない事業所・施設は申請可能です。令和6年度以前の旧制度(介護テクノロジー導入支援事業補助金、介護ロボット導入支援事業補助金、介護事業所ICT導入推進事業補助金)で交付を受けていた場合は、過去の申請回数や補助額に関わらず申請可能とQ&Aに記載されています。
見守りセンサーは1台いくらまで補助されますか?
見守り機器は交付要綱の表1で「上記以外のもの」に当たり、基準額は1台30万円です。実支出額(税抜)の5分の4と、30万円×台数を比べて低い方の額が補助されます。県の申請例では、センサーマット20台(400万円)とタブレット10台(50万円)で計450万円の経費に対し、上限600万円より4/5の360万円が低いため申請額360万円となっています。台数は、事業所の業務内容および規模に照らして適当と認められる台数の範囲で、補助額の合計が1,000万円以下に収まる必要があります。
交付決定の前に機器を発注してしまったらどうなりますか?
対象外になります。県の案内は「交付決定を受ける前に契約・購入したものは、補助金の対象となりません」と明記しており、Q&Aも「交付決定日の翌日以降に契約をお願いします」としています。年度内の事業完了(契約・支払い・納品・運用開始のすべて)は当該年度の2月末までとされているため、交付決定後すぐ動ける体制を先に整えておくことが重要です。交付決定後に機種を変更することは原則できませんが、申請書提出後に販売中止・廃盤・在庫切れとなった場合は、交付要綱第9条の変更承認手続きにより対応する余地があります。
法人で複数の事業所がある場合、まとめて申請できますか?
申請書は事業所ごとに作成しますが、提出は法人ごとにとりまとめて行うのが山口県の指定です。1つの機器を法人内の複数事業所で使う場合は、合理的な計算方法で按分し、按分方法を記載した資料(様式任意)を添付します。同一敷地内に特養と通所介護が併設されている場合は、指定ごとに1事業所としてカウントするため、2事業所分として計算します。申請メールは添付ファイルを含めて10MB以内とされているため、事業所数が多い場合はファイル分割などの対応が必要です。
まとめ:山口県は「定着」まで見る設計、準備は公募前に終わらせる
山口県の介護テクノロジー導入支援は、補助率4/5・上限1,000万円という金額面の分かりやすさの一方で、研修受講・SECURITY ACTION・ケアプランデータ連携・委員会設置・3年間の効果報告まで含む「定着」重視の設計です。
そして令和8年度は、7月22日8時30分の受付開始から同日11時45分で受付が一時停止となり、9月9日に申請額が予算額に達したことが確認されて終了しました。次の公募で確実に動くためには、公募が始まってから機器を探すのではなく、公募前にセンターへの相談・SECURITY ACTIONの宣言・見積書の取得まで終えておくことが現実的な対策になります。要件を満たせば申請できる制度ですが、審査があり、予算の範囲内での交付である点は変わりません。最新の内容は必ず山口県の公募要領・窓口でご確認ください。
制度の背景を押さえたい方は介護テクノロジー導入支援事業の全体像を、書類づくりの段取りは補助金申請の流れ・必要書類を、機器選定は見守りセンサーの比較・選び方と介護記録ソフトの比較をあわせてご覧ください。
出典(公式)
- 山口県「令和8年度介護テクノロジー定着支援事業補助金について」
- 山口県「令和8年度介護テクノロジー定着支援事業補助金の申請受付を終了しました」
- 山口県介護テクノロジー定着支援事業補助金交付要綱(PDF)
- 令和8年度山口県介護テクノロジー定着支援事業補助金Q&A(PDF)
- 令和8年度山口県介護テクノロジー定着支援事業 チラシ(PDF)
- 令和8年度山口県介護テクノロジー定着支援事業 申請例(PDF)
- かいごへるぷやまぐち(山口県介護保険情報サイト)
- 厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」
- (公財)テクノエイド協会 福祉用具情報システム(TAIS)
- IPA「介護テクノロジー定着支援事業・介護テクノロジー導入支援事業:SECURITY ACTION」
この記事は2026年10月30日時点の公式情報に基づきます。制度は年度途中でも変更される場合があります。申請にあたっては必ず山口県および山口県介護生産性向上総合相談センターの最新の公募要領をご確認ください。
